シンガポールの介護業界に精通するプロフェッショナル|独占インタビュー
世界的に高齢化先進国である日本の介護関連サービス。ですが、多くの日本企業のホームページには英語の情報がなく、海外からの問い合わせに対応する体制が整っていないケースが多いのが現状です。
これでは今後急速に高齢化を迎える世界市場に対し、機会損失している可能性が大いにあります。
実際にこのような状況に対し、シンガポールの介護業界に精通するケルビン・タン氏は、日本には世界的にも先進的な介護サービスがありますが、海外市場に目を向けている企業が少ないことを非常に勿体無いと言います。
ぜひ英語での情報発信と対応できる環境の整備に取り組んで、近隣のアジア諸国から海外展開をはじめてみませんか?
このブログでは、ケルビン・タン氏への独占インタビューをまとめ、具体的にシンガポール市場でどのような介護サービスが求められているか、現状を整理しました。
海外市場にご興味がある介護業界の方は、ぜひ参考にしてみてください。
シンガポール市場の魅力は「アジア市場の入口であること」
日本の介護サービス企業はとても質が高いサービスや商品を持っている印象があります。
一方で、なかなかシンガポールでの進出事例をみかけないのが現状です。
シンガポールの市場規模は日本に比べれば小さいですが、アジア市場への展開を見据えたテストマーケティングをするには、最適の場所だと言えるでしょう。
なぜなら、多国籍国家なので、華僑やマレーシア、インドネシア、ベトナムなど、様々な民族の特徴や傾向を理解でき、それぞれの需要を拾えるからです。
近隣諸国を見ると、たとえばインドネシアでも高齢化社会が問題になりつつあり、マレーシアではテクノロジーをつかった高齢化社会の課題解決を促進しています。
シンガポールでのテストマーケティングの結果を踏まえて、市場規模が大きいインドネシアへ展開する可能性を模索できるかもしれません。
また、マレーシアはシンガポールから近いので、テストマーケティング期間中にネットワーキングを通じて関係者とつながりやすい可能性もあります。

シンガポールで認識されている日本企業の介護サービス・商品の評価は?
ケルビさんによると、日本企業の製品やサービスには、以下のような特徴があるように感じられるそうです。
- 品質と安心・安全であるという点が素晴らしい
- 技術面が信頼できる
- すぐに壊れない(長持ちする)
- 値段が高い

一方で、全体的にサービスや商品に関する情報や説明が日本語だけなのでわからないことが多々あり、言語の壁を感じることが多いです。
そういう場合、書いてある情報を翻訳しないと使用できないのですが、いちいち調べていると時間がかかってしまいます。
Web上では多言語のウェブサイトすらないことが多いので、海外から「ECで買いたくても買えない」という声も耳にします。

