海外メディア招聘を成功へ導くために必要なことは?考慮すべき3つのポイント
弊社ではこれまでJNTO様や各自治体様など訪日観光誘客を目的とした、様々なFAMツアーの企画や運営に関わってきましたが、かなり多くの方が「メディア招聘のFAMツアー」と「旅行会社向けのFAMツアー」の違いがわかっていません。
「FAMツアー(ファムトリップ)」は、観光地の魅力を伝え、訪日旅行を促進するための強力な手法のひとつで、これは旅行会社向け・メディア向けで変わりはありません。
ですが、この2つは目的も提供すべき情報も大きく異なり、特にメディア向けのFAMツアーは、旅行会社向けのFAMツアーよりも難易度が何倍も増すと個人的には思っています。
メディア向けの場合は、参加したジャーナリストが制作する記事や映像を通じて「この地域に行ってみたい!」と思われるような情報を世界に発信してもらうために、FAM催行中に質の高い情報提供と参加者とのコミュニケーションが求められます。
そこでこの記事では、メディア招聘を成功させるために絶対に押さえておかなければならない3つのポイントをまとめました。これからメディアを招聘するFAMツアーを実施予定の方はぜひ参考にしてください。
>「旅行会社向けFAMツアーの注意点」についての記事はこちら
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目的と提供すべき情報がこれほど違う!
旅行会社向けFAMとメディアを招聘するFAMツアーの場合は、提供すべき情報に大きな違いがあります。
旅行会社向けFAMは、旅行商品を新しく造成したり、既存の旅行商品をアップデートしてもらい、販売してもらう(実際の送客につなげる)ことを目的としているので実際に販売できる観光コンテンツやそれに関する情報が求められます。
一方、メディアを招聘するFAMツアーは、プロモーションしたい地域の「認知度を高め、訪問意欲を喚起すること」が目的になるので、地域の魅力を存分に伝え、メディアの先にいるその読者に「そこに行ってみたい!」と思ってもらえるような取材内容が求められます。

「商品を売るための視察」なのか「魅力を伝えるための視察」なのか。
この違いを理解していないと、せっかくFAMツアーを催行してもその価値を最大化できないので、実施する前に目的をよく検討することをおすすめします。

