なぜシンガポールは自動運転指数が世界トップレベルなのか?|事例集
世界的に開発が進む自動運転の分野で実証実験を始めやすいなどの理由から「自動運転指数」が世界トップとされているシンガポール。
それは一体なぜなのか?結論、政府の強力な後押しや実証実験がやりやすい環境整備など、私としては「シンガポールっぽいな」と思うものばかりでした。
このブログで詳しくご紹介するので、日本で開発中で実証実験の場を求めている方はぜひ参考にしてみてください!
(1)自動運転の法整備がすでに整っているシンガポール
自動運転のガイドラインやテスト要件は既に整備済
シンガポールは、世界4大会計事務所のKPMGが各要素を国別に指数化した「自動運転車対応指数」で、実証エリアの居住人口が突出して多いことが評価されて堂々の1位(2020年)を獲得しました。
実際に、シンガポール政府が積極的に整備を進めているので、自動運転のガイドラインやテスト要件は既に整備されています。
追加が必要な場合には、すぐに仮のテスト要件を追加するなど、柔軟性のある制度設計がなされていることも特徴です。
日本だと2024年の現時点では「まだ法整備はこれから」という段階かと思います。
一方でシンガポールはすでに国家主導で都市交通のスマート化を目指しており、自動運転技術を活用した公共交通システムの導入にも積極的に注力しています。
自動運転技術を支えるための通信インフラやデジタルマッピングの整備も進んでおり、他国と比べて早期の商業化が期待されています。
規制サンドボックス制度で都市エリアでの走行も全然OK
シンガポールで制定されている具体的な制度のひとつに「規制サンドボックス制度」と言われるものが導入されています。
これにより自動運転技術のテストに対して、特定の地域や条件下で規制緩和されているので、都市エリアでの走行も許可されています。
実際に2019年には自動運転車の公道テストを行うための包括的なガイドラインが制定され、自動運転の実用化に向けた法的枠組みが整えられました。
シンガポール政府は技術の迅速な実装と安全確保のバランスを重視しているので、自動運転に関するルールや規制は常に状況に合わせて更新されています。
(2)シンガポール政府の推進がとにかく早い
自動運転技術の規制が柔軟
日本は地方都市での導入を重視しつつ、段階的に技術を展開している傾向が強いですが、シンガポールは都市交通の効率化に焦点を当て、テストと実装の迅速化を図っています。
そのためシンガポールは日本と比べると、アプローチや法制度、技術の導入ペース(スピード)など、すべてにおいてとにかく早いといわれています。
KPMGが2020年に各要素を国別に指数化した「自動運転車対応指数」では、評価基準として「政策(Policy)」「技術(Technology)」「インフラ(Infrastructer)」「受容性(Acceptability)」の4つの評価項目を挙げています。
この対応指数の基準のうち「政策(Policy)」と「受容性(Acceptability)」で、シンガポールは1位、日本は18位と、対照的な結果を表しています。
日本政府は、自動運転技術を国の成長戦略の一環と位置づけており、特に2020年代後半までに全国的に自動運転を導入することを目指しています。
一方でシンガポールの国土交通省は、2021年に高速道路での「自動運転レベル3」に対応した車両の販売を許可し、技術開発の推進を積極的に後押し。
さらに、地方都市や過疎地での自動運転バスやシャトルサービスの実証実験が進められており、シンガポールの国土交通省や経済産業省などが中心となって、法整備や安全基準の策定が進められています。
「2020年代後半まで」とする日本と、すでに現時点で実社会での制度や実証実験を進めるシンガポール。両国には10年ほど差があることが現時点でもわかります。
(3)外国企業も含め新技術導入にすごくオープンなシンガポール
日本は国内の大手企業が地方自治体と連携して進めることで、自動運転シャトルやタクシーの運用実験が増えているように感じます。
一方でシンガポールは、シンガポール国外の海外のスタートアップの実証実験に積極的で、実際に様々なテクノロジー企業やスタートアップとの実証実験が数多く進められており、海外企業との連携にも積極的です。
たとえば、テクノロジー企業やスタートアップとの連携が進んでおり「Grab」などの大手企業と自動運転の配車サービスのテストを実施したり、「Navya(ナビヤ)」や「nuTonomy(ヌーベイ)」といった国際的な自動運転企業も参入しています。
これらは都市交通の効率化を目的とした「インテリジェント交通システム(ITS)」の一環として、シンガポール政府の後押しのもと積極的に進められているので、自動運転技術が日々発展していっています。
(4)シンガポールは市民もオープン!
