シンガポールに来る前に知っておきたい民族のあれこれ

多国籍国家シンガポールのイメージ
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シンガポールに初めてくる方は、街に出ると服装や肌の色、話す言語などが違う人たちがたくさん歩いていることに驚くと思います。

実はシンガポール在住者のうち外国人が人口の約3割を占め、また、「シンガポール人及び永住者」の約41は、シンガポール以外の国で生まれています

民族、文化、言語、宗教など様々なものがミックスしているのが、多国籍国家シンガポールならではの魅力です。

このブログではシンガポールの多様性を、現地在住者ならではの視点で詳しくご紹介していきます。

シンガポールの民族事情:人口の約3割が外国人

10 年に1度行われている国勢調査(Census of Population 2020)によると、2020年のシンガポールの人口は約569万人。1970年の人口(約207万人)と比較すると、この50年で人口は約2.7倍も増えています。

2010年からの10年間だけでも、約60万人の人口が増えており、そのうち「シンガポール人及び永住者」は約27万人、外国人は約33万人増えています。

「シンガポール人および永住者」は全体の約71%(404万人)で、それ以外の人口の約29%(164万人)はシンガポール以外の国々から来て在住している外国人の方々となります。ちなみに在シンガポール在住の日本人は外務省の調査統計によると、駐在員、駐在員の帯同家族、現地採用、起業家などがいて、2020年10月1日時点で3万6,585人にも上ります。

シンガポールには世界中から外国企業の駐在員が集まり、また、工事現場ではインドやバングラデシュなどから、メイドなどはフィリピンやインドネシアなどから来ています。

外国人だけでなく、ひと口に「シンガポール人」と言っても様々な民族にルーツを持っている方がほとんどなので、見た目だけで「このひとは〇〇人だ」判断するのはとても難しい点も特徴的です。(後述します)

最近では外国人の増加が問題となっており、外国人の就労ビザ発行の基準が非常に厳しくなっています。

シンガポールはこれまで国外からの人材を積極的に受け入れて経済的成長を果たした側面もあるので、難しい問題ではありますが、政府は適宜外国人の人数の調整を図り、バランスを取ろうとしています。

(出典:シンガポール統計局, Census of Population 2020: Statistical Release 1:Demographic Characteristics, Education, Language and Religion (p.20)

中華系、マレー系、インド系など多種多様な民族構成

シンガポールには、多種多様な民族が「シンガポール人」として一緒に暮らす文化を象徴するかのように、以下のような特定の民族文化色が強く表れるエリアが19世紀から根付いており、それぞれ各民族のお店が多く集まっています。

  • 中国系の移民が集まりできた「チャイナタウン」
  • アラブの商人たちが集まり始まった「アラブストリート」
  • 当時同じイギリスの植民地だったインドからやってきた多くの労働者が集まってできた「リトルインディア」

2020年の調査によると「シンガポール人及び永住者」の民族構成では、全体の74.3%と中華系がダントツで多く占め、次いでマレー系、インド系、「ユーラシアン(ヨーロッパ人とアジア人の混血)」や、「プラナカン(中国系またはインド系の男性と、現地のマレー系またはインドネシア系の女性との婚姻による子孫)」などで構成されるその他のカテゴリが続きます。


(出典:シンガポール統計局, Census of Population 2020: Statistical Release 1:Demographic Characteristics, Education, Language and Religion (p.20)

統計を見てもわかるように、中華系が多いので、中国語がよく聞こえてきますし、中国語で話しかけられることもしばしばあります。

ホーカーセンター(屋台)ではたまに中国語しか通じないことがありますが、大体料理の写真がありますので、中国語が分からない場合は指差しなどジェスチャーをすれば大丈夫です。

