シンガポールがMICE誘致の成功事例として注目されるのはなぜ?

シンガポールの様子
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東京都23区と同じくらいの国土にも関わらず、シンガポールは東京の約3倍のMICE事業を世界中から誘致しています。

国際会議の開催. 状況を収集・発信している国際機関「International Congress and Convention Association (ICCA)」が発表した最新の都市別国際会議数は、東京が39件、シンガポールは101件を記録し、都市別のランキングでは世界で13位となっています。

なぜこれほどMICEの誘致に成功しているのか?

それは単に大型のイベントに耐えうる施設が充実しているからではなく、現代のトレンドとなっている環境への配慮やSDGsへの取り組みをうまくMICE誘致の際にPRしているからだということがわかりました。

今回の記事では、シンガポールのMICE誘致戦略や成功の舞台裏を、シンガポールを拠点とする弊社の視点でまとめます。

日本国内のMICE誘致に関わる方の参考となればうれしいです。

MICE誘致成功のキーポイントはSDGsにあり

世界中のMICE参加者は「グリーン認証」などを重視する傾向にある

アメックスGBTのグローバル・ビジネス・コンサルティング・グループが実施した調査によると、70%の旅行・会議関係者が、ホテル、コンファレンス施設、コンベンションセンター、宴会場などMICE会場の運営者を選定する際に「グリーン認証」や「グリーンクレデンシャル」を高または中程度に重要視する、という結果が出ています。

また、「長距離を飛ぶ飛行機に乗ることは、CO2排出量が多くて環境に悪影響だから控える」などの環境に対する意識の高い旅行者が世界的に増加していますが、こちらの調査でも35%の回答者が団体旅行の際のCO2排出量をKPIとして重視していると回答しています。

AMEXGBT STB Destinations WP FINAの抜粋

【出典】AMEXGBT STB Destinations WP FINAL-highres p.7

JNTOも海外からのMICE誘致に力を入れており、日本の各地でも海外からの誘致を目的とするところが多くあります。

海外からの渡航に関して「CO2排出量の削減対策」などを積極的にアピールすることは、国際的なMICE誘致の競争に勝つ上でますます重要になると言えるでしょう。

シンガポールは国連と共同で、MICE誘致におけるSDGsの目標設定を世界に発信

シンガポールではMICE産業における環境・SDGsを政府機関が強力に推進しています。

2022年には、シンガポール政府観光局と、MICEを推進する専門組織である「シンガポール・アソシエーション・オブ・コンベンション・アンド・エキシビション・オーガナイザー・アンド・サプライヤー(SACEOS)」が共同で、今後数年間でシンガポールのMICE業界全体のサステナビリティ水準を高めるために明確な目標や戦略を定めた「MICEサステナビリティ・ロードマップ」を発表しました。

これは、シンガポール政府が独自に掲げている環境行動計画「シンガポール・グリーンプラン2030」と、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)を指針としたもの。

シンガポールをアジア太平洋地域で最も持続可能なMICEデスティネーションとして位置づけることを目的として、以下の3つの具体的な目標を掲げています。

  1. 観光産業界が容易に適用できる一連のサステナビリティ基準を、2023年までに策定し、2024年までに国際的に認知されることを目標とします。
  2. 6つのMICE会場(*1) すべてと、SACEOSのメンバー企業(*2)の80%が、2025年までに国際的またはシンガポール国内(またはその両方)で認められた持続可能性認証を取得することを目指します。
  3. シンガポールのMICE業界が、2030年までに「シンガポール・グリーンプラン2030」に沿って廃棄物を削減するために、2023年までに廃棄物と炭素排出量の追跡を開始し、シンガポールの二酸化炭素排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)目標に沿って、2050年までにネットゼロを達成します。

*1: これらの6つの会場は、チャンギ・エキシビジョン・センター、ラッフルズシティ・コンベンションセンター、リゾート・ワールド・コンベンションセンター、サンズ エキスポ&コンベンションセンター、Singapore EXPO、サンテック・シンガポール国際会議展示場を指します。