日本では、高齢化社会に伴い、地方での自動運転シャトルの導入は、交通インフラが不足する地域での問題解決策や高齢者の移動手段として期待されています。
一方で、自動運転技術に対する社会的な関心は高いものの、安全性や事故への懸念も根強く、都市部ではまだ導入が限定的です。
それに対してシンガポールでは、政府の強いリーダーシップの下、自動運転技術の導入が一般市民に向けて都市部でスムーズに進行しています。
その理由はシンガポール自体が「都市国家」なので、全体的な交通計画に自動運転技術を組み込みやすく、市民の理解も得やすい風土があるからだと感じます。
実際に自動運転バスやタクシーの実証実験が主要な生活圏で行われており、効率的な公共交通システムの一部として期待されています。
シンガポールでは政府の強いリーダーシップの下、自動運転技術の導入がスムーズに進んでいます。
(5)シンガポール政府と企業の実証実験・コラボレーション例
以下では具体的な内容を事例集としてご紹介します。
【事例1】NuTonomy(ヌーベイ)
MIT(マサチューセッツ工科大学)とSMARTのスピンオフ企業である「NuTonomy(ヌーベイ)」は、AV分野のパイオニア企業。
2016年4月に民間企業として初めて「ワンノース・ビジネス地区」と呼ばれる、シンガポール国内にある国の研究開発およびハイテククラスターとして最初に開発された地域で、公道テストの承認を受けました。
アメリカ、シンガポール、ヨーロッパでテストされた「NuTonomy(ヌーベイ)」のテクノロジーは「Aptiv」による買収につながり、その後「Motional」の傘下に入っています。
2016年には「Grab」と提携し、ワンノース・ビジネス地区で世界初のオンデマンドAVタクシー試験を開始し、AV配備の重要なマイルストーンを刻んだと言われています。
【出典】SiliconANGLE, NuTonomy’s self-driving taxis could hit Singapore streets in just 2 years, MAY 30 2016
【事例2】フランス・日本・シンガポールの3社共同事業
ST Engineering社は、シンガポールにおけるAV技術の発展に貢献してきた企業のひとつ。
10人乗り・26人乗りのオンデマンド・バスサービスを開始し、サイエンス・パークIIとジュロン島で運行を開始しました。
また、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイとの協力により、ST Engineeringはアジア初の完全運行型自動運転車両である、電気駆動のエアコン付き車両「Auto Rider」を導入。
さらに自律走行バスはセントーサ島で運行され、乗客の安全を確保するために様々な条件下でテストされています。
この自律走行バスは、旅客・物資輸送用の自律走行車や、運転システムの世界的リーダーであるフランスのNAVYA社が設計・製造し、日本最大の民間バス事業者のシンガポール子会社であるWILLERS社と、シンガポール最大のカーシェアリング事業者であるCarClub社が共同で運行しています。
WILLERS社は、国立公園管理局(NParks)とSTエンジニアリングと共同で、2020年12月3日からジュロン・レイク・ガーデン(JLG)で自律走行車両の運行・管理にも着手。
ジュロン・レイク・ガーデン(JLG)における「ピープルムーバーシステム」として、自律走行車両を長距離通勤やモビリティソリューションに利用する実現可能性を調査しています。
【出典】WILLERS Webサイト
【事例3】大学による実証実験
Nanyang Technological University(NTU)は、AV技術への学術的貢献の最前線にいる大学です。
学生ホールと主な学習エリアを結ぶ500メートルのルートで、運転手のいないシャトルバスを運行しています。
目標は、このサービスをキャンパス全体とクリーンテック・パークに拡大し、学生と職員のモビリティを向上させることだそうです。
【出典】torque, Self-driving shuttle to ply NTU roads soon, 16 December 2016
【事例4】シンガポール政府と民間企業のコラボ事例