メディア招聘は大変だが、一気に認知向上と興味喚起を獲得できる可能性がある
これまで数多くのFAMツアーをご支援させていただいてきた私個人の体感として、メディアを招聘するFAMツアーの場合は、旅行会社向けのFAMツアーよりも何倍も難易度が上がると感じています。
その理由は5つあります。
①メディアの選定と確定に時間がかかる
適切なメディアやジャーナリストを探し、交渉するのに時間がかかることがほとんどです。短くても1〜2ヶ月は想定しておく必要があります。
②取材先への許可取りが必要
プロモーションしたい場所があったとしても、そのコンテンツを提供している方からの写真・映像撮影や取材の許可が下りなければ実現できません。取材可否を判断するために事前に撮影申請書や企画書の提出を求められるケースもあります。そこから許可が下りるまでに時間がかかることもあります。
③メディアからのリクエストに応える対応が必要
大きな影響力を持つ有力メディアほど取材の目的が明確で、「具体的にこんな写真が撮りたい」「こんな人にインタビューがしたい」などかなり細かいリクエストをされる場合があります。質の高い成果物を世に出すためにはその細かい要求に応える対応も必要になります。
④現場での臨機応変なスケジュール調整が必要
撮影や取材に想定よりも時間がかかることがあります。より良い情報発信をしたいというメディア側のプロ意識によるものなので、有難いし仕方がないことなのですが、その次のアポイントもあるケースもあり、行程を気にしながら現場でスケジュール管理を行う必要性が出てきます。
特に映像や写真の撮影が肝になる取材などは、天候によってFAMの内容や順番を大きく変更せざるを得ないこともあります。
⑤催行事後、公開前の事実調査・校正が必要
FAM催行後に、取材した記事が公開されるまでに、内容の事実関係に間違いがないかの確認(ファクトチェック)、メディアからリクエストのあった既存の写真や映像素材の提供などの対応をする必要があります。しかも、かなりタイトなスケジュールでリクエストされるケースが大半です。
メディア向けのFAMツアーの催行には手間も労力もかかります。ですが、取材した結果として発信した情報によって、一気に地域の知名度が高まり、新たな訪日観光客を呼び込む可能性がある強力な手法です。
実際、2019年に「The New York Times」が発表した「訪れるべき52の場所」で、日本から唯一「Setouchi Islands(瀬戸内エリア)」が第7位に選ばれました。
この掲載をきっかけに、欧米を中心に瀬戸内エリアの知名度が急上昇し、現在では、外国人観光客に人気のデスティネーションとなっています。
海外メディアの招聘ツアーを成功へ導く3つのチェックポイント
潜在的な旅行者に 「ここに行ってみたい!」と思わせる情報発信をすることが、メディア招聘の大きな目的でありゴールです。
以下の3つのポイントは、メディア向けのFAMツアーを成功させるために押さえておくべきポイントなので、ぜひ参考にしてください。
【1】招聘者のニーズを事前に把握し、それらに合った行程を組む
旅行会社向けFAMの場合は一般の観光客が同じ行程を楽しめるかという「旅行商品造成での再現性」が求められます。ですが、メディアを招聘する場合は、誰でも体験できる一般的な行程よりも、そのメディアやジャーナリストの専門分野や関心に合った体験を提供することが重要になります。
実際にメディア向けのFAMツアーを実施する前に、作成したサンプルの行程を提示した上で、事前に招聘するジャーナリストに対し以下の事項についてヒアリングを行い実施したケースがあります。
- 取材する観点でこの中で特に興味を惹かれるものは何か
- どんなジャンルのコンテンツの取材が得意か(例:食、宿泊施設、歴史、伝統工芸、地元文化、アート)
この時、回答として「特に歴史と伝統工芸に興味がある」ということだったので、招聘した際の行程に寺泊や古い街並みめぐり、伝統工芸職人さんの工房訪問や職人さんから直接手解きを受けられるワークショップを追加で入れて実施しました。
すると催行後のアンケートの中で
「今までの人生の中で体験した中で一番の、本当に素晴らしい行程と体験だった!」
「掲載を予め予定していた媒体ではなく、別の媒体にも掲載できるよう絶対に編集者に売り込む!」
と、かなり熱量が高いコメントをいただきました。
このほかにも、フォトグラファーを招聘するなら、特別な光景を見られたり、人が少ない時間帯での訪問を調整したり、人物にフォーカスした記事の執筆が得意な人なら、その土地にいらっしゃるユニークな方のインタビューを手配するといった工夫ができるはず。
また「他のメディアやジャーナリストがまだ取材していないようなコンテンツ」は非常に好まれるので、相手の興味関心に合っていて、まだあまり広く知られていない「知る人ぞ知る内容」があればぜひ行程に入れましょう。取材や執筆に対するモチベーションを高めることができます。
もしも招聘するジャーナリストが、過去にそのエリアに訪問した経験がある場合は、前回とは違ったユニークさや魅力がないと執筆してもらいにくくなるので注意が必要です。過去どの時期に来て、どんなものを見たのかを事前に聞いた上で、前回とは季節や時間帯を変えて訪問する行程を組んだり、メディアやジャーナリストと事前に協議できると、より良い取材ができるでしょう。
FAMに参加するメディアやジャーナリストの関心はそれぞれ異なるので「とりあえず観光地を巡る」ではなく、メディアやジャーナリストのニーズを事前に把握してより良い取材ができるように準備しましょう。

【2】メディアやジャーナリストの要求には可能な限り応える
メディア向けのFAMツアーでは、より良い記事や映像が作れる取材をしてもらうために、要望に可能な限り対応することが重要です。
例えば実際にメディア向けのFAMツアーを行ってみると、
- 取材時間の延長や変更
- 事前に申請していなかった場所での撮影交渉
- 写真撮影のための追加メニュー注文
といった、想定外の要求を現場で受けることがよくあるのですが、これらに柔軟に対応することで取材の質が上がり、より魅力的な記事や映像などの制作に繋がります。
参加者の要望に応えるのではなく、「主催者側が見せたいもの」ばかりを押し付けるようなツアーになってしまうと、かえって逆効果になるので注意しましょう。
メディアやジャーナリストにはそれぞれの視点や得意とする取材スタイルがあります。強制的な制約をかけてしまうと「素晴らしい取材をして、世の中に良い情報を発信したい!」という彼らのモチベーションを下げてしまいかねません。
例えば、メディア向けのFAMツアー催行前は「食」をテーマに書いてもらう予定だったのに、泊まった宿の温泉が格別すぎて「やっぱり温泉について書きたい」という提案が取材者側からあったとします。
その時に事業の内容から「当初の予定通り、食テーマでないと困る」という返答になってしまうケースがあることもよくわかるのですが、ただ「ダメです」と一蹴するのではなく、どうにか双方が納得できる落としどころがないのか最大限に考えるべきです。
その理由は、自身のメディアの先にいる読者やファンのことををよく知る彼らの「プロフェッショナルな取材目線」を取り入れた方が、圧倒的に結果は良くなるはずだからです。
メディア向けFAMツアーをわざわざお金やコストをかけて実施するのであれば、やはりこうした調整が現場で可能かどうかが事業の価値の最大化を大きく左右します。