民族比率はここ10年では特に大きな変化はなく、ほぼ同じ比率となっています。

異なる民族間での婚姻もありますが、その場合、子どもは両親どちらかの民族に属することになります。

シンガポール出身でも外国生まれが4分の1

「シンガポール人」と言っても、出身地が必ずしもシンガポールというわけではありません。

2020年の調査によると、「シンガポール人及び永住者」の出身地は、「シンガポール生まれ」が最も多い76.6%を占めていますが、そのほかに「マレーシア生まれ」「中国生まれ」「インド生まれ」「インドネシア生まれ」「その他の地域生まれ」のシンガポール人がおり、全体の23.5%を占めています。

シンガポール人及び永住者」の約41は、シンガポール以外の国で生まれていることになり、生まれた後にシンガポールに移住し、シンガポール国籍を取得または永住権を取得した人たちとなります。

(出典:シンガポール統計局, Census of Population 2020: Statistical Release 1:Demographic Characteristics, Education, Language and Religion (p.25)

更に、シンガポール生まれの方々も、祖先を辿ると色々なところからシンガポールにやってきていることがわかります。

「中華系」の人々の多くは、クーリー(苦力)と呼ばれる労働者として福建省や広東省など中国南部から渡って来ました。

「マレー系」の人々は、インドネシアのジャワ島やバウェアン島、およびマレー半島などの周辺地域の出身で、シンガポールにおいては先住民でもあります。

「インド系」の人々のコミュニティはインド国外においてインド人が最も多く住む場所の一つとなっています。多くは1819年にイギリス人がシンガポールに移住した後にインド南部から労働力としてやって来ました。60%程度がインド南部のタミル族を祖先としています。

「ユーラシアン」はヨーロッパ人とアジア人の混血で、ポルトガル系、オランダ系、イギリス系、中国系、マレー系、インド系を祖先に持っています。1819年にイギリス人がやってきた数年後に、ペナンやマラッカ出身のユーラシアンたちがシンガポールにやってきました。

プラナカン」は中国系またはインド系の男性と、現地のマレー系またはインドネシア系の女性との婚姻による子孫を意味します。シンガポールの中華系プラナカンは、15世紀のマラッカで現地のマレー系女性と結婚した中国人貿易商人が起源となります。その他にも、南インドのヒンズー教徒の商人と現地の女性の子孫であるチティ・メラカ(インド系プラナカン)、南インドのイスラム教徒の貿易商人と現地のコミュニティの女性の子孫であるジャウィ・プラナカンといった人々もいます。

以下は、2020年にシンガポールで結婚した方々の統計で、全体の約25%がシンガポール人とシンガポール人以外の人との結婚になっていることがわかりました。

ちなみにシンガポール人と結婚した人はシンガポール国籍や永住権を取得することが多いです。

(出典:シンガポール統計局, Population in Brief 2021

ちなみに私は日本人の父と中華系シンガポール人の母のあいだに生まれました。

母方の祖母はプラナカン、叔母の夫はマレー系であるなど、ミックスしていることが普通のこととして感じています。

シンガポールの言語事情:バイリンガルは当たり前

シンガポールでは民族融和の観点や経済政治的な観点から、英語・中国語(マンダリン)・マレー語・タミル語の4つの言語が公用語となっています。

英語と民族母語の2言語による「バイリンガル政策」が取られており、2020年には74.3%の国民が2言語以上を話すことができると言われています。

ですが、中国語とひと口に言っても様々な方言があり、シンガポールでは福建語や潮州語を話す人が多く、その後に広東語、海南語、その他の言語を話す人たちが続きます。

私の親戚(シンガポール人)は英語、マンダリン、福建語、シングリッシュ(シンガポールで話される英語)を話し、話す相手や場に応じて使い分けています。

家庭によっては英語メインの家もあり、中華系の家庭であっても、中国語は話すことはできるけど書くのは苦手といった家庭もあります。

(出典:シンガポール統計局, Census of Population 2020: Statistical Release 1:Demographic Characteristics, Education, Language and Religion (p.40)

また、シンガポールの国歌は「進めシンガポール Majulah Singapura(マジュラー・シンガプーラ)」というマレー語の歌です。

公式行事ではマレー語で歌われますが、中国語やタミル語、英語などに訳される場合もあります。

(出典:YouTube, Singapore.sg – Your official source of information on Singapore, Singapore’s National Anthem)

