シンガポールで多くの協力者を獲得した舞台裏には戦略だけではなく『人・想い・本気度』があった【さが県産品流通デザイン公社様】
自治体の海外進出支援において、テスト販売や商談会を「やりっぱなし」で終わらせてしまうケースは少なくありません。
でも佐賀県は、その先まで本気で付き合うパートナーを求めて、シンガポール市場での販路開拓に取り組みました。今回ご一緒させていただいた取り組みでは、佐賀県産食品がシンガポールのライブコマースで数十秒以内に完売するという成果も生まれています。さらに、現地ディストリビューターとの卸交渉やレストランのコースメニュー導入など、商談も次々と進んでいます。
なぜ、ここまでの結果が出せたのか?商社という選択肢もあったなかで、どんな基準でパートナーを選んだのか?公社・パートナー・事業者のチームワークはどう生まれたのか?
流通デザイン総括監の遠藤さんと海外販売支援グループの藤田さんに、お話を伺いました。
- プロジェクト概要
- 「商談会では『その後』が続きにくい」
- 「海外で売りたい。でも、何から始めればいいかわからない」
- 「とことん一緒に走る」伴走型の支援が必要だった
- さが県産品流通デザイン公社様の強さ
- 知事の「現場・プロセス・ミッション」が組織に染み込んでいる
- 「動ける人」が大事
- ときには「厳しいこと」も言う
- なぜ、商社ではなくVivid Creationsをパートナーに選んだのか
- 「報告書を出して終わり」のコンサルじゃなかった
- 「公社・Vivid・事業者の3者が一つのチーム」だった
- 改善したい点も、正直あります
- 4社に起きている変化
- 「1社の成功が、地域全体を動かす」
- 「丸投げじゃ、お互い成長できない」
- あとがき
- シンガポール・ASEAN進出をお考えの自治体・企業の皆さまへ
商談会への出展やマッチングイベントなどの従来型の支援では、その場限りで終わってしまう傾向があり、実際の販路開拓にはつながりにくいという課題があった。
そう語るのは、さが県産品流通デザイン公社の藤田さん。さが県産品流通デザイン公社(以下、デザイン公社)は、佐賀県産業振興機構の中に設けられた組織で、設立からまもなく10年を迎えます。一般的な自治体の物産協会が催事や展示会を中心に活動するのに対し、デザイン公社は佐賀県とも密に連携しながら、「事業者に一つ一つ寄り添う」ことを組織の根幹に据えています。
プロジェクト概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| クライアント名 | 公益財団法人 佐賀県産業振興機構 さが県産品流通デザイン公社 |
| 事業内容 | さが県産品流通デザイン公社では、高所得者が多く日本食に対する認知度が高いシンガポールにおいて、販路の拡大を目指している。現地における販売網とマーケティング力を持つ商社と連携し、市場開拓にチャレンジしたい県内食品事業者に対し、サンプル輸出やテストマーケティング等を行いながら課題を抽出・商品を改善につなげるハンズオン支援に取り組むことにより、県産食品の継続的な輸出(定番化)を目指す。 |
| Vivid Creationsのサポート内容 | 県内食品事業者4者への個別支援、 現地でのテストマーケティングの実施、テストマーケティング結果に基づくフィードバック、県内食品事業者への助言・サポート。 |
| 成果 |
|
「商談会では『その後』が続きにくい」
左:さが県産品流通デザイン公社 遠藤 彰様、藤田 佑樹様、右:Vivid Creations 齋藤

これまでの佐賀県の海外進出支援と、今回の取り組みは何が違うんですか?

これまでは佐賀牛とか日本酒みたいに、ある程度まとまった量で出せるものを中心にやってきたんです。JAさんとか業界団体さんと組んで。しかし、県内には小さな食品事業者もたくさんあります。海外に目を向ける個別の事業者も多く存在する中で、そうした小規模事業者への個別支援は、長らく手つかずのままでした。

商談会やマッチングイベントは前からやられていましたよね?

はい。ただ、特定の地域にほぼ特化してやっていたのと、商談の機会を提供したとしても、ノウハウや言葉の壁の問題で適切なアフターフォローができずに、成約につながらないケースが多かったのが課題としてありました。
「海外で売りたい。でも、何から始めればいいかわからない」

県内の事業者さんからは、どんな声が届いていたんですか?

