シンガポールでSNS発信する前に知ってほしい日本人がよくやる間違い
東南アジア全体では、ソーシャルメディア利用率は総人口の61.5%という言われていますが、シンガポールでの利用率は約1.4倍の88.2%を記録。
世界有数のSNS大国なので、マーケティングの一環としてSNSでの情報発信は絶対に必須なのですが、実はシンガポール進出をしている日本企業がよくやる間違いがあるなと、ご支援していて感じています。
それは「シンガポール市場向けにはどのSNSを使うべきか?」といった表面的なことではなく、シンガポール在住者のターゲットの心に響かせるために必要な「SNSの運用の仕方」に関して、運用者側の認識と実態にズレがあるなと感じるのです。
今回はシンガポール市場向けにSNSで情報発信する際に、日本企業が「よくやりがちな2つの間違い」について、成功事例を参照しながら具体的にご紹介しました。
シンガポールだけでなく、海外市場向けにSNSで情報発信をされている方や、これから取り組みたいと考えていらっしゃる方の参考になれば嬉しいです。
【1】「ありがちな日本らしさ発信」はウケない
「日本の商品です!」ということを全面的に押し出そうとして、ありがちな日本らしいモチーフや雰囲気、フォントなどを多用していませんか?
もちろんシンガポールでは「日本=良い」という好意的イメージがあるので、日本の製品である訴求自体には問題ありませんし、むしろ必要な情報発信だと思います。
ですが、SNSでの情報発信においては、単純に「日本らしさ」を強調するのはかえって逆効果になりかねません。なぜなら現地で使い古されてるので、「また日本っぽさ狙ってるな」と引かれかねないからです。
ありがちな失敗例は以下のようなものです。
- 投稿画像にあがちな日本のモチーフ(富士山や桜など)が意図なく配置されている
- 寿司やアニメキャラなど、ベタな表現ばかり使う
- 「和」を強調しすぎて情報が多い
実はシンガポール市場では、特に20〜30代のInstagramユーザーには「日本らしさ」はそこまで刺さりません。
私たちも実際グループインタビューなどで調査してきましたが、シンプルで洗練されたビジュアルやライフスタイルに溶け込む世界観を好む傾向があります。
以下にご紹介する2つの事例は、まさにこれらの特徴を押さえてシンガポール市場に受け入れられている良い例だと感じています。
- シンガポール最大級の規模を誇る日本酒のイベント「Sake Matsuri Singapore」
- 20〜30代のシンガポール人女性の間で圧倒的な人気を集めているシンガポール発ライフスタイルブランド「Beyond the Vines」
詳しくご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
事例1:シンガポール最大級の日本酒イベント「Sake Matsuri Singapore」
シンガポール最大級の規模を誇る日本酒のイベント「Sake Matsuri Singapore」のInstagramアカウントは、ニッチなイベントでありがながら
- 3,500人以上のフォロワーを獲得。
- ストーリーズ閲覧数が対フォロワー数で平均23%以上
など、非常に良い成果を出しています。
ニッチなイベントにも関わらず、裾野を広げながら高いエンゲージメントを維持できている理由は、単なる日本酒のイベントではなく「ライフスタイルイベント」として発信しているからです。
「富士山」「桜」といったベタな日本要素に寄せすぎると、日本文化には特別な興味がない層が離れてしまうリスクがあるので、ゴテゴテな日本発信をしない工夫がなされています。
具体的には以下のようなポイントを押さえて発信されています。
- ビジュアルは和柄で統一し、日本らしさをシンプルに演出
- 色はあえて和風式にせず、Sake Matsuriのアイデンティティを保つためのカラーパレット使用
- 日本酒の写真だけに止まらず、過去イベントを楽しんでいる来場者の写真を積極的に使用
- 日本酒には触れず「お酒を飲んで楽しむライフスタイルイベント」として発信
例えばこの投稿では「ライフスタイルイベント」の要素が伝わるように、日本酒の写真を減らし、イベントの賑やかな雰囲気が伝わる写真を多めにあしらっています。
また、ハロウィンイベント用の投稿では西洋のモンスターではなく「八岐大蛇」を採用しましたが、過度な日本感が感じられないように、色味を和風テイストではなくアカウントのブランドカラーでまとめました。
当日に行われるイベントの告知や入場パスの案内といった投稿も「過度な日本感」が出ないように、背景にさりげなく和柄を入れ、ブランドカラーでまとめています。
実はこのイベントを始めた頃は、シンガポール市場は人口が少ないから「日本酒ファンの裾野にはどうしても限界がある」と言われていました。
ですが日本酒イベントとしてではなく、ライフスタイルに合わせてイベントを訴求したことで、「Sake Matsuri Singapore」はその常識を覆し、日本酒愛好家からイベント好きの若者まで来場者の幅を広げることに成功しました。
事例2:若者に大人気なライフスタイルブランド「Beyond the Vines」
例えば「Beyond the Vines」は、最近20〜30代のシンガポール人女性の間で圧倒的な人気を集めているシンガポール発ライフスタイルブランドです。