街で目にする案内や広告は、英語・中国語・マレー語・タミル語の4つの言語で記載されていたり、言語ごとに作成されていたりします。

日常的にシンガポール国内の人々の多くが利用している、シンガポールの電車(MRT)で聴こえるアナウンスも4言語で行われています。

このアナウンスをしている女性が、YouTubeでアフレコの様子をYouTubeでご紹介しています。4か国語を流暢に発音している様子がとても目を引くので、気になる方はぜひご覧ください。

(出典:YouTube, Voiceover Flowers, SBS Transit (Singapore Train) Voiceover! | Voiceover Flowers)

シンガポールの主要メディアもまた、さままざまな言語でニュースやドラマを放送しています。

たとえば、代表的な大手メディアであるMediacorpは、シンガポールを舞台にした以下のような「中国語のドラマ」や「タミル語のドラマ」を放送しています。

(出典:meWATCH, The Takedown

(出典:meWATCH, Adukku Veetu Annasamy

英語のみで行われていた住民による意見投稿も、2006年からは中国語、マレー語、タミル語でもできるようになりました。

英語があまり得意でない人も含めて、より幅広い人たちが意見を伝えることができるようになりました。

 

言語の多様性を尊重する一方で、シンガポール訛りの英語である「シングリッシュ」を、世界で使われている標準的な英語に矯正したり、中国語の各方言をマンダリンに正すようなキャンペーンが実施されています。

国際社会で通じる英語や中国語を話すことはとても重要ですが、それぞれの言葉には様々な文化が詰まっていますよね。

シンガポールらしさが生きている文化的要素を大切にしながら、場に応じて適宜使い分けていってほしいなと感じています。

シンガポールの宗教事情:街歩きですら感じれる多様性

シンガポールは多民族国家であると同時に、多宗教国家でもあります。

2020年の調査によると、仏教が一番多く(31.1%)、次いで無宗教と続きますが、そのほかにキリスト教・イスラム教・道教・ヒンドゥー教と続きます。

(出典:シンガポール統計局, Census of Population 2020: Statistical Release 1:Demographic Characteristics, Education, Language and Religion (p48)

街を歩いていると、寺院、モスク、教会とそれぞれの宗教の施設を見かけます。

シンガポールらしいなと感じるのは、違う宗教の施設が隣り合っているケースがあったり、HDB(集合団地)のすぐ横に宗教施設があったりすることです。

「お寺の横にモスクがある」といったことは、なかなか他の国では見かけないことだと思います。

各宗教の人々が混在して住み、また宗教が人々の生活に密着していることがシンガポールの特徴です。

また、主要な宗教の祭日は、特定の宗教に偏りが出ないよう、それぞれが国の休日として設定されています。

以下、2022年のシンガポールの祝日一覧ですが、イスラム教のHari Raya Puasa、仏教のVesak Day、ヒンドゥー教のDeepavali、キリスト教のクリスマスといったようにそれぞれ国全体の祝日になっています。

(出典:シンガポール人材開発省, Public holidays 2022

シンガポールの食事事情:民族料理は多種多様

シンガポールで食は一大娯楽であり、様々な料理があるので、以下ではジャンルごとに特徴的なものを紹介します。

みなさんもシンガポールの街を歩いていると、日本では見かけない様々な料理に出会うと思うので、ぜひ実際に食べて楽しんでもらえたら嬉しいです

中華系の料理

毎年1~2月ごろの旧正月(Chinese New Year)では「ローヘイ(lohei / Yusheng)」と呼ばれるサラダを家族、同僚などみんなで囲み、長い箸で高く持ち上げながら、健康や幸せなどを願う習慣があります。