メディアを招聘する側として最も重要なのは、招聘したメディアを100%コントロールしようとするのではなく、現地に招聘するジャーナリストが「おもしろい」と感じたものと、自分たちが伝えたい地域の魅力のバランスを取り、双方が納得できるかたちを探ることが求められます。
そのためにも事前に「絶対に外せないポイント」と「柔軟に対応できる範囲」を明確にしておいたり、招聘するメディアやジャーナリストが興味を示しそうな分野や取材したい内容を把握しておくことは必要不可欠です。(【1】でご紹介した内容につながります)
もちろん、すべてのリクエストに応えられるわけではないので、対応が難しい場合は、その理由を明確に説明し、納得してもらうことが大切です。
【3】「良い取材を実現するんだ」という意識で関係者全員と関わる
メディア向けのFAMツアーでは、予期せぬトラブルやスケジュール変更がつきものです。
そうしたイレギュラーを対応して「より良い取材を実現するぞ!」というモチベーションを保つために、自分を含めて取材に同行するメンバー全員が「良い取材を実現するチームメンバー」だという意識を持てるように働きかけましょう。
FAMツアーの現場には、主催者や事務局のスタッフだけでなく、ドライバー、通訳ガイド、随行者など、様々な関係者がいます。
関わる全員が一丸となって、今回の取材を「良いものにしよう」という意識で臨めると、ツアー実施中に起きる不測の事態も乗り越えやすくなります。
現場に同行するのであれば、単なる案内役や随行者としてではなく「この取材の成功を支えるチームをマネジメントをする立場」という意識で動きましょう。
具体的には取材中、以下のような些細なサポートが大きな違いを生みます。
- カメラマンが重い機材を持ちながら撮影していたら、荷物を持ってスムーズに撮影できるようにする
- 三脚が風で倒れそうなら支える
- 料理の写真を撮る前に「これは地元で有名な○○料理ですが、撮影しますか?」と声をかける
- スムーズな移動のため、ホテルやドライバーと連携し、荷物を預ける時間を調整する
このようなちょっとした気配りの有無で、ジャーナリストが作業しやすくなったり、より質の高い記事や映像が制作できたり、関係者全員のチーム感が増したりします。
泥臭いことでも良い取材にする上で必要なことであれば、なんでも積極的に率先してやりましょう。積極的にサポートする姿勢を見せると、メディア側もより良い成果物を作ろうと本気になってくれます。
「自分は主催側だから、現場の仕事や招聘者とのコミュニケーションは委託業者のスタッフたちに任せればいいんだ」という態度はやめてください。そういう態度で現場にお越しになるのであれば、少なくとも現場にはいらないので来なくて結構です。
また、FAMツアーを支えるドライバーや地元のガイドは、地元の人しか知らない素晴らしい場所を知っていたり、ウェブサイトなどには載っていない知識を持っていることもあります。このような情報が貴重な取材のフックになることも往々にしてあります。関係者全員をより良い取材を実現する「チームの一員」として巻き込みましょう。

さいごに
メディア向けのFAMツアーを企画する際には、
【1】招聘者のニーズを事前に把握し、それらに合った あわせた行程を組む
【2】メディアやジャーナリストの要求には可能な限り応える
【3】「良い取材を実現するんだ」という意識で関係者全員と関わる
この3つを必ずチェックしてください。
特にFAMツアーを主催する立場なのであれば、現場で単なるサポート役としてではなく、「チームの一員」として積極的に関わる姿勢でいることは、取材をよりスムーズで充実したものにするためだけでなく、相手の視点を学びながら一緒に地域を盛り上げるために非常に重要なポイントになります。
また、実際にメディア向けのFAMツアーに同行すると、ジャーナリストが意外な場所に興味を持って写真を撮りはじめたり、予想外の質問を投げかけられる場面に遭遇します。彼らの視点を通じて、地域の魅力を再発見するきっかけにもなるはずです。
また、招聘する関係者は世界各地を取材しているため、これまでの取材で印象に残った体験や面白いと思った場所やコンテンツを聞くだけでも、自分の地域のプロモーションにも応用できるヒントが見つかるかもしれません。
メディア向けのFAMツアーは単なる観光プロモーションというよりは、むしろFAMツアーを通じて発信された情報が世界中に広がり、新たな訪日観光客の誘客可能性を生むチャンスです。
本記事がメディアの招聘を検討してる方の参考になることを心から願っています。

