海外展開の失敗事例は事前に手を打っておけば防げる|事例と防止策

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弊社では15年以上、中小〜大企業、自治体まで年間100社のシンガポール進出支援を行っています。

本当は「すべて成功している!」と言いたいところですが、なかには商流もまとまりもう一息というところで、社内体制の変更など予期せぬ事態の発生で進出を断念してしまう会社もありました。

しかし、それらは事前に想定して手を打っておけば防げる失敗ばかりです。

そこで今回は、これから海外展開を考える方々にはぜひ知っておいてほしいという思いで、弊社がこれまで目にしてきた海外展開の失敗事例をご紹介します。

失敗事例とともに、どのような防止策を考えることができたのかも分析したので、ぜひ参考にしてください。

 

【失敗1】突然の担当者の異動でシンガポール進出がストップ…

シンガポール展開を本格的に行うため、助成金を得て市場進出を果たした飲料メーカーA社。

助成金を確保した当初は、やる気に満ち溢れた海外担当者が1人でシンガポールでの事業を推し進めていました。

シンガポールで度重なるテストマーケティングや市場調査により、なんとか無事に商品ローンチを成功させることができました。

ですが、取引先も決定しこれからプロモーションにもしっかりと力を入れていこうとした矢先に、社内体制の変更により、いきなり海外担当者が異動に。

せっかく商品のローンチまでこぎ付け、取引先も決まったにも関わらず、新たに海外事業を担当する後任者もなかなか見つからないといった状況になってしまいました。

後任の方がいないのがなぜだったのかというと、遡ればそもそも社内で海外市場展開に向けた事業内容の共有が不十分であったことが発覚。

残念ながら助成金の終了をもって、シンガポール案件自体が見直しとなってしまいました。

事業が打ち切りになったことにより、ローンチした商品の本格的なプロモーションが始められず、「シンガポールマーケット向けに販売していける」と思って契約を結んだ現地ディストリビューターに、結果的に迷惑をかけてしまいました。

このような失敗例は、実はA社だけでなく今まで多数目の当たりにしてきました。

せっかく強い思いで推進してきても体制の問題で事業が終了してしまうのは非常にもったいないことです。

【防止策】経営陣を必ず入れた複数名のチームを作る

人材の問題は頻繁に発生する問題です。

海外進出というと試験的な立ち位置だからかチーム編成をおろそかにする企業が多いですが、日本とは勝手の違う海外展開ですのでリスクが高すぎます。

成功確率を上げるためにもチーム編成は一番力をいれるところだと考えます。

 

●複数名でチームを構成しよう

海外進出プロジェクトでは、担当者を1人にせず、最低でも2~3名のチームを編成しましょう。

これは基本中の基本です。担当者が1人だったために異動や退職時にせっかく始めたプロジェクトがだめになったケースをたくさん見てきました。

海外という未知の領域のためリスクを恐れて人員を動員しにくいという気持ちはわかりますが、むしろ動員しないと全ての努力が白紙になる可能性があります。

複数名のチームで常にお互い情報共有するようにしてください。プロジェクト開始時には、最低でも2~3名でチームを編成し、各自の役割を明確にします。

また、各メンバーの担当分野にバックアップを設定し、緊急時にも対応できる体制を整えます。

 

●社長や経営幹部を巻き込もう

海外展開は時間がかかる取り組みなので、経営幹部や社長のコミットメントや理解がなければ絶対に成功できません。

経営的な側面での協力や理解が得られなければ、どれほどいいチームが編成されていても社内で孤立して成果が出る前に撤退することになりかねないからです。

可能であれば、意思決定ができる権限のある経営幹部や社長も一緒に海外展開の事業に同行してもらったり、現地の生の声を聞いてもらえるように工夫しましょう。

【失敗2】現地のスピード感についていけず重要な決定を逃してしまう…

飲料メーカーB社では、海外担当者は事業始めの段階から1人体制でした。

そのためかシンガポール側の関係者が連絡を取りたくてもとれないことが多々ありました。スピード感が商談においてとても大事なシンガポールでは取引先をやきもきさせてしまうことも。

実際、フォローが遅れたことで商品ローンチのスケジュールが当初よりも大幅に遅れてしまったり、取引先がなかなか決まらなかったり、さまざまな問題が発生してしまいました。

【防止策】日本の当たり前は捨てる!現地の商習慣に100%合わせて行動しよう

商慣習は各国によって様々。例えばシンガポールの場合はとにかく「スピード重視」。

柔軟でありながら真面目で成果にもシビアな性質のシンガポール人にとって、意思決定に時間のかかる会社は相手にしたくありません。

この場合、シンガポールではどう行動すべきかを紹介しますね。

 

●「一度持ち帰ります」は厳禁!意思決定者を連れて行こう

日本では物事を決定する際、社内に一度持ち帰って検討するなどが多いですが、シンガポールは異なります。

スピードを重視する傾向が強く決断する能力が求められる風土なので、決定権を持っている人がチームにいた方がおすすめです。

実際、商談会でもその場で判断が求められることが大変多いのですが、日本側の煮え切らない態度にシンガポールのバイヤーから「日本の会社と商談してもねぇ」と言われることさえあります。