「輸出はしたいけど、何をどうしたらいいかわからない」「何から始めていいかわからない」っていう声がすごく多いんです。佐賀の会社さんって、家族経営みたいな小さなところも多いので、“海外”というワードだけで「ハードルがめちゃくちゃ高い」と身構えてしまう感じなんですよね。

特にシンガポールは情報も少ないですよね。

そうなんです。香港や台湾と比べても遠いし、市場の情報も入ってきにくい。だからこそ、アジアという地理的にも比較的取り組みやすいエリアの中でも自分たちだけではなかなかたどり着きにくい場所として、今回サポート対象国に選びました。
「とことん一緒に走る」伴走型の支援が必要だった

そこで「ハンズオン型の支援」を外部パートナーに任せようと考えたわけですね。

はい。とりわけ勝手の違う海外マーケットで、マッチングだけやっても先に進むことが難しいんですよ。だから、一緒に走ってくれるパートナーが必要だったんです。

佐賀県として、デザイン公社として、一社ずつの販路開拓をハンズオンで伴奏支援するのは初めてだったんです。ただ、ニーズはあるので思い切って踏み出しました。
さが県産品流通デザイン公社様の強さ

デザイン公社さんって、他の自治体の県産品の海外の流通・販売支援をされている団体や組織とは雰囲気が全然違いますよね。

私たちデザイン公社は、「売れるをつくる。」ことをミッションにしています。売れるためにはどうしたらいいか。「売れる力」と「売れる仕組み」、公社の持つチャネルを活用して、事業者さんがずっと売れるように寄り添い続ける。それを大事にしています。
知事の「現場・プロセス・ミッション」が組織に染み込んでいる

私はみなさんのその姿勢をみてずっと感動していました。その姿勢って、組織全体に共通しているんですか?

佐賀県知事が「現場・プロセス・ミッション」って三つのキーワードをよく使うんです。知事自身がよく現場に出向いて、現場の声を聞いている。その姿を見ていたら、一セクションの我々はなおさら現場に行かなければ、って状況になるんですよね(笑)。

トップから現場まで、本当に一貫していますね。
「動ける人」が大事

海外チームのみなさんは、語学もできて、フットワークも軽い印象です。今回やりとりさせていただいた皆さんが全員優秀すぎてびっくりしていました!

海外って勝手が分からない事業者さんが多いので、間に入ってコミュニケーションを支えるには、動ける人間、コミュニケーション力、言語力が大事だと考えます。
県からデザイン公社に派遣される職員も、海外経験者であったり流通経験者を「販売支援専門員」として採用したりしています。
ときには「厳しいこと」も言う

今回の事業では「シンガポールに来ない事業者さんは参加見送り」と決めましたよね。あれは結構勇気のいる判断だったんじゃないですか?

そうですね。でも、軌道に乗るまではガッツリ手を組むけど、最終的には事業者さんがデザイン公社なしでも自走できるようにならないと正直意味がないと思っています。そのためには、事業者自らが足を運び現地の市場を見て、現地の生の声を聞く必要があるし、本気の事業者こそ全力で応援したいと考えております。

来られるか来られないか、事業者の本気度がどうか、ある意味ふるいにかけたんです。来られないんだったらそこまで。来てもらわないと実効性のある支援ができない。
なぜ、商社ではなくVivid Creationsをパートナーに選んだのか

最初は商社さんにお願いすることも検討されていたと聞きました。

はい、考えていました。ただ、メリットやデメリットを内部で議論していた時に、必ずしも商社さんに絞る必要はないという結論に至りました。何よりも、事業者に寄り添って支援をいただける方と支援チームを組むのが最優先と考えました。

Vividの何がよかったですか?(自分で聞くのも何ですが…笑)

(笑)。Vividさんは現地でいろんな方をご存じで、企業の置かれた状況に応じたレベル感や商品特性で、いろんな人を探して提案してくれたんです。
あとは、フットワークの軽さですね!齋藤さんを中心に社員総出で我々の要望以上に動いてくれました。商社機能は直接お持ちではないものの、あたかも持っているかのようなスピード感で現地各社と連携いただきました。
レスポンスも早く、距離的な障壁は一切感じなかったですね~。
「報告書を出して終わり」のコンサルじゃなかった

実際に一緒にやってみて、印象に残っていることはありますか?

