なぜ日本企業が海外市場で見劣りするのか?海外広報で変わるBtoBの未来
日本の製造業、とりわけ部品や精密機械メーカーは、世界から高く評価される技術を持っています。ですが、海外市場では残念ながら十分に認知されていない企業が少なくありません。
この差は広報活動の差であり、結果として商談機会やパートナーシップの獲得力にも直結しています。
例えば、同じ織機メーカーでも、ドイツの企業はWebサイトや業界誌、展示会登壇を駆使してブランド力を築いている一方で、日本の同業は海外での情報発信ゼロ。
先日お会いした日本の製造会社の社長さんは海外広報に取り組みたいと感じつつも「BtoB企業には広報は無駄だ」という社内の意見に頭を悩ませていました。
このブログでは「BtoB企業でも海外広報は必要」である理由を海外の優良事例を踏まえてご紹介し、今からでも着手できる方法を具体的にご紹介します。海外で展示会に出展予定がある企業のご担当者は、ぜひ参考にしてみてください。
なぜ海外向け広報が必要なのか
海外の展示会には出ているけど、出展した事実を事後まったく「英語」で発信していない。
国内外で新商品をローンチしても、海外メディア向けの「英語」のプレスリリースを配信していないので、海外メディアにまったく露出していない。
海外進出を目指す日本企業の中にも、実はそんな企業が多くありますが、展示会であなたのブースを訪れて興味を持った方は、必ず後日、あなたの会社名を「英語」で検索するはずです。
その際に、英語で検索しても会社情報や最新ニュースが何も出てこないことがわかったらどうなるでしょうか?
当たり前ですが、日本の場合と同様に、相手は「情報が出てこない=信頼できない」と感じてしまい、せっかく展示会で出会った見込み客をその後の広報不足で逃してしまいます。
特に日本のBtoBの企業では「うちは待っていれば口コミで広がる」という考えを持つ方も多いようですが、その考えは非常に危険です。
むしろ大きな商談に関わるBtoB企業ほど、信頼と安心感を裏付ける広報活動が欠かせません。
特に海外市場進出においては、確実に海外向けの広報をやることが海外の競合他社と対等に戦う必須条件。
物理的な距離や言語の壁があるからこそ、企業の実態がわかるような実際に取り組む活動は「Webで検索すれば大体わかる」という状況を作っておくことが重要です。

BtoB企業にとって海外広報の取り組み方を考えるためには、「海外の展示会に出展する際に英語でも広報をする」という状況をイメージすることが最も想像しやすいかもしれません。
多くの日本企業は、自社のホームページのニュース欄や「お知らせ」欄に出展告知をしていると思います。していないところは論外ですが、していたとしても「展示会出展のお知らせ」しか書いていない場合、それは十分と言えるのでしょうか?
- どんなことを紹介するのか?
- 何を目的にどんな方との接点を持ちたいのか?
- なぜこの国の展示会への出展を選んだのか?
といった情報がなければ、潜在顧客が仮にWebサイトに来て出展情報に辿り着いたとしても、はっきり言って意味のないつまらないアップデートだと思われるでしょう。現場で商談をしたい、話を聞きたいと思われるような情報発信ができている企業は非常に少ないのが現状です。
一方で海外の企業はというと、展示会への出展に関する情報発信はもちろんですが、それ以外にも以下のような内容を記事化しているところが目立ちます。
- 会社で取り組む新しいプロジェクト
- 提携する他社との取り組み
- 展示会の事後レポート
例えば、ドイツの製造機械メーカー「STOLL」は、今年の6月にフィレンツェで3日間にわたって開催された「Pitti Filati 95」に出展した際の事後レポートを発信していました。
【出典】STOLL Webサイト, News & Events; News; NOCTURNO in the spotlight, 07/11/2024
<記事の日本語訳>
2024年6月27日、フィレンツェで3日間にわたって開催されたPitti Filati 95が閉幕しました。来場者数は3,500人に達し、前年のイベントと同水準となりました。全体の49%を占めた海外からの来場者は、前年よりもやや増加し、50か国以上から訪れました。
海外市場の中では、イギリス、アメリカ、中国、トルコ、スペイン、スイス、日本、オランダ、デンマークからの来場者が増加しましたが、フランスとドイツはやや減少しました。
今年のPitti Filatiには、KARL MAYER GROUPのフラット編機のスペシャリストであるSTOLLも出展しました。STOLLは新しいトレンドコレクションNOCTURNOや、糸メーカーIAFIL Industria Ambrosiana Filati S.p.A.とのコラボレーションで生まれたSTOLL ITALIAの開発成果を紹介しました。また、希望者にはCREATEファミリーのデジタルソフトウェア製品のデモンストレーションも行われました。
さらにSTOLLは、出展者としての参加に加え、他の3社とともに「Training Days」プロジェクトを主導しました。これは、業界全体のオペレーターの専門的なスキル開発を目的とした取り組みです。
日本語訳を見てもわかるように、たいして文字数は多くありません。重要なのは、多大な労力をかけて大作を発信することではなく、端的に最新の動向をきちんと情報を発信することです。
この少しの取り組みが着手できていない日本企業が多く、結果的に海外の見込み顧客を取りこぼしている可能性があります。
「海外広報」は決して大それたことではなく、海外市場に向けた些細な情報発信のことなのです。