*2: イベントオーガナイザー、会場、スタンド建設業者、飲食業者などを対象とし、SACEOSが提供する教育やコラボレーション活動を通じて、MICE業界のすべてのプレーヤーが認定を受けることができます。

こうした指針を確実に実行に移し、国を上げて世界中にPRしているのがシンガポールです。

シンガポールでの「MICE誘致 x SDGs」具体的な取り組み事例

MICE誘致は国際的な競争力が問われるので、環境への配慮やSDGsの視点は今後ますます重要になります。

その中でもMICE誘致に成功しているシンガポールで取り組まれている事例として、特に特徴的だと思う内容を3つ選定しました。

ぜひこれらのポイントから参考にできる点を学び、日本でのMICE誘致活動に活かしてください。

(1)環境に配慮していることを認証マークを表示し、わかりやすく積極的に発信

シンガポール政府観光局のウェブサイト内の「MICEの施設検索ページ」を見ると、日本のMICE誘致でも見習える点がたくさんあります。

日本語でも検索ページが用意されている
条件に合う会場が探しやすくなっている(左カラムの検索条件の絞り込みが非常に充実)
環境に配慮した認証に関して、検索条件の絞り込み項目がある

シンガポール政府観光局のウェブサイト内にあるMICEの施設検索ページ

【出典】シンガポール政府観光局のウェブサイト内の「MICEの施設検索ページ」

中でも、環境に配慮した認証に関して、検索条件で絞り込むことができるようになっている点は特に重要なポイントです。

日本ではあまりこのような配慮がMICE誘致施設でされていることが、まだ残念ながらあまりないように感じます。取り組まれていない場合はぜひ検討しましょう。

シンガポールでは、いろいろな種類の認証がありますが、たとえば上記の「会場タイプの中」にある「BCAグリーンマーク」は、シンガポール建築建設庁(BCA)が2005年1月に開始した認証制度です。

シンガポールの建設業界に環境に配慮したビル建設を促し、建設業界関係者の環境意識の向上を目的としてつくられました。熱帯気候に適応した室内環境性能や、エネルギー効率等に関する基準で「BCAグリーンマーク」の認証を行っています。

シンガポール政府観光局のウェブサイト内の「MICEの施設検索ページ」の日本語のサイトではまだ反映されていないようですが、グローバル版で検索すると「BCAグリーンマーク」を取得しているMICE会場が多く出てきます。

「BCAグリーンマーク」を取得しているMICE会場

【出典】シンガポール政府観光局のウェブサイト内の「MICEの施設検索ページ」

日本でも有名なマリーナベイ・サンズ内のコンベンション会場は「BCAグリーンマーク」認証を取得しています。

マリーナベイ・サンズのWebサイトでも「BCAグリーンマーク」認証を取得していることを告知し、プロモーションにも活用されています。

マリーナベイ・サンズのWebサイト

【出典】マリーナベイ・サンズ Webサイト

また、マリーナベイ・サンズは「「Singapore MICE Awards(SMA)」で、2023年に「ベニュー(会場)・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。

ウェブサイトでは、マリーナベイ・サンズの会議・イベントサイトでは各会場のレイアウトが丁寧に紹介されており、具体的にどんなところでサステナブルに配慮しているのかを明確に発信しています

MICE誘致で環境やSDGsに関連した配慮が考慮されているかどうかがみられている以上、自社のWebサイトにこのような情報を掲載しておくことは必須であるとも言えます。

MICE誘致関連の施設を運営されている方などは、ぜひ参考にしてみてください。

(2)MICE業界を牽引するほどのSDGs推進事業者を表彰

2023年、MICEを推進する専門組織である「シンガポール・アソシエーション・オブ・コンベンション・アンド・エキシビション・オーガナイザー・アンド・サプライヤー(SACEOS)」では「Singapore MICE Awards(SMA)」というアワードを創設しました。

