訪日観光客にレンタカー需要はある?聞こえる不安から考察した攻略ポイント

レンタカーのイメージ
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最近、地方自治体や地方の観光業の方々から「シンガポールの訪日旅行者にレンタカー需要はありますか?」というご相談をよく聞くようになりました。

観光庁によると、2019年には訪日外国人のレンタカー利用率は12%で、沖縄は61%と平均よりもかなり高いようで、別のデータでは北海道のレンタカー利用率で2019年はシンガポール人がトップ。2017年の九州でのレンタカー利用率も、シンガポール人が東アジア諸国に続いて4位

訪日観光リピーターが多く、ローカルな穴場が好きな人が多いシンガポールの訪日観光客にとって、レンタカーは有効な手段として利用されており、すでに「フリー&イージー型商品」というという交通と宿泊は決めるものの、行程のほとんどが自由となっているツアーも販売されています。

ですが、実のところシンガポールの訪日観光客の間では「日本でレンタカーを使うのは不安」という声も聞こえるのも事実です。

そこで今回は、訪日経験が豊富な弊社のシンガポール人スタッフに、訪日旅行中のレンタカー利用についてヒアリングし、実際の課題と必要な対策を検討してみました。

インバウンド、特にシンガポール人訪日観光客のレンタカー需要を掴むためのヒントになれば幸いです。

 

【インタビュー対象者: Han Rui】

シンガポール出身。日本の文化と食をこよなく愛し、地元のシンガポール人に日本の文化と食を紹介することに情熱を注いでいる。シンガポールだけでも2,000軒以上の日本食レストランを訪れ、シンガポールの日本食業界に精通している。シンガポールにおける日本酒、シーフード、フルーツ、米のプロモーションを手がる。Vivid CreationsのPR事業を統括する。

 

【インタビュー対象者: Kat Kamaluddin】

シンガポール出身。客室乗務員として7年間世界を旅した後、日本の文化を学ぶことに興味を持ち、Vivid Creationsに入社。観光分野での経験を活かし、日本の観光プロモーションや現地観光レップで旅行会社との連携を担当している。また、現地での各種イベント企画運営や現地パートナーとのコミュニケーションを担当。シンガポール観光ガイド、国際唎酒師の資格を保持する。

外国人にとって日本でのドライブは不安だらけ

シンガポールでは、国土が狭い国内で車を所有するハードルをあえて高くし、車を持ちづらくすることで、国内の交通量の統制を図っています。なので、運転免許は持っていても「シンガポールで運転することはないけど、海外旅行に行ったら運転してみたい」という声を聞くことがあります。

また、シンガポールの車は日本と同じく、右ハンドルで左走行。運転はしやすいので、二次交通が弱いエリアだったり、過度に観光客が集中している観光地からそれ以外の地域への分散を促すために、レンタカーを提案すると響く可能性が高いでしょう。

ですが、訪日観光時にレンタカーの利用経験がある弊社のシンガポール人スタッフから、こんな不安が挙がってきました。

  • 英語の標識がないことが多いので不安になった
  • 工事や通行止め時の指示が不明確だと感じることがあった
  • シンガポールとの交通ルールの違いに戸惑った(例: 黄色信号の意味)
  • 山間部の狭い道で、対向車に対してどう対応したらいいのかわからず、難しかった
  • 特異な地形や気候に対する運転スキルがそもそもないので、運転していて困った

逆に言えば、このような現状の課題に対する不安を解消してあげることができれば、日本でレンタカーを借りたいと思う訪日観光客は増えると考えられます。

むしろ、このようなことへの対策をまだやってないところばかりなので、対策した地域が訪日観光客向けにレンタカーを売り込むことで、先行利益を得られる可能性さえあるでしょう。

訪日観光客向けのレンタカー訴求を考えている方は、ぜひ上記の不安を払拭する対策を考えた上で、シンガポール市場への取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

訪日観光のイメージ

観光スポットだけでなく安全で効率的なドライブルートを提案しよう

ドライブは生死に関わる問題にもなりかねないので、言語が全く通じない状況の場合は当然誰も借りたくないものです。実際、弊社のシンガポール人スタッフにヒアリングした結果、以下のようなコメントがありました。

