旅行会社ファムトリップを成功させるために絶対にやってはいけないこと

海外旅行会社向けFAMツアーのイメージ
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訪日観光客の誘客に関わる方々から

FAMという言葉は聞いたことがあっても、具体的に何をするのか、どう活用すればいいのかよくわからない

という声を聞くことがあります。

FAMは、海外の旅行会社やメディア関係者をPRしたい地域に招請して、現地の魅力を体験してもらう観光プロモーションの手法のひとつです。

ただ案内するだけでは成果にはつながらないので、成功させるには「誰を招くのか」「どんな体験を提供するのか」「その後どうフォローするのか」といった事前の検討や計画が必要不可欠です。

逆を言えば事前準備がしっかりできていればいるほど成果を最大化できるのが、FAMトリップの良さでもあります。

この記事では、旅行会社向けのFAMに特化して、基本的な部分から失敗例になりかねない落とし穴まで詳しく解説します。実際のエピソードも交えて具体的にご紹介するので、FAMを活用しし誘客に繋げたいとお考えの方はぜひ最後まで読んでみてください。

 

>「メディア招聘のFAMツアーの注意点」についての記事はこちら

海外メディア招聘を成功へ導くために必要なことは?考慮すべき3つのポイント

メディア向けFAMツアーのイメージ

「FAM」を熟知する上で重要な2つのポイント

FAMには大きく2つの種類ある

「ファムトリップ(ファムツアー)」や「ファム」、「ファムツアー」と呼ばれるものは、「Familiarization Trip」の略称で、観光情報の発信や旅行商品の造成などを行うために、海外の旅行代理店やメディア、専門家などPRしたい地域に招請・視察してもらう旅行のことです。

通称「FAM(ファム)」と呼ばれることが多く、大きく分けると以下の2つの種類があります。

  1. 海外の旅行会社向けのFAM
  2. 海外のメディア向けのFAM

旅行会社を招請する場合は「エージェントFAM」メディアを招請する場合は「プレスツアー」「メディアFAM」という言い方をすることもあります。

FAMを実施する目的の違い

「旅行会社向け」と「メディア向け」では目的が大きく異なります

旅行会社向けのFAMは、旅行会社に旅行商品を造成・販売してもらうことが目的です。そのため、旅行会社向けのFAMは、旅行会社が販売する商品を通じて、潜在旅行者に「購入(=実際の渡航)」を促すことが最大のゴールとなります。

一方で、メディア向けのFAMはメディアでの露出を増やし、ターゲットに「まず知ってもらい(認知拡大)、そのエリアに対する興味関心を喚起すること」が目的となります。

メディア向けのFAMを通じて発信された情報を最終的に受け取る人々は、まだそのエリアのことを認識していない可能性が高く、興味関心が薄い層にあたります。記事やSNSのメディアを通じた情報発信で認知を広げ、興味・関心を持たせることを目指しているので、旅行会社向けのFAMとは大きく異なります。

訪日ファネル

【参考】日本政府観光局, 世界22市場での定量調査でみる、訪日旅行への意識・傾向・市場規模(JNTO独自調査結果概要)(前編), 2023年2月21日

旅行会社向けのFAMとメディア向けのFAMでは、実施する目的と、エリアに対してどの程度認知されているかという前提に大きな違いがあることには注意しましょう。

旅行会社向けのFAMでは「どうしたらこの地域の旅行商品を造成して販売してもらえるか?」、メディア向けのFAMでは「この地域の魅力を伝えるストーリー作り(記事やメディアの制作)に必要な情報提供ができているだろうか?」という点を意識して企画すると、参加した関係者の満足度があがり、より良い成果につながりやすくなります。

旅行会社向けFAMでやってはいけないこと【4選】

【1】再現性のない行程で催行すること

FAMツアーで最もよくあるミスが「視察時の対応は特別なものなので、一般の旅行者には再現ができない」 というケースです。

せっかく遠くから視察に来てくれる旅行会社の担当者に「可能な限り最高のおもてなしをしたい」という気持ちはわかります。ですが、FAMの参加者は自分が気に入ったコンテンツを「自分の顧客にもそのまま提案したい」と思ったときに「あの時は特別対応だったので、同じように再現できません」となってしまっては、FAMを実施した意味がありません。

特に、その年限りの特別なイベントや、FAMのためだけに実施した限定的なアクティビティは、実際の旅行商品造成にはつながらないため紹介しても意味がありません。FAMで取り扱っても旅行商品造成や販売という視点では無駄になってしまいます。