シンガポールの運輸省(Ministry of Transport)と、PSA Corporation、Scania、トヨタの共同研究として実施された取り組みで、大型車のAV技術の開発に重点を置き、リーダー・フォロワー隊形での運転を可能にしました。
フェーズ1の試験は研究センターで実施され、フェーズ2の試験は西海岸高速道路沿いの10kmのテストルートで計画されています。
この取り組みでは、貨物の正確なドッキングとアンドッキングを自動化し、業務効率を高めることを目的としています。
【事例5】ベルギーとオランダの企業の実証実験
2017年9月以来、Katoen Natie社(ベルギー)とVDL社(オランダ)は、ジュロン島でドライバーレストラックのテストを行っています。
道路に設置されたトランスポンダーと通信し、衛星によって誘導される自律走行システムを搭載したトラックによる試験で、最終的にこれらのトラックが公道で自律走行できるようにすることを目的としています。
また、これとは別にKatoen Natie社は、シンガポールにあるエクソンモービルの世界規模の一貫製造拠点で、同社初の無人トラックの運行を開始しました。
このパイロット・トラックは、年間約25万トンの製品を年中無休で輸送可能にするモビリティーで、6ヶ月間の試験運転の後、プロジェクトは徐々に拡大され、年間約300万トンの製品を運ぶ12台のトラックが稼動する予定となっています。
【出典】today, Driver-less trucks to debut on Jurong Island from Sept, May 9, 2017
【事例6】シンガポール企業の取り組み
シンガポール企業のMooVita社は、Ngee Ann Polytechnicという工科大学で運行する自律走行シャトル「MooBus」を配備しています。
13人乗りの電気自動車で、学生や職員に無料で乗り物を提供し、安全オペレーターが同乗して3kmのルートを走行しています。
【出典】Moovita Webサイト, Driverless bus service begins in Ngee Ann Polytechnic, and it’s free
【事例7】リゾート・ワールド・セントーサ内での自律走行シャトルサービス
自律走行シャトルサービス「WeRide Robobus」が、1カ月にわたる綿密な準備と試運転を経て、リゾート・ワールド・セントーサ内で運行開始しました。
この取り組みは以下の3つの点で「シンガポール初」となっています。
一般にアクセス可能な「L4レベル」の自律走行型バスの旅客運行路線
手動シャトル旅客輸送と、自律走行マイクロ循環シャトルミニバスを統合したサービス
自律走行サービスを通じて5つ星ホテル群と高級リゾートを結んだサービス
WeRide、リゾート・ワールド・セントーサ、EZ Buzz Pte. Ltd.が共同で開始したサービスで、全長1.2キロメートル、途中4か所で停車し、所要時間は約12分。
ホテルの宿泊客や観光客は、最寄りの停留所でロボバスに乗ることができます。
2023年12月にシンガポールの自律走行車の公道ライセンスM1とT1を取得して以来、WeRide社は急速にロボバスを展開し、導入の速さから業界内でかなり注目を集めました。
さいごに
シンガポールは、自動運転に関する研究開発を行っている日系企業が、新しい技術を試す際にとても便利な環境が整っています。
その理由は大きく3つあります。
- ルールが柔軟で、必要に応じてすぐ変更できる
- 政府が積極的にバックアップしてくれる
- 実験するための環境が整っている
自動運転の分野では、法整備だけでなく政府の強力な後押しやパートナーとなれそうな企業なども揃っているので、市場に参入しやすいという特徴があります。
また世界中のスタートアップ企業や技術企業を受け入れているので、ただ技術を試すだけではなく、実際のビジネスとして展開することも視野に入れやすいという利点もあります。
日系企業で現在開発している技術やサービスも、シンガポールで試してみる価値があると考えられるので、うまくいけばそのまま本格的なビジネスとして展開できるチャンスもあります。
「シンガポールで何かやってみたいけど、なにからすればいいかわからない」と感じられた方は、ぜひ以下のフォームかメールで弊社までお気軽にご相談ください。











