withコロナ時代の訪日インバウンドを考える:シンガポール市場の動向とこれから(2020年6月度)
※この記事の内容は6月15日現在の状況を記載しています
こんにちは。Vivid Creations の宮川です。
「シンガポールの旅行産業、特にインバウンド関連の現状は?」
「Withコロナの時代に向けて、どんなことをしたら良い?」
最近、日本国内の様々なクライアント様から、このような質問をいただきます。
今後の取り組みを考える際に、アジア圏域の訪日インバウンドを取り巻く現状や観光業の動向は気になるところ。
そこで今回は、シンガポールの旅行代理店・オンライン旅行会社・エアラインに注目し、それぞれの動向をご紹介いたします。
私個人の主観的な考察もありますが、日本国内の旅行業関係者のみなさまにとって、今後のご参考になれば幸いです。

1.コロナ禍のシンガポールの現状
各種産業の営業状況
シンガポールのショッピングモール街であるオーチャードは閑散としている
出典:S’poreans’ values critical to tackling next crisis after Covid-19, says DPM(PUBLISHEDAPR 8, 2020)
シンガポールでは、新型コロナウイルスに対する制限措置である「サーキットブレーカー(Circuit Breaker)」が6月1日に終了。
その後も3つの段階のフェーズに分けて段階的に制限措置が緩和されることになっています。
第1フェーズは4週間(6月末まで)で、この期間はスーパーマーケットなどの生活に必要なサービス事業者は営業しますが、飲食店はデリバリーのみ可能、ショッピングモールやジムなどは継続して営業停止状態。
実質は自宅待機が続く予定です。(弊社も6月中、自宅勤務を継続いたします)
※2020年6月17日追記:フェーズ2の開始は感染者数の減少を考慮し、6月19日(金)に早まりました。
第2フェーズでは、ようやく飲食店での飲食は許可される予定ですが、映画館やマッサージ・スパ、バー・パブは営業できません。
また、観光業においては、第2フェーズではビジネス目的の海外渡航は許可されますが、レジャー目的の海外渡航は、禁止されます。
「サーキットブレーカー」の詳細は、「シンガポールお役立ちブログ」の記事に詳しくご紹介されているので、気になる方は参考までにご覧ください。
サーキットブレーカー後の措置 フェーズ1~3|シンガポールコロナ対策措置(2020年5月28日)
https://www.singaweblog.com/archives/6460
新型コロナウイルス感染者数の推移
シンガポールにおける新型コロナウイルスの感染状況は、リアルタイムで更新され、一般的に情報発信されています。
Find more statistics at Statista:New cases per day of COVID-19 Singapore 2020(Published by J. Müller, Jun 5, 2020)
6月7日(日)時点では、感染者数は37,910名、死者数は25名。
6月6日(土)の感染者数は、344名。
グラフを見ると、4月9日ごろから急激に感染者が増えていますね。
実は、急増した感染者の大半が「外国人労働者ドミトリー」に在住する方々です。
「外国人労働者ドミトリー」とは、主に建設現場などで働く外国人労働者が住む集合住宅エリアのことを言います。
実際に、6月6日(土)の感染者344名のうち、外国人労働者ドミトリー内での感染者数は、337名。
ドミトリーでの感染拡大が発覚するまでの間、シンガポール政府は感染者数の抑制に適切に対応できていたと思われていました。
しかし、4月上旬にドミトリー内での感染拡大が発覚してから、全体的に感染者数は減っているものの、現在も数百人単位での感染者への対応が続いています。
2.コロナ禍のシンガポールにおける旅行業の動向
サーキットブレーカーが4月7日から始動するまえから、自宅勤務を始める企業も多くありました。
弊社では3月から自宅勤務を開始し、その後、国全体で実質外出が禁止されました。
2ヶ月以上の自宅勤務が続くなか、シンガポールの旅行業ではどのような動きが起きているのでしょうか?
シンガポール国内の旅行代理店、オンライン旅行業者、エアラインの状況に注目し、その動向をご紹介します。
シンガポール国内の旅行代理店