訪日観光の様子イメージ

旅行会社がFAMに参加する目的は、新しい旅行旅行商品の造成や、既存商品のアップデート、ツアーの販売(売上)につながる情報を得ることです。旅行会社は「実際に販売できるものを視察したい」という大前提があることを忘れないようにしましょう。

特に富裕層向けの旅行会社は、FAMに参加した担当者自身がVIPのお客様に良さを直接伝える責任があるので「実際に体験し、自信を持って販売できるかどうか」をとても重視します。そのため、FAMでは実際に販売可能なコンテンツを視察してもらうことが非常に重要になります。

ですので、FAMで回る視察の行程は、そのままツアーのモデルコースとして使えるように、最初から無駄のない順番で設計するのが理想的です。

そのためにはツアーの作成後に移動手段も含めて効率的かどうかを確認し、もし行程を作る方があまり土地勘がないエリアのFAMを担当する場合は、Googleマップ上に訪問先の候補をピン留めし、ルートを検証するのもおすすめです。

もしもやむを得ない事情で、本来であれば効率的ではない順番で催行を調整する場合は、FAMの参加者には必ずそのことをしっかり伝えましょう

例えば、紹介したい行程を行うには電車移動が入るけれど、FAMの日程と特急電車の運行スケジュールとがうまく合わなかった場合、

「本来最も効率的なのは、XX時△△駅発の特急電車に乗るのがベストだが、今回は運行の都合でこの行程になっている

と事前に説明しておくことで、FAMの参加者もきちんとその情報を考慮した上で視察に臨み、その後のツアー販売に関して検討してくれます。

このようにFAMは単なる観光案内ではなく「視察した行程がそのまま旅行商品造成や販売につながるか?」が最も重要なので、特別感よりも実用性を重視し、再現可能な視察内容にしましょう。

日本での移動の様子イメージ

【2】英語ができないという理由で参加者と直接コミュニケーションを取らないこと

これは実際にこれまで多くのFAMツアーに同行していて感じることなのですが、通訳ガイドに任せきりで「自分は後ろにいるだけ」というFAMの主催者の方が少なくありません。

実際に事後アンケートを見ても、評価されるのはガイドや随行スタッフばかりで、主催者の存在感が薄いことがよくあります。

FAMツアーに参加する旅行会社の担当者は、年間で多くのFAMツアーに参加しており、訪れた地域をどのように商品化し販売していくのか判断する方々で、誘客の可否を担う大事なお取引先。FAMの主催者は、先頭に立って彼らに積極的にセールスをしなければならない立場です。

にもかかわらず、後ろから黙って着いてくるだけでは「あの人は何のためにいるの?」と思われてしまいかねず、実際に参加者した旅行会社からそう聞かれたことも少なくありません。

また、数多くの他の地域を差し置いてでも、今回訪れたこの地域のことを思い出して「ここでツアーを組みたい」と思わせることが重要なのですが、そう感じてもらうためには最も記憶に残りやすい熱意と思いやりのある直接の会話・コミュニケーションに勝るものはないのです。

FAMを主催する立場の方は、参加者する旅行会社から見ればその地域の代表であり、一番の情報源だと思われています。通訳ガイドに頼るのはもちろんOKですが、通訳はあくまでサポート役であり、FAMを企画した側の思いやアピールしたい気持ちを持った「営業担当役」の代わりにはなり得ません。

ガイドでは伝えきれない地元ならではの話や、あなた自身の想いを直接伝えられたら、それは必ずFAMの参加者の心に響きます。

「英語が話せないから…」と黙っているのは逆効果で、むしろ通訳を使い倒して、つたない英語だったとしても一生懸命自分の言葉で伝える方がより相手の印象に残ります。

特にシンガポールからの参加者は、日本が英語圏でないことを理解しているので、流暢な英語より「一生懸命伝えようとする姿勢」のほうが遥かに好印象を与えます。

FAMツアーでは招聘した側がチーム一丸となって「地域の魅力を売り込む営業担当」という意識で積極的に話し、しっかりアピールできるようにしましょう。

外国人への接客中のイメージ

【3】コンテンツの手配ができる国内の旅行会社をFAMに巻き込まないこと

FAMツアーは、ただ観光地を視察してもらうだけでは意味がありません。

特に旅行会社向けのFAMの場合は、旅行商品の造成・販売をしてもらうことが目的なので、参加者が「このツアーをそのまま商品化したい」と思ったときに、実際に手配できる国内の旅行会社(DMCやランドオペレーター)がいなければ、造成や販売には繋がりません。