都市部でも当てはまることがあるが、特に地方部では英語の標識がないことが多くて困った。

特に、工事や通行止めを指示する標識を見ても、具体的にどうしたらいいかわからないことがあって大変だった。

山間部で狭い一本道を走っていた際に、対向車が来た時にバックしなくてはいけなかったときがこれまでの訪日経験の中で最も怖い経験だった。

たとえ運転ができたとしても、多くのシンガポール人は日本の特異な地形に対応できるほど運転スキルが高くないので同じような不安を持つ人は多いと思う。

より安全にレンタカーを利用して旅を楽しんでもらえるように、レンタカー会社は具体的な対応策として、以下のような案内を車の引渡時にできるようにしておきましょう。

  • 走りやすい道や、混雑しにくい時間帯を予め把握できる資料を英語で用意する。
  • 以下のような場所は「特に注意が必要なエリア」として英語で資料を用意する。
    • 道が狭い場所(対向車に注意が必要な道)
    • カーブが急な場所
    • 事故が多い場所
  • 工事中で片側通行となっている場所や、臨時信号が設置されているエリアを説明する。

国によっては「臨時信号」や「片側交通」の意味がわからない人もいるかもしれないので、写真などを用いて発信して良い時とそうでない時を説明してあげるくらいの丁寧さが必要なこともあるので、資料を準備しておいて損はありません。

こちらは高速マップですが、NEXCO中日本のWebサイトのサイトが視覚的にわかりやすくまとめられていると思いました。ぜひ参考にしてみてください。

NEXCO中日本のドライバーズサイト

【出典】NEXCO中日本 ドライバーズサイト, 静岡周辺(平日)

英語でのコミュニケーション環境を整えよう

当たり前ですが、せっかくレンタカーをしたいと思っても、引き渡しの際に英語が通じない状況だと、契約内容や手続きの理解に不安を感じさせてしまいます。実際、ヒアリングする中でもこのような話題がありました。

契約内容を誤解したくないので、レンタカー屋さんに行った時に英語が話せるかを聞くが、ほとんどの場合は英語ができないケースが多かった。

自分は多少日本語が理解できるので、理解できた内容を頼りにして把握しようとしたけれど、日本語が分かる同行者がいない場合や、まったく日本語がわからない人にはとてもハードルが高いと思う。

沖縄へ旅行に行った時は、レンタカー会社が英語での対応に慣れていたので、とても安心して満足して契約することができた。

きちんとした対応ができるように、契約手続きや保険内容、有事の際の対応を英語で説明できるスタッフを事前に配置するようにしましょう。

もしも人員配置が難しい場合は、

  • 英語で契約内容を説明する動画やウェブサイトを作成する
  • 英語が話せるサポートデスクを設置して有事の連絡窓口として利用可能な状態にしておく

など、できる準備は整えることが重要です。

特に、変更が頻繁に発生しないのであれば、説明資料や動画があると汎用性が高いので、英語で準備しておきましょう。

車の運転好きなアメリカ人駐在員のKerleemのYouTubeチャンネルで公開されている、訪日観光時にTOYOTAレンタカーで車を借りた際に学んだ注意事項をまとめた動画には、日本の独特な標識について、事前に英語で書かれた紙媒体の資料と説明があったことが紹介されていました。

このような情報は非常に重要なので、訪日観光客向けにレンタカーを訴求したい場合は最低限の準備として用意してください。

日本のレンタカー会社からもらった資料

【出典】Kerleem YouTube チャンネル, Renting a car in JAPAN?! Here’s what YOU should know about driving in JAPAN!!, 2024/10/14

言葉のいらないピクトグラムを用意しよう

日本語が分からない訪日観光客にとって、日本のガソリンスタンドや交通ルールについて理解することはとても難しいことです。実際、ヒアリング時にこんな実例がありました。

日本で運転した際に、交通ルールがシンガポールと違うので戸惑ったことがあった。

例えば、初めて「信号機が黄色に点滅」しているのを見たとき、どうしたらいいのかわからなかった。

シンガポールでは、黄色は「止まる準備をする」という意味しかないので、注意して進んで良いとは思わなかった。

レンタカーを引き渡す際には、視覚的に理解できるような資料があると、言語の壁を超えて迅速に内容を把握しやすくなるので、以下のような資料を準備するようにしましょう。

  • 交通ルールや注意点をピクトグラムで示す資料を、契約時に配布する
  • ガソリンスタンドの操作手順や、利用にあたっての注意事項をイラスト付きで分かりやすく解説した資料を作る
  • 道路標識や注意事項のガイドラインをピクトグラムで資料にする