営業が禁止されている期間、完全に営業活動をストップし、スタッフに無給休暇を提供せざるをえない企業もあれば、スタッフ教育や商品造成に力を入れている事業者など、状況はさまざま。
弊社で6社の旅行代理店にヒアリングした結果、実施されている取り組みの傾向は、以下の通りです。
【傾向①】シンガポール国内で1番の旅行シーズンである「スクールホリデイ(11月中旬〜12月)」頃に、海外旅行への需要が回復することを見越して、商品造成・プロモーションの準備をしている。
【傾向②】今年度中の旅行需要の回復は難しいと判断し、来年の春(3月〜)頃の需要回復を予測して、販売促進を目指している
【傾向③】シンガポール観光局(STB)が提供する、旅行代理店向けの無料のオンライン教育を受講している
【傾向④】各国の観光局が、シンガポールの旅行代理店向けにオンラインセミナーを開催している。
【傾向⑤】オンラインで、顧客向けにセミナーを開催している。
【傾向⑥】コロナ復興時に向けた「リカバリープロモーション(割引価格や特典付きプランのプロモーション)」を計画している。
弊社では過去に、シンガポールで行われているオーストラリアとニュージーランドの観光PRキャンペーンに注目し、旅行代理店のスキルアップを目的とするオンラインセミナーをご紹介させていただきました。ご参考までにぜひご覧ください。
また従来ならば、8月は毎年シンガポール最大の旅行博「NATAS TRAVEL FAIR」が開催されるため、旅行代理店は一斉にプロモーションを実施する時期でした。
しかしながら現在は、本年度の「NATAS TRAVEL 2020」開催有無に関して、主催者からのアップデートがありません。
今後も状況を見ながら柔軟に対応していくことが求めれますが、早くともプロモーションは9月以降からになるだろう、という旅行代理店の意見も耳にします。
今後の旅行のあり方についても、当然各旅行代理店から推測がされています。
アジアパシフィックの旅行業に関するメディア「Travel Weekly Asia」によると、今後の旅行の傾向として、以下のような特徴が挙げられています。
【傾向①】旅行会社は、より信頼できるランドオペレーターやパートナーとの提携を希望するため、商品のクオリティーが一層高くなる可能性がある
【傾向②】大型の団体ツアーではなく、家族や親しい友人などの小さいグループツアーなどの需要が高まる可能性がある
【傾向③】景勝地や自然をたのしむアクティビティと、セルフドライブやヨットなどのプライベートツアーの人気が高まる可能性がある
【傾向④】旅行代理店による「キャンセル料無料」などのフレキシブルな対応が求められる可能性がある
(出典:Travel Weekly Asia:Travel agents predict key trends in a post-COVID-19 world |Jun 05, 2020)
「キャンセル料無料」などの料金に関する検討は、シンガポール市場における特徴の1つかもしれません。
TTG Asiaによると、シンガポールの市場調査で、38%が「キャンセル料無料化(No change/cancellation fee)が重要だ」と回答しています。
(出典:TTG Asia:Evolving to meet APAC travellers’ changing needsl5 June, 2020)
以上より、シンガポール国内の旅行代理店の動向で注目したい要点は、
- シンガポール市場での旅行需要増加は早くても今年の11月以降になる可能性が高いため、商品販売時期にあわせたプロモーションを仕掛ける必要がある
- 価格訴求は購買意欲を高める要素となりえるため、リカバリープロモーションのような特別割引やキャンセルポリシーの柔軟性などが求められる可能性がある
シンガポール国内のオンライン旅行代理店

オンライン旅行会社(OTA)も、新型コロナウイルスの影響が真っ先にあった業種の1つ。
約20%ほどのスタッフを解雇した企業も多数あり、社内体制の変更等が急務で、業界のプレイヤー全体が今後の事業運営を模索する状況と考えられます。
「KLOOK」は、香港に本社を置き、シンガポール市場でも積極的にマーケティング活動をしているオンライン旅行会社。現在はアジアとヨーロッパの14の市場で、自宅にいながら観光体験ができる「Home Based Experiences」サービスを開始しました。

