訪日インバウンド富裕層の満足度を上げる体験とは?観光同行レポート
海外の富裕層向け訪日インバウンドに関して
課題意識や興味はあるけれど、具体的に何をしたらいいのかわからない
という方が多くいらっしゃいます。
確かに、日本政府は2022年10月に発表した観光戦略で早期に「観光消費額5兆円」を達成することを目指し「高付加価値旅行」を注力すべき分野としていますが、海外の富裕層が実際に「今」何を求めているかなどの情報も得にくいことから、悩んでいる方が多いように感じています。
弊社では2022年11月、ポストコロナ後の日本国内で初となるシンガポールの旅行会社を対象としたファムトリップに同行してきました。
今回はその際に得た、ポストコロナの訪日インバウンド富裕層向けコンテンツとして求められていることをテーマに、最新の知見を事例と合わせて具体的にご紹介します。
今回のファムトリップに参加した旅行会社は、平均訪日旅行単価(フライト以外)が100〜300万円以上の顧客を抱えている会社でした。
ぜひ参考にしてみてください!
ポストコロナでも関係なし!その地の独自性が価値に
弊社が同行したファムトリップの参加者は、全員シンガポールを中心とする富裕層向けの旅行会社の担当者で、初めて来日する方も、20回以上も来日している「ジャパンエキスパート」の方もいました。
どの参加者にも共有して言えるのは「独自性のある新しい価値」を真剣に探していた、ということです。
しかし「新しい価値」というと、なにか特別なものを新しく生み出さなければいけないように感じますが、実際に今回のファムトリップでも「新しい価値だ」と受け取ってもらえた内容は、実は私たち日本人の当たり前の中にあるちょっとしたことでした。
以下に「ご紹介する訪日インバウンドで重視すべきポイント」にそれぞれ具体的にまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
ポストコロナだからといって何か新しくしないといけないわけではないのです。
第2章からは海外の富裕層向け旅行代理店のファムトリップに同行してわかった、ポストコロナの訪日インバウンドで抑えるべきポイントを、事例とともにご紹介していきます。
ぜひご自身の地域で当てはまるケースがないか参考にしてみてください。
観光客向けコンテンツより、地域にある日常の体験が価値になる

価値として受け取られる傾向が高いのは、その地域の日常にある体験、つまり観光客向けに作られた体験ではなくありのままの「本物」であることだということが、ファムトリップを通じて見受けられました。
観光地化されすぎたコンテンツ、観光客を引き寄せることを目的に作られたコンテンツは、訪日富裕層には好まれにくいのです。
例えば、今回のファムトリップで実際に「本物感があって素晴らしい」とフィードバックがあったコンテンツは、能登半島輪島市で開催されている「輪島朝市」でした。
- 朝市が開催される道に張られているテント
- かにやフグなど土地ならではの海産物、果物、野菜などが並ぶ風景
- 商品を売りながらお客さんや隣のお店の人と世間話を楽しむおばあちゃん
- リラックスした服装でお買い物と笑顔でおしゃべりする近所の人
- 時々いるツーリングで訪れたらしい観光客と思しき人たち
日本人、特に地方出身の自分からみると比較的ありふれた風景や体験でしたが、地元の人の日常生活の一部に溶け込むような体験はとても新鮮に映ったそうで、この朝市訪問をファムトリップの中のベスト体験に挙げた参加者もいました。
