7つの失敗例から学ぶ海外フォーカスグループがうまくいくコツ

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日本のやり方のまま海外市場でのフォーカスグループインタビューを進めるのは危険です。

私たちは多国籍国家のシンガポールで日本企業様のグループインタビューのサポートをしていますが「日本と違う!」と進め方の違いに驚かれることが多いです。

日本人同士だと「何となく通じ合える」ものが、多国籍の国ではほとんどありません。具体的な質問や深堀りをしていく必要があります。そうでないと表面的なもので終わってしまいます。

今回は7つの失敗例を具体的にご紹介しながら、私たちがいつもどんなことに気をつけて海外シンガポールでフォーカスグループインタビューを行っているかをシェアします。ぜひ参考にしてください。

 

質問の仕方に関する失敗

【1】 価格と価値を測る質問の仕方を間違える

高所得層(世帯月収S$15,000(180万円)以上)に対して実施したグループインタビューでは「(世帯月収180万円以上の人は)価格より利便性やステータスを重視する」という仮説を立てていました。

ですが、実際に参加者に尋ねようとしていた設問は

この商品は高いと思いますか?

安いと思いますか?

という価格に対する問いでした。その結果、返ってきたのは

「高いけれど払える」

「値段は気にしない」

といった表面的な回答のみになってしまいました。本来検証すべきだったのは、単なる金額の高低ではなく、そのブランドを選ぶことで感じる以下のような点についてだったはずです。

  • 安心感や信頼感をどれくらい得られると感じるか
  • 時間を取られずに済むメリットをどれくらい感じるか
  • 所有することで得られる社会的な評価や満足感をどれくらい感じるか

これらは意思決定の軸に関わる内容ですが、このときの調査では十分に掘り下げることができませんでした。

高所得層にとって価格はひとつの検討材料ではあっても、判断基準になるとは限りません。

重要なのは「なぜそれを選ぶのか」という価値を裏付ける理由なので、例えば

この商品を選ぶ決め手は何ですか?

同価格帯の商品と比較したとき、何が違えば購入しますか?

といった設問に変えるだけで、価格以外の評価軸を聞き出す可能性があがります。

【2】仮説を検証できない質問をしてしまう

日本のメーカーが自社で販売する食品に対して「30代・共働き・子育て世帯」を対象にグループインタビューを実施しました。

「忙しい平日夕方には、利便性が高い商品(=自社の商品)へのニーズがある」という仮説を立てていたのですが、グループインタビューで準備していた設問は

この商品についてどう思いますか?

味や見た目はどうですか?

といった一般的な感想を尋ねる内容が中心で、結果参加者から出てき回答は

「普通に良い」

「悪くない」

といった表面的なコメントばかり。肝心の「夕方の忙しい時間帯でどんな商品が求められるのか?」という情報は得られず、仮説の検証には至りませんでした。

当たり前なことに聞こえるかもしれませんが、フォーカスグループインタビューを実施するなら、絶対に仮説を設問の中に織り込む必要があります

今回のケースの場合は、例えば以下のように具体的なシーンを提示すると、参加者は自分の生活に当てはめて考えられるので効果的です。

平日の夕方、お子さんが宿題をしている横で夕食準備をするとき、この商品は役立ちそうですか?

とても基本的なことですが、実際長年シンガポールでグループインタビューを始め展示会会場でのアンケートなど、様々なヒアリング業務をご支援させていただく中で、かなり多くの企業がこの落とし穴にハマりがちだなと感じています。

仮説と設問が関連していないと、どれだけ良い参加者を集めても本質的なインサイトは得られません。

具体的なシーンを提示する以外にも、以下のようなオープンクエスチョンを入れると、グループインタビューの現場で意見交換が活発になって新しいインサイトが得られる傾向が高まります。

忙しい平日に食事の準備をするとき、どのような商品やサービスが役に立っていますか?

事前に設問を準備する際にぜひ参考にしてください。

設問を検討するイメージ

現地市場に関する情報不足による失敗

【3】現地の常識を折り込まずに実施してしまった

家事負担を軽減する商品をテストしようとした日本のメーカーが、日本と同じ感覚で「子育て世帯=家事が大変」と仮定して、シンガポールでグループインタビューを実施したことがありました。

ところがシンガポールでは調査の対象となった世帯はメイドを雇っている家庭がほとんどで、料理や洗濯はすべてメイドがやるケースが主流です。参加者からは

「(そもそも)家事の負担を感じていない」

「なぜこの商品が必要なのか分からない」

という声が上がり、日本での生活の当たり前を前提に仮説を立ててしまったことで新しいインサイトを引き出すまでに時間がかかりました

シンガポールでは居住する住宅が日本でいう公営団地に相当するHDBかコンドミニアムか住居タイプかといった要素でも、生活水準や価値観が大きく異なります。

一般的にコンドミニアム居住者は「所得水準が高くてメイドを雇っている家庭」がほとんどで、家事関連の商品やサービスは利便性よりブランドを重視する人も見られます。

同じ「子育て世帯」でも中身は日本とはまったく違うので、現地の常識を事前に把握しているかが有意義なグループインタビューができるかどうかを左右します。

事前の視察や現地の企業とのディスカッションなどで現地の常識はある程度把握できるので、絶対に事前に実施して設問設計に活かしましょう。

【4】「富裕層」だと思い込んでいただけで実際は違った

ある企業は「年収1,000万円以上=富裕層」という日本での基準をそのまま用いて、シンガポールで「年収1,000万円以上」のグループインタビューの参加者を集めました。