実際に手配できる国内のDMCやランドオペレーターは、絶対に紹介できるようにしておくべきです。

海外の旅行会社は、訪日旅行を手配する際、日本国内のランドオペレーターやDMC(デスティネーション・マネージメント・カンパニー)を通じて予約を行うのが一般的です。これはグループツアーでも富裕層向けツアーでも同様です。

特に富裕層向けの旅行会社は、顧客を満足させるユニークなコンテンツを求めていることが多いので、そのエリアのエキスパートである地方のDMCと直接連携してやりとりしたがる傾向が強いです。

実際、FAMツアーで視察した観光コンテンツへの満足度が高ければ「今回のFAMで手配を担当したDMCを紹介してほしい」とリクエストされることも珍しくありません。

ランドオペレーターやDMCに手配を依頼すると手配手数料が発生しますが、FAMの事後に実際の送客につなげるためには重要な投資だと言えます。できればFAMの企画段階から、実際に手配ができるランドオペレーターやDMCを巻き込んで連携し、一部または全行程の手配を依頼することをおすすめします。

ランドオペレーターの具体例のイメージ

また、もっと具体的なことを言えば、FAMの行程中に可能な限りランドオペレーターやDMCの担当者を現場に呼び、招請者と直接顔を合わせる場をつくれたらより可能性は広がりやすくなります。

例えば、招請者が後からツアー手配を検討した際に「FAMのときに名刺交換したあの人だよ」と伝えられることで、初対面の相手に依頼するよりも安心感が高まり、FAMが終わった後でも商談がスムーズに進みやすくなります。

実際にFAMをきっかけに旅行会社から手配の依頼が入ることは頻繁にあり、例えば

「FAMで視察したあのアクティビティを手配してくれた○○さんと連絡を取りたい」

「FAMに参加した△△から聞いたのですが、○○エリアの手配を担当したDMCの連絡先を教えてもらえませんか?」

といった連絡が、過去に私が参加したFAMの中では事後に寄せられました。

このようなお問い合わせが増えれば、FAMを実施した意義は大きくなります。ただの視察で終わらせず、確実にツアー造成をする手配につなげるために、ランドオペレーターやDMCを巻き込んでFAMを実施しましょう。

【4】事後フォローを行わないこと

FAMツアーは、視察が終わった後のフォローも重要です。FAMツアーの内容だけで200%満足し、催行した通りの旅行商品ができあがることは滅多にないからです。

また、FAMで体験してもらった内容について補足の情報提供や追加提案がないと、せっかくの視察も商談につながらず忘れられてしまいます。

具体的にはまず、FAM後には必ず参加者からのフィードバックを収集することをおすすめします。FAMについての意見を聞くだけでなく「次のステップ」として具体的に必要な情報を聞き出せたら、追加で提案を返すことができるので、商談を前に進めやすくなります。

視察中に伝えきれなかった情報がある場合は、遅くとも3日以内に情報提供をしましょう。例えば、季節が違えば桜や紅葉が見られるなどFAMで巡った場所で「季節ごとに変わる体験コンテンツ」がある場合、その詳細はツアーの造成に役立つので、ぜひ伝えるべきです。写真や動画があるとなお良いです。

ちなみに私自身、FAMの終了後には以下の情報をまとめた簡単な資料を送るようにしています。

  • 観光コンテンツの詳細
    • おすすめのシーズン
    • 価格
    • 年齢制限
    • 最少/最大催行人数
    • 催行時間
  • 催行会社の連絡先・外国語対応の有無
  • 写真や動画など、イメージしやすい素材

完璧な資料を作るよりも、FAMに参加した後の熱が冷めないうちに、正確な情報をできるだけ早く提供できることが重要です。事前に準備しておくと事後のフォローがしやすくなるので、準備してFAMに臨むようにしましょう。

おすすめシーズンがわかるイメージ

さいごに

FAMツアーは参加者を海外から招聘するための旅費がかかるため、費用面で慎重になることもあるかもしれません。

ですが、実際に現地を体験してもらうことに勝るプロモーション手法はないので、 FAMは観光地の魅力を直接伝え、商談につなげる効果的な方法だと言えます。

参加者が興味を持った観光コンテンツがあれば、新しい旅行商品が生まれたり、既存商品がアップデートされたりする可能性が高まります。

また、形式ばった商談では得られない情報が手に入るのもFAMの大きなメリットです。視察中の会話を通じて、参加者の率直な意見や市場のニーズを聞けるため、今後の戦略にも活かせます。

FAMは単なる視察ではなく、未来の訪日観光客を呼び込むための「投資」だと捉えて、きちんとした企画・フォローを徹底して、訪日観光客の誘客を実現する地域が増えたら嬉しいです。