「テストマーケティングやりました、結果こうでした、以上報告です」
もしそう言われていたら、繰り返しお願いすることはなかったと思います。

同じくそう思います。報告書だけきれいに作って提出すればいい、そしてデザイン公社としてもそれを保管してればいい訳ではありません。良い結果だけでなく、厳しい結果も含めて受け止め、事業者へのフィードバックをして次につなげなければいけません。
Vividさんはここは最初からしっかり理解いただいており、事業者さんが自分で次の取引に進めるよう、事業後にしっかり時間を取って事業者にフィードバックし、さらに人とのつながりまで作ってくれました。
「公社・Vivid・事業者の3者が一つのチーム」だった

LINEグループでもよくやり取りしていましたよね。

そうですね。デザイン公社は県内事業者を佐賀でフォローして、Vividさんはシンガポール現地で動く。それをLINEで密に共有していたから、物理的な距離を超えた一体感がありました。委託・受託の関係というよりワンチームとして動けていたと思います。
改善したい点も、正直あります

逆に「もっとこうできたな」って点はありますか?

もはや結果論ですけど、商品を決める前の段階で、Vividさんとデザイン公社と事業者でもっと議論できていれば、と思います。例えば小売用の醤油のボトルサイズとか、クラフトジン市場での差別化戦略とか。事前にテストの選択肢を広げておけば、在庫面でももっと良い結果が出たかもしれない。
4社に起きている変化

参加された4社さん、当初は海外経験ほぼゼロでしたよね。今、どんな変化が見えていますか?

支援1年目はシンガポールに来られなかった事業者もあったんです。でも2年目、「現地に来ること」を参加の絶対条件にしたところ、ちゃんと来てくれました。少しずつですが、海外に対する向き合い方が変わってきているのを感じます。
「1社の成功が、地域全体を動かす」

個別の事業者さんを支援することが、地域全体にどう波及するとお考えですか?

一つの成功が波及した良い例があるんです。佐賀県の日本酒で、2011年にロンドンの「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」で「鍋島」が「チャンピオン・サケ」を取ったんですよ。そうしたら、県内の他の酒蔵さんたちの刺激となって、次々と海外コンテストに挑戦し始め、アメリカやフランスでグランプリを獲る蔵元も出てきたんです。

成功事例が出ると、周りも動き始めると。

そうなんです。だからこそ、加工食品の分野でも今回の取り組みで圧倒的な実績を作ることが、次の事業者さんを呼び込むカギになると思っています。
「丸投げじゃ、お互い成長できない」

最後に、お二人が大事にしていることを教えてください。

県の力を強くするためには、いかに現場の皆さんに寄り添えるか。そこが一番大事だと思っています。

海外事業を丸っと現地に委託したら、私たちが成長できないんです。チームでやっていった方が、自分にとっても良いし、みんなにとっても良い。そこは意識しています。

今日は本当にありがとうございました!
あとがき
遠藤さんと藤田さんが何度も口にしていた「寄り添う」「一緒にやる」「現場に行く」という言葉。これは理想論ではなく、本当に毎日の業務で実践されている姿勢でした。今回お世話になったさが県産品流通デザイン公社・海外販売支援グループや佐賀県のみなさんすべてがそれを実践されており、事業者だけでなく、今回シンガポール側で関わったバイヤーや協力してくださった関係者すべてが佐賀県ファンになり、シンガポール側の「佐賀県応援隊」が増えつつあることを実感しています。
正直、自治体の海外支援って、どうしても「予算消化」や「実績作り」が目的になりがちな世界です。でも佐賀県の場合、知事が掲げる「現場・プロセス・ミッション」という方針が、組織の隅々まで染み込んでいる。だからこそ、担当者の方々が単なる「事業の執行者」ではなく、事業者さんと一緒に悩み、ともに動くパートナーとして機能しているんだと感じました。
私たちVivid Creationsとの協働も、まさにそうでした。委託・受託という関係を超えて、公社・Vivid・事業者の3者が一つのチームになれた。「サポートする側もされる側も、一緒に成長する」というその先に、佐賀県から世界へと踏み出していく企業の姿が、はっきりと見えてきています。
これからも、一社でも多くの事業者さんが「自分の力でシンガポールで戦える」ようになるまで、しっかり伴走していきたいと思います。

シンガポール・ASEAN進出をお考えの自治体・企業の皆さまへ
Vivid Creationsは、シンガポール・ASEAN市場への進出を目指す日本の自治体・企業のみなさまに、現地密着型のハンズオン支援を提供しています。
テストマーケティングから販路開拓、現地パートナーとのマッチングまで、「打ち上げ花火で終わらせない」伴走型の海外展開支援をお考えの方は、ぜひ以下のフォームよりお気軽にご相談ください。