シンガポールにおいてはある程度社内で決定権を持った人をチームメンバーに加えるようにしましょう。

 

●SNS(特にwhatsapp)でやり取りしよう

シンガポールではメールをいちいち丁寧に書くよりも、whatsappなどのSNSを活用してビジネスのやりとりを進めることが非常に多いという特徴があります。

レスポンスもできるだけ早くした方が商談が進みやすいので、Whatsuppの登録はシンガポールに来る前に済ませておきましょう。

 

●できるだけ現地に訪問しよう

日本法人が定期的にシンガポールに渡航するのは難しいかもしれませんが、シンガポールでは、対面でのやりとりを好む傾向が強く見られます。

例えば、弊社が以前ご支援させていただいた長崎県産品の商談会の案件では、シ現地に生産者が訪れ、直接作り手の思いを伝えたことによって現地バイヤーへの誠意がしっかりと伝わり商談成約に繋がったという事例があります。

後日談として現地バイヤーから聞いた話によると

今までも商談の案件はいくつもあったが、実際にシンガポールまで直接生産者が訪れてきたことはなかった。

英語が話せる話せないに関わらず実際に顔を見て話をすると互いに信頼できるし、ビジネスを一緒にしたいという気持ちが芽生える。

とのことでした。

現地訪問を通じて直接的なコミュニケーションを図ることで、作り手の思いをしっかりと伝えられるだけでなく、お互いのニーズを明確に把握し、良好な関係を築くことができます。

日本国内でのビジネスでも同様に、たとえ英語が話せなくても、ビジネス相手への誠意として定期的に対面で話すことで信頼関係を深めることができます。

このような定期的な対面のやりとりは、継続的なビジネス成功の鍵となります。

【失敗3】単なる助成金消費に終わり、長期的なビジネス展開ができない…

現場社員の強い思いから助成金を使用して海外展開に挑んだC社。

現場社員の海外進出への強い思いから、助成金申請を行い念願の海外進出を果たしたのですが、助成金終了後に会社としてどのように海外プロジェクトを自走させていくかの経営目線での判断がないままに進行してしまっていました。

そのため、助成金終了に伴って会社として海外プロジェクトを進行していく予算確保を行うことができず、挙げ句の果てには、経営者はプロジェクトのことを深く理解もできていないといった状況でした。

本来であれば助成金獲得前から会社全体で立てるべきである財務資金繰りの計画ができていなかったことが原因で、結局現地のプロジェクトは尻すぼみに。

せっかく助成金を使用して、商品ローンチ・取引先決定までこぎつけましたが、その後の認知拡大のために地道に続けなくてはならないプロモーションやブランド構築にあたっての予算確保ができていなかったため、海外展開を断念する要因となってしまいました。

【防止策】数年単位先まで発生するタスクを綿密に洗い出し、発生しうるコストから適切な売り上げ計画を作ろう

助成金を得て海外進出を検討する日本企業が非常に多いと思います。

助成金自体はありがたい制度で上手に活用すべきですが、問題なのは、助成金期間が終われば撤退するというケースが多いということです。

短期的な取り組みでその後継続的に売上をあげられるほど海外進出は甘くありません。

必ず助成金が終了したのちに自走していくプランを考える必要があります。数年単位でブランド力の強化、認知拡大、ファン形成などを地道に続けていかないとすぐに廃れます。

特にシンガポールの市場は飽和状態の分野が多く、日本の商品を作っただけで爆発的に売れるということはほぼあり得ません。(どの国もこうなってきているはず)

軽い気持ちで助成金で始めても意味がありません。必ず中長期を見据えて始めないと無駄な苦労で終わります。

 

●タスクを洗い出し、スケジュールをたてよう

どのようなタスクが各フェーズで発生して、どれくらいの工数がかかるのかをリストアップ社内で議論し事前にリストアップしましょう。

それぞれの内容に対して、だいたいどれくらいの工数がかかるのかを概算でまとめてみたので、参考にしてみてください。

  • 市場調査・競合分析: 4~6週間
  • 現地パートナー選定: 3~4週間
  • 法規制の調査: 2~3週間
  • 現地法人設立手続き: 4~6週間
  • オフィス・店舗の選定と契約: 6~8週間
  • 設備・インフラの整備: 8~10週間
  • 採用・現地スタッフのトレーニング: 6~8週間
  • マーケティングおよびプロモーション活動: 継続的(毎月)
  • オペレーション管理: 継続的(毎日)
  • 物流およびサプライチェーン管理: 継続的(毎週)
  • 顧客サポートとフィードバック収集: 継続的(毎日)
  • 新規市場への拡大調査: 4~6週間
  • 新店舗・新拠点の設立: 8~12週間
  • 継続的な改善と最適化: 継続的(毎月)

