シンガポールに来て驚いた日本と違うデジタルマーケティングの常識

デジタルマーケティングのイメージ
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こんにちは。VividCreationsの入江です。日本でデジタルマーケティングに7年近く携わった後、2025年にシンガポールにやってきました。

シンガポールに来る前、デジタルマーケティング事情について調べてみると、市場規模やモバイル利用率、主要SNSなど、整った情報は数多く見つかりました。

一方で、シンガポールに来て実際に現地でマーケティングに携わってみると「事前に把握していた情報だけでは分からなかった」日本のデジタルマーケティングとの違いを感じる場面が多くありました。

本記事では、在星1年目のマーケターである私が、シンガポールで実際にデジタルマーケティングに携わる中で感じた、デスクトップリサーチだけでは見えてこない日本とは異なる「シンガポールのデジタルマーケティングの常識」を3つ紹介します。

これからシンガポール市場でのマーケティングを検討している方や、教科書的な情報だけでは不安を感じている方の参考になれば幸いです。

 

【1】ターゲットの解像度を上げる変数が日本とまったく違う

シンガポールでマーケティングプランニングに関わって、最初に違いを感じたのが、ターゲットを考える際の視点でした。日本でペルソナを作るときは、年齢、性別、居住エリア、家族構成といった要素を軸に考えることが一般的です。

シンガポールでは、それらに加えて

どの民族を想定しているのか

どのタイプの住宅に住んでいる層なのか

といった視点が、自然に議論の俎上に上がります。変数が日本よりも多いのです。

シンガポールは多民族国家で、現地民だけを見ても中華系・マレー系・インド系それぞれで文化・宗教・生活習慣が大きく異なります。食品やライフスタイル商材では、ハラル対応の有無がそのままターゲットの可否に直結することもあります。

そこに加えて考慮すべきなのが、人口の約3割を占めるExpats(外国人居住者)という別の層です。 シンガポールの就労ビザは一定以上の年収が取得条件となっているため、Expats層は購買力が高い傾向にあり、特に高価格帯の商材では重要なターゲットになります。

「現地の人に売る」という前提だけでは、この層をまるごと見逃すことになりかねません。こうした多様な層を横断する形で、住宅タイプもペルソナ設計の重要な手がかりになります。

HDB(公営住宅)・コンドミニアム・戸建ては生活水準や購買力の目安として現地では広く共有されており、現地民かExpatsかを問わず、どのタイプの住宅に住んでいるかが、ターゲットの解像度を上げる軸になります。

シンガポールの風景。HDBが並ぶ。

【参考】シンガポールの景色。HDBが並ぶ。

変数が多いということは、「シンガポールの人」を一括りにできないということでもあります。マクロなデータだけでは、ターゲットの解像度を上げるには限界があります。だからこそ、現場で得られるミクロな実感が重要になります。

そこで私自身が意識しているのは、積極的に外に出ることです。関連するイベントやコミュニティに足を運び、どんな人たちが集まり、何に反応しているのかを肌で感じる。生活者として現地の店舗に赴き、棚や買い物客を自分の目で見る。

特にシンガポールはリアルのコミュニティ文化が根付いており、様々なジャンルのイベントや集まりが日常的に開かれています。そうした場に飛び込むことが、多様な層の生活者を理解する上で、最も確かな方法です。

「この層にはこのメッセージが刺さるはず」という仮説は、データだけでなく、現場で培った生活者への解像度から生まれるので、たとえデジタルマーケティングの仕事であっても、こうして肌で感じた感覚がクリエイティブやターゲティングの仮説の精度を上げることに直結します。

【2】デジタル広告チャネルは、実質3択。

ターゲットの輪郭が見えてきたら、次は「どこで届けるか」です。ここでも、日本の感覚とは大きく異なる現実があります。

日本ではGoogle・Yahoo!・LINE・Meta・TikTok・Xなど、目的や商材特性に応じて複数の媒体を組み合わせてメディアプランを設計します。

一方でシンガポールのToC向けデジタル広告は、主にMeta(Facebook/Instagram)・Google・TikTokの3つに集約されます。

シンガポールで利用される主流SNS

【出典】Meltwater, Special report Digital 2026 Singapore (p.87)

