地方でインバウンド強化するならシンガポールを攻略せよ!
日本の地方への誘客を考えるならば、シンガポールは見逃せない市場のひとつです。
なぜならシンガポール人観光客は、平均滞在期間が長く、訪日リピーターが多い上に、一人当たりの旅行支出額がアジア圏でトップクラス。さらに英語が通じやすいので、地方にとって受け入れがしやすい観光客になり得る可能性が非常に高いのです。
また2025年のトレンドでは、アウトドアアクティビティや個人向けツアーへの関心が高まっているので、地方への個人向けツアーの造成に大きなチャンスが広がっています。
このブログでは、シンガポール人観光客の特徴と、地方が彼らを惹きつけるための具体的なポイントについて解説していきます。ぜひ参考にしてください!
シンガポール人は圧倒的な優良インバウンド顧客な理由
弊社では15年以上シンガポール市場に根ざして、現地の旅行代理店との関係性構築や情報交換を日頃から行っています。
その中でやはり感じるのは、シンガポール市場は一人当たりの訪日観光回数が多いだけでなく、総合的にみて日本の地方への誘客を考える際に攻略すべき重要な市場だということ。
ですが、あまり日本側ではシンガポール市場の可能性がまだ知られていないように感じています。
日頃からシンガポールの訪日インバウンドの最前線にいるからこそわかる現地の動きを踏まえて、弊社だからこそお伝えできる理由を以下に4つご紹介します。ぜひ参考にして下さい。
(1)滞在期間が平均8.9泊と長い
シンガポールからの訪日観光客は滞在日数が長いので、地方へ誘客しやすいと考えられます。2024年にJNTOが発表した調査によると、シンガポール人観光客の平均滞在日数は「8.9泊」。これは東アジアの平均の約1.3倍にあたります。
シンガポールからの直行便が就航しているのは、成田・羽田・関空・中部・福岡・沖縄で、8.9泊という長めの滞在期間があれば地方へ足をのばせる余裕があります。
また、シンガポールには「まだ広く知られていない魅力的な場所を訪れたい」という気質を持つ方が多いという特徴があります。東京・大阪・京都・北海道といった定番の観光地はすでに訪問済みのリピーターならなおさらです。そのため、次なる穴場な訪問先として、地方への関心が高まっています。
(2)訪日旅行支出額が高く、訪日リピート率が圧倒的に高い
シンガポールからの訪日観光客は、一人あたりの旅行支出額がアジア圏でトップクラスです。さらに、日本を何度も訪れるリピーターが多いため、総合的な経済効果が高いのが特徴です。
観光庁が出している訪日外国人一人当たりの旅行支出に関する統計を見ると、欧米の旅行者がトップクラスで多いのですが、彼らは単発での滞在日数が長いので、一度の旅行での消費額が高い傾向にあります。また、日本を「特別な旅行先」と考える人が多いので、何度も訪れるのではなくむしろ「一生に一度の訪日」で終わるケースも少なくありません。
一方で、シンガポールは国土が狭い分「旅行=海外旅行」が当たり前なので、地理的にも近い日本を「何度も訪れる身近な国」として捉えています。そのため、訪日外客数が過去最高の数字を記録した2024年には、シンガポールの人口約600万人のうち、約69万1,100人が訪日していたので、実に10人に1人以上が日本を訪れている結果となりました。一人当たりの訪日旅行支出額も、2024年のデータによるとアジアで最大となる約29万円を記録。何度も訪問してくれる支出額が高い訪日観光客が多いのです。
【出典】観光庁, 【インバウンド消費動向調査】2024年暦年の調査結果(速報)の概要
シンガポールからの訪日客の増加には、直行便の増加も影響していると考えられます。例えば、2024年にはANA系列のAir Japanが「シンガポール〜成田便」を就航し(週5便)、Peach Aviationも「シンガポール〜関空便」を新たに運航(週7便)。シンガポール航空は冬季限定で「シンガポール〜新千歳便を運航(週5便)」していて、アクセスの利便性がかなりよくなっています。
(3)日本の文化やマナーに理解があり対応しやすい
シンガポール人観光客は、日本の文化やマナーをよく理解しており、トラブルが少なく対応しやすいのが特徴です。もともと日本が好きな人が多く、訪日前から日本のことをよく知っている人が多いので、外国人対応に慣れていない地方・地域であっても比較的対応しやすいでしょう。
また、シンガポールは教育水準が高いことでも知られている国です。実際にシンガポールは国を挙げて教育に力を入れており、2022年の国際学力調査(PISA)では、読解力・数学・科学の3分野すべてで世界1位を獲得。こうした影響もあり、規律正しい国民性なので、日本の観光地でも安心して受け入れやすい観光客層だと言えます。
(4)英語が通じるので受け入れが比較的容易
シンガポールは中華系の人が多い国ですが、日常生活やビジネスでは英語が広く使われています。なので、シンガポールの訪日観光客には英語でコミュニケーションが取れるので、訪日観光客への対応に慣れていない地域でも受け入れが比較的スムーズにできるはずです。
実際どれくらい話せるのかというと、シンガポールの英語力は非常に高く、2023年のTOEFL iBT Testの国別平均スコアでは98点。英語圏とされるオーストラリアやカナダ(96点)よりも高い水準です。アジアの国ですが、英語での対応を準備しておけば意思の疎通はできるので、観光地や宿泊施設でも安心して対応しやすいでしょう。

地方がシンガポールの訪日客を増やすために知っておくべきこと【2025年トレンド】
アウトドアアクティビティの需要が増加
シンガポールは国土が狭く人工的な建造物が多いので、日本で感じられるほどの「自然」がないのですが、ハイキングやサイクリングなどの自然を楽しむアクティビティへの関心が高まっています。コロナ禍を経て、健康志向が強まったことも影響しているようです。