Wifiレンタル事業や「JAPAN RAIL PASS」の販売で優位にある「Changi Recommends」は、なんと生活日用品の販売や、飲食のデリバリーサービスを開始しました。
https://uneed.changirecommends.com/en/
「Tripadvisor Singapore」は、「#LoveYourLocalSingapore」キャンペーンを実施し、レストランのデリバリーサービスを紹介しています。

以上より、オンライン旅行会社の動向で注目したい要点は、
- ビジネスモデルの変化が急速に求められ、各社対応をしている状況にある
- 自宅にいてたのしめる体験を提供するサービス展開が推進されている
シンガポール国内のエアライン

シンガポールは数多くのグローバル企業が本社を置く国として、経済成長を遂げました。
海外からビジネス目的でシンガポールに集まる人が多いため、シンガポール政府はビジネス目的の渡航を先に緩和する計画を立てています。(「Green Lanes」 と呼ばれる政策)
「Green Lanes」は、シンガポールと諸外国との相互同意の上で締結され、中国とシンガポールはすでに5月29日に締結しています。
2020年5月30日付のStraight Timesの記事によると、シンガポール政府は、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシアとも同様の「Green Lanes」について、議論を進めているそうです。
(出典:Straight Times: Singapore in discussions with S. Korea, Australia, to establish ‘green lanes’ for travell30, 2020)
航空会社の動向では、シンガポール航空は、2020年6〜7月にかけて、11の都市で約500便を増やすと発表。すでに成田〜チャンギ空港のフライトは運行していますが、加えて関西空港も追加される予定です。
▼シンガポール航空のフライト一覧はこちら
https://www.singaporeair.com/en_UK/sg/media-centre/news-alert/?id=k88gnin9
一方で、2017年10月30日に就航を開始した、シルクエアーのチャンギ空港〜広島便は、今年3月26日に再開未定の運休を発表をしています。
(出典:Straight Times: SilkAir to suspend flights to HiroshimalMAR 4, 2020)
なお、6月12日、シンガポール航空は利用者が安心して飛行機に搭乗できるように、機内サービスやルールを改定しました。
内容がまとめられた動画からも見受けられますが、今後の航空サービスのあり方がわかりやすく表されているように感じます。
3.日本旅行需要の喚起に向けて取り組めること
以上、シンガポール国内のインバウンドを取り巻く現状、いかがでしたでしょうか?
日本国内の観光業においては
「まずは、国内の需要回復に向けた施策を優先することが必要だ」
「地元の観光ビジネスの回復を目指すことが急務だ」
という話をよく耳にします。
では、海外市場での日本旅行需要の喚起に向けては、今どのような取り組みできるのでしょうか?
弊社がオススメするポイントは以下の4つです。
- 「感染拡大終息後に、どのような旅行をしたいか?」という旅行者のインサイトを考慮した情報発信をする
- 感染拡大終息後の旅行シーズンに向けて、提供予定の商品を見直しする
- 海外の旅行代理店やオンライン旅行会社が注目する「リカバリープロモーション*」を検討する
- 各所で策定された感染症対策を踏まえた基準を遵守する
*「リカバリープロモーション」:値引きや特典付きプランによる需要喚起
シンガポールの場合は、国土が小さいので「国内旅行」という概念がありません。
国内で楽しめるレジャーも少ないため『海外旅行にいけない』ということは、『旅行そのものができない』ということになり、多くの人々が海外旅行解禁を待ち望んでいると考えられます。
コロナ収束後に、旅行需要回復が急速に進むとされるシンガポール。
その状況をいち早く入手するためのツールを最後にご紹介し、本ブログは終えたいと思います。
Strait Times
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弊社では現地在住の生活者の声に耳を傾け、市場の動向を分析することを大切にしています。インバウンド事業に関して相談や、アイディアのブレストなど、お力になれることがあればオンラインでお伺いすることも可能です。ぜひお気軽にご連絡くださいませ。
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