なぜこの3択に集約されるのか。

理由はシンプルで、シンガポールの人口は約600万人と小さく、ローカルのSNSやメディアが独自に成長・維持できる市場規模がありません。日本のLINEのように、国内で広く普及したプラットフォームが育ちにくい土壌なのです。

加えて、シンガポールでは英語や中国語を理解できる人口が多く、グローバルプラットフォームのコンテンツをそのまま自然に消費できます。ローカルプラットフォームへの需要がそもそも生まれにくい、という背景もあります。その結果、ユーザーの可処分時間も広告予算も、自然とグローバルプラットフォームの3つに集中する構造になっています。

チャネルが少ない分、逆に言えば全ての主要媒体をトライできるという利点もあります。 

3つそれぞれで仮説を立て、検証しながらPDCAを回し続けることが重要です。そしてどの媒体でも、PDCAを回す中で最終的な勝負を決めるのはクリエイティブです。次のセクションでその話をします。

【3】勝負はクリエイティブ。シンガポールで刺さる表現とは

何を見せるかで結果が変わる。

これはマーケティングの世界共通の話です。チャネルが3つに絞られているシンガポールでは、媒体選びで差がつきにくい分、クリエイティブがより重要になります。

シンガポールで刺さる表現を理解するには、まずシンガポールの国民性を知る必要があります。

シンガポールではとにかくスピードと効率性が重視されます。たとえばシンガポール英語、いわゆるSinglishは単語や文法が省略された表現が多く、短いやり取りで要点を伝えます。駅やショッピングモールのエスカレーターは速く、空港ではパスポート不要の顔認証で出入国できる。日常のあらゆる場面に、スピードと効率を重視する国民性が滲み出ています。

この気質は、クリエイティブへの反応にも直結します。冒頭の数秒や、パッと見で「自分に関係があるか」が判断できないコンテンツは、そのままスキップされます。 日本向けに作られた、丁寧な前置きや情緒的な表現は、内容が良くても離脱されるケースが少なくありません。シンガポールで求められるのは、婉曲的ではないストレートでわかりやすい表現です。

また、多民族国家であるシンガポールでは、日本的なイラストや情緒的なビジュアルより、誰が見ても一瞬で伝わるリアルな写真表現が好まれます。コピーも同様で、雰囲気で想像させるより、何の商品か・何をすべきかが瞬時に分かるストレートな表現が求められます。
シンガポールで効果的なクリエイティブには、コピーの書き方、色使い、ビジュアルの選び方など、日本とは異なる明確な傾向があります。

このあたりは、弊社のクリエイティブディレクターが豊富な制作事例をもとに詳しくまとめています。デジタル広告のクリエイティブを考える上で、ぜひ合わせてご覧ください。

【海外広告】私がシンガポールに来て気付いたデザインの決定的な違い

シンガポールのOOHのイメージ

さいごに(日本のやり方を持ち込むのは危険)

シンガポールのデジタルマーケティングは、一見すると日本と似ているようで、前提となる考え方や市場構造が大きく異なります。現地の特性を理解せずに日本のやり方をそのまま持ち込むと、思わぬところでズレが生じてしまうことも少なくありません。

弊社では、シンガポール現地での17年以上の実務経験をもとに、日本企業向けの現地マーケティング支援を行っています。シンガポール市場でのマーケティングに関して、

何から考えるべきか分からない

日本のやり方が通用するのか不安がある

といったお悩みがあれば、お気軽に以下のフォームよりお問い合わせください。本記事が、シンガポール市場に事業拡大を検討している日本企業の皆様の参考になっていたら嬉しいです。