優良事例に学ぶ、海外広報を掛け合わせて効果を何倍も引き上げるコツ
STOLLは他にも「業界全体の動きを網羅しているんじゃないか?」と思うほど様々な情報発信を行なっており、BtoB企業の海外広報のお手本としてぜひ見ていただきたいです。
以下ではSTOLLの「News」ページから確認できるお手本にしたい要素を整理したので、ぜひ参考にしてみてください。
【出典】STOLL Newsページ
【1】コンテンツの種類を豊富に更新する
STOLLは、自社に関する多岐にわたる以下のようなテーマを定期的に発信しています。
- 新製品紹介
- 展示会情報
- 各国・地域での活動
- 協業の情報
- トレーニング
- ソフトウェア・UI の改良
- ユーザー向け動画
例えば以下の記事では「Training Days」という取り組みをテーマに、業界関係者に学習機会を提供し、顧客と長期的に関わる姿勢を発信しています。
【出典】STOLL Webサイト, News & Events; News; New 2024 training dates, 01/29/2024
別の記事では、ベルリンでの「サステナブル・マイクロファクトリー」開設に参画し、未来志向の取り組みを発信。サステナブルなファッション産業をめざす協業を紹介し、社会的意義を強調しています。
【出典】STOLL Webサイト, News & Events; News; SHIFT – The Microfactory by VORN opens, 03/21/2025
また、先ほどご紹介したイタリア・フィレンツェで開催された 「Pitti Filati 95 」の事後レポートでは、新トレンドコレクションを発表し、イタリア子会社との連携を強調しています。
【出典】STOLL Webサイト, News & Events; News; NOCTURNO in the spotlight, 07/11/2024
やはりどの記事も超大作の記事ではありません。ほんの4パラグラフで終わってしまうような情報発信でもありますが、確実に最新の自社の取り組みが紹介されていることが、STOLLの海外広報からわかるお手本にすべきポイントです。
また、豊富に更新することで「業界の最前線がわかるメディア」といった印象も与えられ、顧客や見込み客に「この会社は業界のことをよく知っている」と感じられます。
更新頻度も上がるので「この会社はいつも動いている」「この会社と付き合うと得がある」という印象も与えられます。
製品のPRやイベント・展示会への出展告知だけだと、自社の動きを点でしか見せられません。
ですが、STOLLのように自社の活動を業界全体のトレンドや展示会・イベント出展での取り組みと織り交ぜることで豊富な話題を更新できると、継続的に情報発信がしやすくなるので、ウェブサイトを訪れた見込み顧客との信頼関係を深めるきっかけが作れます。
自社のウェブサイトがあって「お知らせ」などの更新ができるページをすでにお持ちの企業様は、ぜひこれらのポイントを参考に記事を更新してみてはいかがでしょうか?
【2】展示会出展のプレスリリースと事後レポート掲載を実施
STOLLは展示会に出展する前の告知だけでなく、展示会の事後レポートも詳しく掲載しています。
例えばこちらの KARL MAYERの記事は、STOOLが 所属するKARL MAYERグループの展示会レポートを発表しています。
【出典】STOLL Webサイト, News & Events; News; Convincing presentation, intensive discussions, agreed projects, 11/01/2024
<記事に記載されている内容(一部)>
世界の繊維産業が厳しい状況にある中、上海で開催された ITMA ASIA + CITME 2024 は、KARL MAYER GROUP を含む多くの国際企業にとって期待の大きい見本市となりました。 繊維機械のリーディングメーカーである同社は、顧客のビジネスにおける変化と転換に焦点を当てて展示を行いました。「Master the Change(変化を制する)」というモットーのもと、同社はあらゆる事業分野から、現代の課題から生じる機会を活かすことのできるソリューションを紹介しました。
TEXTEIL NEWS 編集者のウルリケ・シュレンカー氏は、KARL MAYER(CHINA)のゼネラルマネージャーであるコン・ジェン氏にインタビューを行い、多岐にわたるプレゼンテーションが来場者にどのように受け止められたのかを探りました。
出展が決まった時点で、英語のプレスリリースを海外業界メディアに配信し「どんな技術を披露するのか」「どの課題を解決するのか」を明確に発信。展示会の前から注目を集め、来場者が事前に訪問計画に組み込みやすくしているようです。
告知を
【3】発信は必ず「多言語対応」
STOLLの見込み顧客は母語か英語で情報を探すことがほとんどなので、多言語対応は必須。
そのためWebサイトは英語を基本とし、ドイツ語や中国語など、ターゲットとしている市場の言語にも対応しています。
特に海外広報においては、現地メディアや見込み客にとって「読める」「理解できる」ことは信頼の第一歩なので、多言語対応は必須と言えます。
弊社ではBtoBではなくBtoC向けのイベントにKOLやメディアを招致することがよくあるのですが、実際に事後、詳しい情報を参照できる情報がないことを理由に掲載ができないと断られたケースもあります。
【出展】STOLL Webサイト
いかがでしょうか?