実際に、一般社団法人沖縄県レンタカー協会は「安全運転マニュアル」として、運転に際して必要な情報をウェブサイトに日本語・英語・韓国語・中国語でまとめていて非常にわかりやすいので、ぜひ参考にしてみてください。

運転に係る必要情報の記載例のイメージ

【出典】一般社団法人沖縄県レンタカー協会 Webサイト,「安全運転マニュアル」

ニッポンレンタカーが出している「HOKKAIDO DRIVE GUIDE」では、ETC利用についての案内や、トンネル走行時の注意サービスエリアでの注意事項などの記載もかなり図解が多くてわかりやすいので、ぜひ参考にしてみてください。

HOKKAIDO DRIVE GUIDEの抜粋

HOKKAIDO DRIVE GUIDEの抜粋

【出典】ニッポンレンタカー, HOKKAIDO DRIVE GUIDE

利用者の立場に立ったプロモーションコピーにしよう

レンタカーを借りることでどんなことが叶うのか」、あるいは「どんな人にレンタカーがおすすめなのか」といったことがわかりにくいという点が、ヒアリングで聞こえてきました。

大きな荷物があると動きづらく公共交通機関の利用は不便。

短期間にいろいろな場所に行く予定がある時などは運ぶのが面倒なので、コストよりも時間を節約したいことがある。

レンタカーがその手段として適切なのかどうか、判断に迷うことがあった

訪問するエリアがレンタカーを使うのに適しているか?

電車では行きにくい場所なのか?

総合的にレンタカーの方が便利なのか?といったことが、旅行の計画段階時にわかりにくかった

訪日観光時に「レンタカーをする」という選択が、安全で使いやすく、旅行の価値を高めるということが、実際に旅行をする前に伝わらない限り、検討すらしてもらうことができません

なので、レンタカーのメリットが伝わるプロモーションコピーをきちんと検討して訴求することが大変重要です。

具体的にはレンタカーを訴求したい地域において、以下のようなカテゴリを参考に、レンタカーをしそうな潜在顧客に対して、どのような訴求ができそうか考えてみましょう。

(1)顧客の背景や課題をリサーチする

「重たい荷物を持って移動するのが大変」「短期間で複数観光地を巡るのに公共交通機関だと不便さがある」などの、利用者が直面する課題を具体的に解決する手段として、レンタカーの利便性を訴求する必要があります。

ただ単にレンタカーのメリットを列挙するだけでなく、レンタカーを訴求したい地域の特性を踏まえた上で、その地域への旅行を考えている訪日観光客が「まさに自分が悩んでいたことだ」と思えそうなことを洗い出してみましょう。

(2)解決策を提案するフレーズを考える

共感を引き出すフレーズ

  • 重い荷物を運ぶのはもうやめよう
  • 短い旅を最大限に楽しむ方法、知りたくないですか?
  • 時間を節約して効率よく旅しよう

課題と解決をセットで伝えるフレーズ

  • 子連れの移動が大変?レンタカーなら家族全員が快適に目的地まで到着できます
  • 行きたい場所が電車やバスで行けないなら、レンタカーがおすすめ!

具体的な状況を伝えるフレーズ

  • 家族旅行で観光地を巡るなら、レンタカーで移動も楽々!
  • 電車やバスが少ない地方への旅を、レンタカーで自由自在に楽しもう

シンガポールの富裕層ファミリーのイメージ

さいごに

これまでシンガポール市場において、訪日レンタカーへのニーズや実情についてご紹介してきました。

ニーズはあるものの、正直これまで50回以上訪日しているシンガポール人訪日リピーターの方でも「疲れるからできればレンタカーは使いたくない」という方もいらっしゃいます。なので、レンタカーを使うかどうかはケースバイケースで千差万別です。

一方で、二次交通が発達していない場所やエリアにも足を伸ばしてもらうためには、やはりレンタカーは必須。そういう「誰にもまだ知られていないディープローカル」は訪日慣れしているシンガポール人にとって興味深い地域になるので、レンタカー需要を喚起できる可能性があると個人的には感じています。

レンタカーの利用を促したい場合は、この記事でご紹介したような「不安を緩和してあげられるような対策」や、レンタカーを利用するメリットを、検討段階からきちんとメッセージとして届けられるように準備と施策を実施していくことが必須です。

具体的にご検討されたい場合は、ぜひお気軽に以下のフォームよりご相談いただけますと幸いです。

この記事が、訪日観光客の方々により日本の魅力が伝わるきっかけになることを、心から願っています!