皿からこぼれるぐらい思いっきりやるのがポイントです。

また、中秋節では「月餅(Moon Cake)」と呼ばれる甘いお菓子をお世話になっている人に送り合って食べる習慣もあります。

ムスリム向けの料理

ムスリムの国民に加え、隣国でイスラム教の多いマレーシアやインドネシアからの観光客が多いことも含め、食に関してはハラル対応をしているお店が多いです。

ラーメン店ICHIKOKUDOは、シンガポール初のハラル認証を受けた北海道ラーメンを出しています。

(出典:Ichikokudo HP

自宅に配達してもらえるフードデリバリーサービスのメニューにも、ハラル認証を受けたラインナップがたくさんあります。

(出典:Grabfood Service, https://food.grab.com/sg/en/cuisines/halal-delivery/79

ベジタリアン向け料理

シンガポールにはベジタリアンの人も多くいて、色々なお店でベジタリアン向けの料理がメニューの中に多く入っています。

お店の看板に「素」という漢字を見かけることが時々ありますが、それはベジタリアン用の料理を意味しています。

プラナカン料理

プラナカン料理は、中国料理とマレー料理が合わさり、独特のスパイスやココナッツミルクなどによる濃厚な味の煮込み料理が多いのが特徴です。

男性のことをBaba(ババ)、女性をNyonya(ニョニャ)と呼ぶので、プラナカン料理を「ニョニャ(Nyonya)料理」とも呼びます。

私のおすすめはラクサ(ココナッツスープベースの麺料理)、ポピア(写真上部の春巻きのような見た目の料理)、クエパイティー(右の小さなカップに入った料理)といった料理があります。

シンガポールの課題:「民族融和」とは?

シンガポールには様々な民族が暮らしています。

一方で、各民族の文化的背景やアイデンティティを尊重し、配慮しながらも、同じ国民としていかに一体性を高めるかが大きな課題となっています。

盛大に祝う独立記念日

国民としての一体感を醸し出す策として特徴的なのは、シンガポールの独立記念日である8月9日に開催される「ナショナル・デー・パレード(NDP)」です。

シンガポールは1965年に独立し、2021年で56周年を迎えました。

7月1日から9月30日の間だけ、国旗掲揚が認められており、団地の前などに国旗が掲げられている様子を見ると、一大イベントが今年も始まるのだなという気持ちになります。

「ナショナル・デー・パレード(NDP)」に合わせてテーマソングが毎年作られ、当日はパレードや航空ショーなどが行われます。

抽選で選ばれた国民は会場に行って観覧することができ、それ以外の人は中継映像を見て参加します。

シンガポールの歴史や多様性などをイベントを通して学び、感じることができ、シンガポール人であることを誇りに感じる大事な機会となっています。

日本人はショーの会場には入場できませんが、ライブ中継や航空ショーなどを見て楽しむことができます。

民族調和の日、団地の民族比率

また、7月21日は「Racial Harmony Day(民族調和の日)」と定められています。

学校では生徒たちが各民族の民族衣装を着たり、伝統舞踏や民族楽器の鑑賞・体験をしたり、民族料理の調理・試食をしたりするなど様々なイベントが催され、他民族について理解し、学ぶ機会が設けられています。

シンガポール国民の約8割が「HDB」と呼ばれる公共住宅(日本でいう団地)に住んでいるのですが、それぞれの「HDB」内の住民の民族比率は国全体の民族比率になるようにしています。これも民族融和のためであり、各民族がそれぞれ特定のエリアに偏り、民族対立することを避けるためです。

「HDB」には共用スペースが必ずあり、様々な民族の人たちが一緒に利用しています。

さいごに(まとめ)

以上、シンガポールの民族について紹介しましたがいかがでしたか?

各民族には様々な特徴、習慣があり、日本ではなかなか目にすることがないので、住んでみると日々新しい発見がありとても面白いです。

この記事を読んで、少しでもシンガポールの民族について興味を持ってもらえると嬉しいです。

また、これだけ多種多様な文化圏の要素が1つの国に集約しているという状況は、日本から海外市場展開を見据えてテストマーケティングを実施・検討している人にとっては格好の市場となります。

シンガポールに進出することによって、自社の強みをどのように伝えれば中国・インド・インドネシアなどの文化圏市場に展開できるのかを考えるきっかけを得られるからです。

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