また、海鮮が有名なとある地区で、富裕層を読者に持つヨーロッパのジャーナリストを招請して行ったプレスツアーでは、ディナーにレストランでブイヤベース(フランスの寄せ鍋料理)をいただくことがあり、とても評判が良かったのですが、数日後のランチで港で実際に漁師さんが当日の朝海へ出て釣ってきた魚介類をそのままワイルドに調理した漁師鍋を食べるという体験もありました。
漁師飯を食べた時の方がレストランよりも圧倒的に参加者の反応が良く、「これこそ本物だ!」と声をあげて喜んだ参加者もいました。
「富裕層が来るなら、しっかりおもてなしをしなくちゃ!」と力が入ってしまいがちですが、むしろそのまま着飾らない方が本物だと価値を感じてもらえて、喜んでいただける可能性があります。
このことを踏まえた上で、富裕層向け訪日インバウンドで提供するコンテンツを検討してみてください。
「VIP対応」は当たり前。体験の中に特別感を提供する

日常の生活風景を「本物」と感じ、観光扱いされることを好まない傾向がある一方で、富裕層の方々は日頃からVIP対応を受けられる生活をしている方がほとんどです。
VIP対応で提供している価値は「特別感」です。これをいかにして創り出せるかがポイントとなります。
実際に今回のファムトリップで実施したとある伝統工芸の工房でワークショップについて「特別感」に関連したフィードバックがありました。
ワークショップでは人数が少し多めだったこともあり、工房を率いる職人さんとアシスタントがレクチャーを担当。
参加者はとても楽しんでいて完成した作品をとても喜んでいましたが、旅行会社担当者としての視点から、以下のような意見がありました。
- 自分の顧客には工房を率いる職人さんとOne-to-one(1対1)だとなお良い
- One and only(唯一無二)が必要
参加者から挙がった「One-to-one(1対1)」「One and only(唯一無二)」というキーワードは、地域で観光体験を実施する際に、特別感を与えるヒントになるものだと考えます。
お土産専用バッグ持参が多数。ホテル輸送サービスとセットが喜ばれる

催行当時はかなり円安だった影響もあると思いますが、参加者の皆さんの購買力は目を見張るものがありました。
例えば、参加者の中には、スーツケースの他に、お買い物をするため専用の「セカンドバック」に加え、追加のバッグを2〜3つ持参する方もいました。
また途中で購入するお土産で荷物が重たくなるので、行程半ばには「すでに荷物が重くなってるから、帰国直前に泊まるホテルへ先に荷物の一部を送らせてほしい」というリクエストもありました。
特に、今回は酒造やウイスキーの蒸留所を訪問する工程もあったので、税関大丈夫かな…と心配になるほど、全員がたくさんお酒のボトルを買い物していらっしゃいました。
シンガポールでは日本のお酒はとても人気なのですが、シンガポール国内で購入できるものが限定されるので、訪日観光中に購入したい物として認知されやすい商品です。
ボトルなどの商品はたくさん買えば重量がかなりあるので、購入した荷物をホテルまで輸送するサービスは、富裕層訪日インバウンドには欠かせない要素となりそうです。
シンガポールのみならずアジア圏でこのような傾向は高いので、荷物の輸送サービスは訪日インバウンドを考える際にぜひ参考にしてみてください。
知っておきたい「富裕層」とは
ところで「富裕層」と言っても様々な定義があることはご存知でしょうか?