Singapore MICE Awards(SMA)会場

【出典】Singapore MICE Awards(SMA)

7月には初めての授賞式が開催され、「トレードショー・オブ・ザ・イヤー、ベニュー(会場)・オブ・ザ・イヤー」など11部門が設置されています。

その中に「サステナビリティ イニシアチブ賞」という賞も設けられており、展示会やカンファレンスでの廃棄物と二酸化炭素の削減を含め、MICE でサステナビリティを実践している組織を表彰しています。

第1回の「サステナビリティ イニシアチブ賞」を受賞した組織は、セントーサ島のホテル「Resorts World Sentosa」と、MICEに関連するバイヤーとサプライヤーをマッチングするプラットフォームを運営する「Informa Markets」でした。

先進的な取り組みを紹介することで、他の事業者にもその取り組みを知らせ実践を促し、SDGsの取り組みの輪が広がることも期待できます。

もしご自身がMICEの会場施設の運営者でもある場合は、この賞の受賞者がSGDsの側面でどんな取り組みを行っているのかを研究したり、先進的な取り組みがある場合は、自身でも応募できる「World MICE Awards」などに挑戦し、世界的なPRを図るのも良いでしょう。

World MICE Awardsの様子

【出典】World MICE Awards Webサイト

日本のMICE関連の取り組みの中では、観光分野の取り組みと比べるとSDGsの話はまだまだ議論にあがってきていないので、ぜひ世界と戦える競争力をもつための武器として参考にしていただければと思います。

(3)MICE誘致で来訪した方がSDGsに配慮しつつ楽しめるアクティビティや特典を用意

シンガポールでは、MICEイベントを主催する事業者などに対するユニークな支援制度がたくさんあります。

そのうちの1つ「シンガポールMICEアドバンテージ・プログラム(Singapore MICE Advantage Programme: SMAP)」では、シンガポールでMICEを行う主催者やMICEイベントの参加者に対して、以下のような国内の様々な主要サービスやスポットで使える特典を提供するものです。

  • チャンギ空港
  • セントーサ島
  • シンガポール航空
  • 通信サービス   など多数

Webサイトでは特典の内容が英語が母国語でなくても分かりやすいほどシンプルにまとめられています。

また、Webサイトの右下の緑色の部分では、以下のように特典を使ってやることが、環境・SDGsの面でどのようなメリットがあるかについて、具体的な例を掲載しているので非常にわかりやすいです。

  • 観光客に人気のセントーサ島での無料エコアクティビティの提供
  • 公共交通機関の利用料金のディスカウント
  • カーボンフットプリントの最小化が実現できる

Singapore MICE Advantage Programme: SMAP詳細

【出典】Singapore MICE Advantage Programme: SMAP

MICEで誘客する旅行者は環境やSDGsへの配慮を検討事項に上げているケースが多いため、このような情報は現地に行くべきか否かを検討できる判断材料にもなりえます。

イベント参加者に対して、開催するMICE事業が「環境へ配慮したイベントである」ことを訴えたいイベント主催者などは、ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです。

さいごに(シンガポールの取り組みを活かして日本のMICE誘致を盛り上げよう)

日本のMICE誘致事業は、2023年6月に発表された観光庁のマーケティング戦略でも3本柱の1つになっています。

この記事でご紹介したシンガポールの事例をもとに、MICE誘致と環境への配慮やSDGsの取り組みがコインの裏表のように表裏一体となっていることがわかりました。

このような国を上げて取り組み成果を出している先進的な事例から学び、実際の現場に生かすことができる要素はまだまだたくさんあります。

弊社は14年以上に渡り、シンガポールで開催される多くの大型催事イベントやMICE事業に関わってきました。

具体的なご相談やご質問などがある場合はぜひお気軽に以下のお問い合わせフォームよりご連絡ください。

この記事が日本のMICE誘致を促進する一助となることを願っています。