シンガポールで活用されている海外の介護商品やサービスの事例は?
スウェーデン発のグローバルスタンダードなトレーニングマシン「HUR」
日本を含む世界60ヵ国以上で採用されているトレーニングマシンです。
人間工学に基づいたデザインになっており、リハビリテーションや高齢者のエクササイズに最適な負荷を与えられます。
シンガポールには「HUR」が設置されている高齢者向けのジムが17ヶ所あり、とても人気です。
【出典】HURホームページ
テレプレゼンスロボット「BeamPro」
シンガポール市場では介護ロボットには需要があり、特に非接触が求められたコロナ禍では大変重宝されました。
「BeamPro」は、ロボットに設置されている画面を通じて、家族とテレビ電話ができる仕組みになっています。
コロナ禍のシンガポールでは、介護施設から家族と入居する高齢者とを「BeamPro」で繋ぎ、コミュニケーションをとっているケースもありました。
コロナ禍で特に人気が出て、需要が上がったサービスのひとつです。
日本発のロボットソリューション「Lovot(らぼっと)」
「Lovot(らぼっと)」は、50以上のセンサーなど世界最高水準のテクノロジーを搭載しているロボット。
本当に生きている生物のような質感・温度・表情・行動をするのでとてもすばらしい商品だと思う。
犬などの本物の動物よりも優れているのは、散歩に行かなくていいことや、安全かつ衛生面にも問題がない点です。
充電がなくなったら自力で充電器に戻ったり、搭載されているカメラから見守りもできるので、非接触が求められるコロナ禍での需要にも合っています。
需要がある介護商品やサービス、事前に検討すべきポイントは?
シンガポール市場では、国内で生産・提供されている介護関連の商品はほとんどありません。
なぜなら、シンガポール国外の海外から輸入・参入してくるサービスが基本だからです。
また、高齢者向けサービス・商品には「安全性」が第一に求められます。
このような点から、安心安全の技術が高い日本の商品を輸入したいと考えるシンガポールの高齢者向け施設や家族、介護関連事業者も多いと考えています。
どの分野に需要があるとは具体的には伝えにくいですが、たとえば以下のような分野が考えられます。
- 健康状態を測る機器
- 介護関連のIOT機器
- ウェアラブル機器
- テクノロジーのレンタルサービス
- 高級な介護ベッド(フランスベッドなど)
- 車椅子(RDS)などのレンタル・サブスクサービス
- 高齢者向けスマートホームシステム
- 高齢者向け電子決済サービス
「Lovot(らぼっと)」などの通信機器を搭載したサービスを実際にシンガポール市場に展開する場合は、ライセンスや商標の問題が出てくる可能性があるので、少しハードルが高いかもしれません。
機器関係の場合では、ディストリビューターをどう手配するかが問題になります。
また、故障した際などに「だれが」「どうやって」メンテナンスや修理をやるのかも、事前に検討しておくべきでしょう。
【おまけ】シンガポールの介護業界の実態:課題とトレンド
シンガポールの介護業界に精通するケルビン氏へのインタビューは以上ですが、ここからはシンガポールの介護業界の現状課題とトレンドをご紹介いたします。
シンガポールの動向をより深く知ることができると思うので、ぜひ参考にしてみてください。
シンガポールでは在宅介護が基本
シンガポールには華僑・マレー系が多く、文化的に家族を大切にする傾向が強いため、介護施設を利用するより在宅介護が主流となっています。
実際に家族を重んじる文化は、マレー語で「村」を意味する「Kampong(カンポン)」という言葉をつかった「Kampong Sprit(カンポンスピリット)」と呼ばれています。
やむなくどうしても子供が面倒を見れない場合に、介護施設を利用するという風潮なので、介護施設を利用していると「子供としての役目を果たしていない」と社会からみられることもあるそうです。
どちらかというととてもネガティブなイメージが強いため、「介護施設に行きたくない」と思っている高齢者も多いと聞きます。
シンガポールの介護施設については、以下に詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。
シンガポールの介護事情ガイド|日本産サービスに需要の兆し【概要編】
介護施設の金額が高く、高齢化対策が課題
シンガポールの介護施設は現在利用料金が高いのですが、金額だけでなく高齢化需要に伴う対策の必要性が認識されています。
シンガポールの保健省「MOH」も危機感を持っており、最近では高齢者介護センターの規模とサービス範囲を拡大し、2025年までに高齢者介護センターの数をほぼ2倍の「220」に増やすことを目標としていると発表しました。
【出典】Ministry of Health, SPEECH BY MR ONG YE KUNG, MINISTER FOR HEALTH, AT THE 2022 COMMUNITY CARE WORK PLAN SEMINAR ON 13 JUNE 2022, 9AM
Ong Ye Kung保健相は「2010年から2020年の間に、MOHは約9,600床から16,200床へと70%増床した」と話し、積極的に高齢化対策を推し進めていることがわかります。
同時に、今後10年間で老人ホームのベッド数を2倍の「31,000床以上」に増やす計画も発表されました。
シンガポールでは今後より一層、介護事業者への社会的ニーズが増えることは明らかです。
注目されつつあるトレンドは「Modern Aging」
元気に活動的に生活できるシニアを「Active Senior(アクティブシニア)」と呼び、シンガポールでは特にそのように年を重ねることは大事なことだと考えられます。
なぜなら、シンガポールは「年を重ねても元気に活動できるひと」に対して活躍の場が与えられる環境だからです。
例えば、街中にあるホーカーセンターやコンビニで働いている高齢者の方の数は日本よりも多く、目立っています。
実際に再就職年齢が65歳から67歳に引き上げられたので、生涯現役でいる必要性があるとも言えます。
また、シンガポールでは、日本よりもスマホなどを使いこなせるICTリテラシーが高い高齢者がとても多いです。
高齢化問題に対してはどの国でもネガティブなイメージを抱きがちですが、元気に活動的に生活できる年を重ねる「Modern Aging」というトレンドは、高齢化社会の新しい価値観になると感じています。
さいごに
弊社では2018年より医療・介護領域でのご支援を積極的に展開し、医療従事者のためのシンポジウム「HICC」をシンガポールで開催してきました。
「HICC」は、日本・シンガポール・フィンランドの3か国で、高齢化対策に向き合う医療関係者が協力し、お互い知識と経験を共有することで、新しいテクノロジーやサービスを作り出し、高齢化社会の課題解決に貢献することが目的でした。
2020年に開催する際に公開したブログに詳細があるので、ご興味ある方は以下のブログをご覧下さい。
こうした高齢化への医療・ヘルスケア分野の発展に貢献する取り組みを通じて、日本と世界市場を結びつける取り組みをより強化したいと思案していました。
ついに今年、シニア向け暮らしのパートナーサービス「もっとメイト」を運営する株式会社MIHARUと共催で、2022年9月にカンファレンスイベント「Age Well Japan 2022」を実施することとなりました。
ウェルビーイングをテーマに、日本の高齢化社会の現状把握をし、未来に向かって新たな価値を定義するカンファレンスイベント。
全2日間の期間中、孫世代の若者や、65歳以上のシニア世代の方々、ウェルビーイングに関わる企業関係者など総勢300名が集まる、国内初の催しとなります。
当日はウェディングドレスデザイナー桂由美氏をはじめ、シンガポール・中国・カナダ・ドイツなどから「”高齢者”の再定義」をテーマに活躍する登壇者によるディスカッションが実施されます。
イベントを一緒に盛り上げてくださるスポンサー企業も募集しており、当日には企業間交流、ネットワーク形成、またリアルにシニア世代の皆様とへのマーケティングを行う機会となる予定です。
「Age Well Japan 2022」にご興味がある方は、以下のフォームよりお気軽にご相談ください。