SNSのアカウントフォロワー数は、2026年1月現在で合計35万人以上。ライフスタイルに溶け込む世界観が感じられるブランドの世界観があり、シンガポール市場に刺さるSNSコンテンツの良い例だと感じています。
SNSの情報発信全体を見てみると、視覚的な統一感と世界観がしっかりと構築されているので、コンテンツがシンプルでありながらも、決して単調ではなく、むしろ洗練された印象が与えられています。
特に注目したいのが商品写真の見せ方。SNSで日々コンテンツが溢れる現代において、無地の背景に商品を並べただけの写真ではユーザーの目に留まること自体が難しくなっています。
一方で「Beyond the Vines」は、ユーザーのライフスタイルに寄り添うような、実際の使用シーンを想起させる構図やシチュエーションがイメージできるように商品写真を撮影しています。
ユーザーに「自分が使っている姿」を自然にイメージさせ、疑似体験を促せるので、単なる商品紹介ではなくコンテンツに人間味が加わった共感型コンテンツとして機能しています。
【2】コメントに対して英語ですぐに返信しない
これは当たり前なことですが、SNS運用は「投稿したら終わり」ではありません。
SNSでの情報発信を実施する目的は、自社のブランドイメージの向上や認知拡大、購買意欲促進など様々あります。
どのような目的であれ、投稿を継続的に実施して、ユーザーをファン化させることに成功しない限り、SNSを運用するメリットは感じられにくいのが現状です。
「ただ見ていた人」からブランドを支持する「ファン」へと育てることができれば、SNSは長期的に成果を生み続けるツールとして強力な武器になるからです。
そのため、ユーザーをファン化させるためには、ユーザーからのコメントやDMなどを無視せずやり取りを通じて関係性を育むことが必ず求められます。
ですが、特に日本から海外市場向けにSNSを運用している場合、ユーザーから寄せられる英語のコメントに返信するのは少しハードルが高いと感じる事業者の方もいるのではないでしょうか。
実際、弊社でも日本企業のシンガポール市場向けのSNS運用を担当させていただくことがありますが、ご担当者の方が
SNSという、ユーザーにとって気軽なプラットフォームでのコミュニケーションだからこそ返答に悩むし、加えて英語だから二重苦で辛い。
とお話しされていたことがありました。
ですが、ユーザーからのコメントで発生するやり取りこそ、ブランドの姿勢や価値観を最も直接的に伝えられる貴重な機会です。ここを軽視したり、コメントが来ても返事をせずにいるのは非常にもったいないです。
「英語返信テンプレート」を用意しよう
対策として、アカウントを作成して情報発信をする前に、事前に返答のテンプレートをあらかじめ用意しておきましょう。
AI自動翻訳を使って考えて準備するのもおすすめですが、以下にどのような業界であっても使いやすい「英語の返答テンプレート」を、参考までにシチュエーション別にまとめました。
個々の状況などによって多少調整が必要になる場合もありますが、参考として必要な方はご活用ください。
事例1:対応にブランド力が現れる「シンガポール航空」
シンガポール航空は、SNS上で顧客から寄せられる質問やコメントに対して以下のような返信をしています。
特にコメントに対して単に「ありがとうございます」とだけ返信して終わるのではなく、運航情報への具体的な回答やサービス改善への前向きなコメントを添えているのが素晴らしいなと感じています。
ユーザーからのコメント
こんにちは。家族の者が、インドからシンガポールへ向かうフライトの機内にウエストポーチ(ファニーパック)を置き忘れてしまいました。どのようにすれば取り戻せますか?どうか助けてください。よろしくお願いします。Singapore Airlines の返信
ミシェルさん、こんにちは。SATSの遺失物取扱チームが対応できるよう以下のリンクから捜索依頼をご提出ください。(https://tinyurl.com/4uv85xsw)
どのようにお手伝いできるか確認いたします。よろしくお願いします。
このような丁寧な返信は利用者との信頼関係を強化し、シンガポール航空が元々持っているプレミアムなブランドイメージをより一層強めています。
日本企業も英語での対応が必要だからと諦めず、最低限ユーザーから寄せられたコメントには必ずリアクションを返せるように事前に準備をしておきましょう。
さいごに(事前に検討してから発信しよう)
シンガポール市場でのSNS運用は「どのSNSを使うか」よりも「どう運用するか」が成功の分かれ道です。
運用にあたって意識するべき要点をまとめると
- 富士山や桜などの「ベタな日本らしさ」を打ち出す前に、まず対象国のSNS流行を理解すべき
→洗練されたビジュアルやライフスタイルとの親和性を意識する - コメントに対して英語ですぐに返信する
→事前に英語で返答するテンプレートを準備して対応を決めておく
これらを実践することで、海外市場向けのアカウントで得られたフォロワーは、単なる閲覧者ではなく、ブランドを応援し広めてくれるファンに成長していく可能性が格段に上がります。
弊社ではシンガポールに創業して14年以上、日系企業の情報発信やブランド認知をサポートしてまいりました。
ここでご紹介しきれなかったもっと細かい部分も知見としてあるので、もし具体的にご相談があるようでしたら、お気軽に以下のフォームからお問い合わせください。
この記事がシンガポール市場向けにSNS発信を検討されている方の参考になっていたら嬉しいです。