実施したい「富裕層向け訪日インバウンド施策」が、いったいどのような「富裕層」を狙っているのか、きちんと明確にできている地域はほとんどありません。
例えば、日本政府観光局(JNTO)が定義する「富裕層旅行者(高付加価値旅行者)」の定義は
訪日旅行1回当たりの総消費額 100 万円以上/人の旅行者
となっており、その中でも消費額300万円以上を「ハイエンド層」、100万円以上の「ラグジュアリー層」と分類しています。
このことから、総消費額が「100万円以上/人」に満たない観光体験(宿泊、食事、体験など)しか提供できない地域では、富裕層向け訪日インバウンドの施策を根本的に考えなければならないところから検討を始める必要があります。
一方で、すでに総消費額が「100万円以上/人」となる観光体験をプランできる地域では、組んだプランに対して以下のような点を検討することが必要となります。
- どのようなコンセプトの滞在となるか(ターゲット選定にも関わる)
- どのようなセールスポイントを打ち出すことができるのか
- どれくらいの宿泊数のプランで、年間宿泊延人数がどれくらいの規模になるか
さらに、日本政府観光局(JNTO)の定義では「マインドセット」と「消費タイプ」別でも分類されています。
マインドセットでの分類
- Classic Luxury:
- 従来型のラグジュアリー志向
- 年代は50〜60代と少し高め
- 他者や世間の評価、慣れ親しんでいることを重要視
- Modern Luxury
- 新型のラグジュアリー志向
- 年代は20〜30代のいわゆる「ミレニアル世代」
- 贅沢よりも新しいことへの挑戦や、経験を好む
- 他者ではなく自分にとって意義のあることを重要視
消費タイプでの分類
- All Luxury:
- 全ての費目で高額消費する傾向(以下、例)
- フライトはビジネスクラス以上
- 宿泊は5つ星
- プライベートガイドを雇って観光
- 全ての費目で高額消費する傾向(以下、例)
- Selective Luxury:
- 優先順位の高い事項に重点的に投資(以下、例)
- フライトはエコノミークラス
- 宿泊は高級な宿をチョイス
- 一部最低限のサービス提供しかない地方の宿に泊まるが、残りはラグジュアリーホテル
- 優先順位の高い事項に重点的に投資(以下、例)
ちなみに、今回のファムトリップに参加した旅行会社が擁する顧客の平均訪日旅行単価(フライトを含まず)は、ヒアリングした結果から全社が「ラグジュアリー層」、一定数「ハイエンド層」の顧客も含まれると考えられます。
また、「マインドセット」と「消費タイプ」については、実際に参加者とお話して以下2つに近い顧客との接点を持つ旅行会社だという印象を受けました。
- 【マインドセット】Modern Luxury
- 新型のラグジュアリー志向
- 年代は20〜30代のいわゆる「ミレニアル世代」
- 贅沢よりも新しいことへの挑戦や、経験を好む
- 他者ではなく自分にとって意義のあることを重要視
- 【消費タイプ】Selective Luxury
- 優先順位の高い事項に重点的に投資(以下、例)
- フライトはエコノミークラス
- 宿泊は高級な宿をチョイス
- 一部最低限のサービス提供しかない地方の宿に泊まるが残りはラグジュアリーホテル
- 優先順位の高い事項に重点的に投資(以下、例)
シンガポールの富裕層に関してより詳しい消費行動などは以下の記事にまとめているのでぜひ参考にしてみてください。
シンガポール富裕層のリアル|富裕層ビジネスのプロ独占インタビュー
さいごに(まとめ)
今回同行したファムトリップに参加していた富裕層向け旅行会社は「訪日旅行でできる新しい観光体験」を本当に真剣に探しているという印象を強く受けました。
彼らが探していた「新しい体験」とは、地域の側がゼロから何か新しい体験を生み出す必要性があるのではなく、今まであるものの代わりになるものだったり、上記の「観光客向けコンテンツより、地域にある日常の体験が価値になる」でお伝えしたように、既に日本ではある程度有名だけれども外国では知られていないものも含まれています。
たとえば、東京全域やお天気がいい時であれば富士山も望むことができる渋谷の展望施設「Shibuya Sky」に対しては「東京スカイツリーに代わる新しいスポットとして紹介できるね!」という意見がありました。
また、石川県能登半島の「千里浜なぎさドライブウェイ」では、砂浜を走り出した途端、皆さん大興奮。
国内唯一かつ世界でも珍しい砂浜を走ることができる場所でもあり、また旅行先で自分で運転するのには抵抗がある旅行者が多い中でできる、大変ユニークな体験だと旅行後に高い評価を得ました。
自分の地域や提供している体験などのサービスの中に今回のポイントに当てはまるものがないか改めて発掘してみてはいかがでしょうか?
- 訪日インバウンドに関する成功事例が知りたい
- 訪日インバウンド向けに地域資産を発掘したい
などのご要望がある方はぜひお気軽に以下のフォームからご相談ください。
この記事が日本で訪日インバウンドに関わる方々のお役に立てることを願っています。