ニセコのパウダースノーでスキーを楽しむといった北海道のウィンタースポーツは以前より人気なのですが、最近は特にはスキーやスノーボードのツアーを販売する旅行会社も増えている印象です。海外のサイクリングやマラソン大会に参加するツアーも人気で、静岡県島田市で開催されるマラソンに参加するグループツアーも販売されています。
地方でマラソン大会を実施しているところも多いので、このようなアウトドア体験を前面に打ち出せば、シンガポール人観光客の誘致が期待できます。
シンガポールの旅行会社による「個人旅行者向けツアー」が地方観光に人気
訪日旅行の人気が高まる一方で、実は日本の宿泊施設やバスの手配コストが上がっているため、グループツアーの価格が高騰しています。そのためシンガポールの旅行会社はグループツアーの販売に苦戦しているというのが最近のシンガポール市場の動向です。
実際にシンガポールの旅行代理店の担当者から聞いたのですが、日本のバスドライバーの拘束時間には制限があるため、スケジュール調整がより一層難しくなっており、ツアー価格の高騰につながっているとのこと。
一方で、シンガポールからの訪日客は増加しており、個人旅行者の需要も拡大しています。この流れを受けて、旅行会社は「Free & Easy」という個人向けの訪日パッケージツアーの造成と販売を強化しています。中にはレンタカーや鉄道パス付きのプランなど、日本各地を自由に巡れる商品が増えているので、このような個人向けのツアーを地方に特化して造成することができれば、実際の誘客につながると考えられます。
例えば、シンガポール最大級の旅行代理Chan Brothersが提供している四国の「Free & Easy」プランのセルフドライブのツアーは、関西国際空港に到着して6泊7日で和歌山、高松、松山の道後温泉、高知、徳島、淡路島を巡って大阪に戻ってくるという、日本人でも羨ましくなるような豪華な内容で、以下の項目がプランに含まれています。
- 6泊分の宿泊費
- レンタカー(7日間)
- 英語版ナビゲーションシステムとマップコード
- 旅程に沿った食事
【出典】Chan Brothers Webサイト, 7 DAYS Shikoku Explorer Self Drive
5泊6日のプランでは、関西国際空港に到着して、淡路島と徳島を巡った後、徳島県三好市に位置する「日本三大秘境」の一つとして知られる祖谷に行き、高知、松山の道後温泉、高松を周って大阪に戻るツアーとなっていました。
【出典】Chan Brothers Webサイト, 6 DAYS Scenic Shikoku Self Drive
5日6日でしまなみ海道のサイクリングを楽しむことができる「Free & Easy」プランでは、広島空港に到着するフライトの想定で、5日間のレンタカーと最終日の空港への送迎、レンタサイクルのレンタルなどが含まれている内容となっています。旅程は広島から厳島、鞆の浦、尾道へ入り、しまなみ海道のサイクリングで尾道から今治へ向かい、今治で一泊してから尾道、広島へ戻るというプランです。
【出典】Chan Brothers Webサイト, 6 DAYS HIROSHIMA & SHIMANAMI KAIDO CYCLING EXPERIENCE
特別なコンテンツを含む商品を造成する富裕層向け旅行会社の増加
シンガポールでは富裕層向けの旅行会社が増えています。新たに設立されるだけでなく、既存の旅行会社から独立したり、ヨーロッパ系の旅行会社がアジア拠点を構えたりするケースもあります。
富裕層の顧客を多く抱えるこれらの旅行会社は、富裕層が求めるレベル感での特別感や独自性を重視した高級ツアーを販売しており、瀬戸内のクルーズ船「Guntu」や、クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」など、限定ツアーを企画する会社もあります。JR西日本の「瑞風」を貸し切るツアーなど、希少な旅行体験を提供するプランも登場しています。
このような富裕層向けの旅行会社では「トラベルデザイナー」と呼ばれる担当者が顧客の好みを熟知し、一人ひとりに合った特別な旅行プランを提案しています。
日本の地方観光地を訴求する場合は、富裕層向けのユニークで希少性の高い体験を提供できれば、旅行会社の目に留まり高単価のツアーとして販売される可能性があります。継続的な送客につなげるためには富裕層向けの旅行会社との関係構築も必要となってくるので、特別感のある観光コンテンツの情報提供を継続的にできるようにしておくこともポイントです。
ですが、シンガポールの旅行代理店との関係構築には英語が必須で、継続的に連絡をとり情報交換をすることはかなりハードルが高いと感じるという声をよく伺います。以下の記事は高知県の取り組みで、弊社がシンガポールの旅行代理店との関係構築をサポートさせていただいた「観光レップ」についてまとめているので、気になる方はぜひ参考にしてください。
シンガポールからの宿泊客を2倍以上に増やした高知県の新たなインバウンド戦略
さいごに
これまでの内容をまとめると、日本の地方にシンガポールからの観光客を増やすには、彼らのニーズにあった体験が提供できることを訴求して、実際に来てもらうために現地の旅行代理店と個人向けツアーや富裕層向けツアーを造成することが施策としてかなり有効だと考えられます。
滞在期間が長く支出額も高いリピーターが多いシンガポール市場を意識した戦略を取り入れることで、地方観光の可能性をさらに広げることができるでしょう。
日本の訪日インバウンドの促進に関わる方にとって、この記事が参考になることを心から願っています。