ですが、シンガポールでは月収S$8,000前後(日本円で約1,000万円相当)は「中間層」と認識されることが一般的です。

そのため、富裕層向けサービスの調査のはずが、実際には高級ブランドや高額教育サービスに対して積極的ではない「中間層へのインタビュー調査」になってしまいました。

シンガポールでいわゆる富裕層とされるのは、国際的に用いられるHNWI(High Net Worth Individual)の基準でもある純金融資産100万USD(1億5,000万円)以上であることが多い印象です。

一方で日本では「金融資産1億円以上」を富裕層と呼ぶことが多いため、この時点ですでに5,000万円程度の差が生じています

また、シンガポールは外国人労働者や永住者も多く、収入構造が非常に多様です。富裕層と呼ばれる層の中には各国からの駐在員もいるため、単純な収入や年収基準で選定するよりも、こうした質的な違いを踏まえて「どの層(セグメント)に対する調査を行いたいのか?」を事前に検討しておくべきです。

日本基準で設定した年収別よりも調査の精度が増す可能性があるのでおすすめです。

【5】食習慣を考慮せずに試食調査をしてしまった

日本のお菓子メーカーが「試食つきフォーカスグループ」を実施した際の失敗例を聞いたことがあります。

参加者の半数がイスラム教徒だったため、ゼラチンやアルコールを含む可能性のある試食品のお菓子をそもそも食べることができず、試食そのものが成立しなかったとのこと。

また参加者からは「豚肉を含むのか?」との質問があり、即座に回答ができず場が気まずくなったり、他にも「原料に表示されている「肉」は「何肉」を指しているのか(鶏?牛?豚?)」が曖昧で、参加者が発言を控える雰囲気になったそうです。

シンガポールは多民族国家なので、ベジタリアンなどの個人の嗜好性に寄るものから、宗教上の制限などを食に関して配慮する点を持つ人が多岐にわたっています。

そのような食習慣の違いを考慮せずに設問を立ててしまうと、せっかくの調査も無駄になってしまうリスクが高まるので、参加者の「食習慣」や「食事制限の有無」は事前に把握するようにしましょう。

多国籍国家なシンガポールのイメージ

当日の現場の場づくりに関する失敗

【6】参加者以外のギャラリーが多い

10名近い企業関係者がグループインタビューに同席した例では、参加者が「評価されている」と感じてしまい、批判的な意見や否定的な感想をほとんど聞けなかったということがありました。

場の権威性が高まるほど本音が出にくくなり、誰でも緊張してしまいます。忌憚のない意見を得たいのであれば場の作り方には注意が必要なので、以下のような対策を検討してください。

  • 同席が必要な関係者は少人数に絞る
  • 冒頭で必ず「今日は自由に話してください。評価はしません」と参加者に伝える
  • 権威性を感じるようなものは置かない(例:企業ロゴ入りの資料)
  • 同席を希望する関係者が多い場合は、観察室やオンライン配信で視聴させる

参加者がリラックスしている方が「ぶっちゃけた話」が聞きやすくなるので、結果的に調査の質が上がります。ぜひ工夫しましょう。

【7】通訳を介して進行をする

日本人ファシリテーターが日本語で進行し、通訳を介して質問を投げかけていた事例がありました。

このやり方だと質問が直訳されすぎてニュアンスが硬く聞こえてしまうため、参加者は「教科書的な答え」しか返さなくなりました。

また会話が盛り上がったと思っても通訳待ちで議論が中断してしまうので、自由な発言が減って一般論や無難な回答に偏る傾向がありました。

これではせっかくの「本音」を聞くチャンスが台無しです。

できたらですが、シンガポールで実施する場合はシンガポール特有の日常会話で使われる「シングリッシュ」が話せるファシリテーターを手配しましょう。

現地の言い回しやテンポを理解している人が進行すると、通訳がいるよりも遥かに参加者は自然な話し方で意見を述べやすくなります。

グループインタビューの最中に参加者同士が自然に会話しているような雰囲気を作れると、本音や生活感のある意見が引き出しやすくなるのでとてもおすすめです。

グループインタビューの会場のイメージ

さいごに(失敗を防ぐ最短ルートは現地法人を頼ること)

海外市場でフォーカスグループインタビューを行うとき、日本国内の経験をそのまま持ち込むのは危険です。

まずは当たり前なことに聞こえますが 「日本と同じやり方では通用しない」 という大前提を理解し、本記事でご紹介した失敗例を参考に検討し始めてみてください。

弊社ではシンガポール市場を中心に日系企業が実施するグループインタビューを長年ご支援させていただいています。具体的にご相談がある方は、ぜひお気軽に以下のフォームよりご連絡ください。

有意義で効果的なフォーカスグループインタビューを設計・実施して、海外市場進出におけるリスクを大幅に減らし、商品開発やマーケティングの成功確率を高める知見が得られる取り組みにしましょう。

本記事が海外進出を検討されている日本企業の皆様の参考になれば幸いです。