ドイツ企業がこれほどBtoBでも広報に力を入れている一方で、日本の同業は国内向けの情報発信しか行っていません。
その結果、海外市場での知名度は低く、競合比較の土俵にすら上がれていないこともしばしば。広報で差をつけられているのがわかりませんか?
海外向け広報施策はこれだけある
ここからは、制約があっても比較的始めやすく、効果の高い施策を紹介します。
海外向けプレスリリース配信

実施内容
- 既存の日本語リリースを英訳し、ターゲット市場の業界メディアや記者に配信
- 配信先は業界特化型メディアを優先(例:産業機械専門誌、エネルギー業界誌)
- 配信後は記者に個別フォローを行い、記事化の確率を上げる
ポイント
既に国内で作った素材をベースにできるため、初期負担が少ない
支援事例
日本の精密部品メーカーがシンガポール展示会に合わせて新製品を発表した際、既存の日本語リリースを弊社で英訳・リライト、東南アジアとヨーロッパの産業機械専門誌に配信し、2誌に掲載。展示会来場者のうち「記事を読んで知った」という商談リードが獲得できた。
【参考】シンガポールの海産物業界に特化した専門メディア「Seafood Source」。このような業界メディアにアプローチするとニッチなBtoB企業の場合、潜在顧客との接点を得やすい。
業界誌への寄稿・記事出稿
実施内容
- ターゲット市場の主要業界誌をリスト化し、編集部に直接コンタクト
- 寄稿テーマの例は市場トレンド分析、技術の応用事例、業界課題と解決策など
ポイント
業界誌掲載は第三者評価として信頼性が高く、営業資料にも活用可能。記事は自社製品の露骨な宣伝ではなく、業界課題の解決にフォーカスすると掲載されやすい。
支援事例
テレコミュニケーション会社の海外広報支援では、日本のICT業界誌に「急増するデータ通信需要に対応する次世代ネットワークの可能性」という記事を寄稿。
弊社では寄稿用記事ドラフト作成を行い、露骨なサービス宣伝ではなく「業界課題解決」に焦点を当てた記事を掲載。記事を読んだジャーナリストから「最新情報が欲しい」と問い合わせが生まれた。
ホワイトペーパー・技術レポート公開
実施内容
- 自社技術を活用した課題解決事例や検証データをまとめ、PDFでダウンロード可能にする
- 「省エネ化のための最新ベアリング設計」「製造工程の歩留まり改善事例」など
ポイント
ダウンロード時にメール登録を求めることで、見込み客リストが獲得可能になるので、顧客教育とリード獲得を同時に行える。
支援事例
シンガポールの脱炭素SaaS企業の日本市場進出に向けてホワイトペーパーを作成し、メディアに配布。ランディングページからダウンロードを獲得し、そこから大手製造業との導入検討ミーティングにつながった。
展示会カンファレンスでの登壇

実施内容
- 多くの業界展示会は併設カンファレンスを実施し、スポンサーや出展者向けに登壇枠を提供
- 主催者に直接問い合わせ、講演・パネル参加の機会を確保
- 技術発表や事例紹介は、聴衆との信頼構築に直結
ポイント
展示ブースだけでは得られない「業界の顔」としての認知を獲得できる
支援事例
展示会カンファレンスでの登壇支援をさせていただいた実績は、残念ながら弊社では過去に一度もありません。
これまで何度も提案させていただいてきましたが、やはり「英語でのプレゼンテーション」や「魅力的に見せることへの準備面における心理的なハードルの高さ」などがあり、なかなか登壇を前向きに検討される企業様がいないのが現状です。
展示会での登壇はブース出展よりも直接的に訴求でき、目立つことができる最高の機会です。
またシンガポールの展示会には、登壇の機会は出展と同じく申請すれば誰でもができるケースがたくさんあります。「我こそは!」という方はぜひご支援させていただけたらと願っています。
さいごに
海外広報は特別なことではなく「信頼を得るために必要な情報を伝える行動」です。
どんなに優れた技術があっても、伝わらなければ出会うはずの相手に届きません。逆にたったひとつの記事がきっかけで、思いがけない国の企業とつながることもあります。
この記事でご紹介した内容を参考に、今後出展する海外展示会の出展事後レポートなど、ぜひできるところから始めてみていただけたら嬉しいです。
また、弊社では日本企業の海外広報をご支援していますので、具体的にご相談やお悩みがある場合はぜひ以下のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
このブログが海外市場進出を目指す日本企業の皆様にとって、海外広報に挑戦するきっかけになれば嬉しく思います。