上記に記載しているタスクはほんの一部になりますが、それでもこれだけのことを想定していく必要があります。

各フェーズにおいて数年先まで必要なタスクを洗い出した上で、まず考えなければならないのがそれぞれのタスクに掛かるコストです。

特に海外など新しい市場における各工程のコストの予測を立てるのは現地にいなければ困難かと思います。

ただそれぞれのフェーズにおけるプロフェッショナルは現地に必ずいるので、まずは問い合わせをしてみて、概算を出すことをおすすめします。

コストを出した後は、どう資金調達をするのか?助成金はどのフェーズに当てていくのが良いのかを検討し、中長期目線で自走していけるプランを立てていきましょう。

検討すべきタスクの多さや予想以上にコストがかかってしまいそうなど、改めて工程の洗い出しをしていくと「海外進出本当にできるかな?」などと不安に思われるかもしれません。

ですが、事前に現地パートナーの協力も交えながら資金調達のプランをしっかりと立てていれば、よりスムーズに海外進出を進めていくけるので、ぜひあきらめずに事前準備に臨んでください。

【失敗4】ローカルには売れず、現地日本人向けの小さな売上で終わってしまう

数年前よりシンガポールの日系小売店にて、生活雑貨商品の販売を行っているD社。

シンガポール進出して数年経っていますが、なかなか売り上げが伸びていない状況です。

販売している小売店はシンガポール国内に数店舗しかなく、さらには日系小売店であることから日本人駐在員や日本好きの人を中心とした客層で、本来ターゲットとしているローカル層にリーチできていません。

またパッケージデザインも日本感を押し出そうと和風のイラストや漢字を使用するなどマーケット向けにリブランディングを行ったつもりが、逆に商品特徴が伝わりづらい見た目となってしまい商品そのものの良さが上手く伝わっていません。

そもそも生活雑貨市場も飽和状態で、世界中から魅力的な商品が多数群雄割拠しているという特徴もあります。

このように市場におけるターゲットインサイトをしっかりと深ぼった上で商品ローンチできなかったことによって販売チャネルの選定ミスおよび適切なブランディングができておらず、本来獲得したいローカル層の売り上げがほとんど確保ができなかったと考えられます。

【防止策】生のデータをとにかく仕入れよう

市場に関する詳細情報やターゲットの購入行動の理解は、国内でのデスク調査のみで浮き彫りにするのは非常に困難です。

また国内での予備調査を経て立てた仮説を元に数日間渡航し、自分たちで市場視察や流通経路調査、販売価格調査等の現地調査をしっかりと行ったとしても、やはり現地で長年生活していて気が付く潜在的なリスクやチャンスまで調査することは難しいです。

現地市場における知見を蓄えた現地パートナーを含め調査・視察を実施することで、マーケット目線で自社製品の市場競争力の適切な評価を把握することができ、市場での位置付けやブランド戦略を立てていくことができます。

弊社では、下記のような調査を事前に行うことをお勧めしております。

 

●デプス調査、グループインタビュー、家庭訪問で直接ターゲットと話そう

ターゲットインサイトを理解するために、デプス調査、グループインタビュー、家庭訪問などを活用して、ターゲットペルソナを徹底的に分析することが重要です。

デプス調査では、個々の顧客と面談し、その人物の背景、ニーズ、行動パターンを理解します。たとえば、ターゲット顧客の一人一人に対して、30分から1時間のインタビューを行い、日常生活での商品使用の詳細を掘り下げます。

また、グループインタビューを通じて、顧客の意見や価値観をグループダイナミクスの中で理解し、フォーカスグループを開催して製品の使い心地や改善点について議論します。

さらに、家庭訪問を通じて、顧客がどのように製品を使用し、どんな問題に直面しているかを実際の生活空間で観察し、フィードバックを得ます。

これらのアクションを組み合わせることで、ターゲットペルソナの深い理解を得ることができ、製品やサービスの改善点を特定し、効果的なマーケティング戦略や製品開発の方針を立てる基盤となります。

 

●現地でのリアルな販売・流通チャネルを見つけよう

競合商品がどこでどのように販売されているのか、マーケット相場はいくらくらいなのか、どのような人がどのようなエリアで買い物をするのかなど社内で事業に関わっていない人にも説明できるレベルで市場を理解しましょう。

たとえば、弊社では市場調査の際に必ず現地の小売店などに足を運び、各販売チャネルでの競合商品の市場シェアと価格相場を調査し、比較します。

具体的には、競合Aは大手小売店でシェアが高く、商品価格は平均して1,500円、競合BはECでのシェアが増加しており、価格は1,800円など。

その上で、ターゲット顧客がどのようなチャネルを好むのか、購買頻度や購買意欲はどれくらいなのかなど購買のパターンをしっかりと分析していく必要があります。

実際に足を運んで現地調査をすることによって、競合状況や市場のニーズを詳細に把握し、事業計画やマーケティング戦略を最適化するための洞察を得ることができます。

これにより、社内の関係者に対してもわかりやすく市場の状況を説明し、事業の成長を推進するための基盤を構築できます。

 

●テストマーケティングで購入者の本音を収集しよう

テストマーケティングを実施することは、商品のローンチを前にして重要なステップです。この段階では、上記の調査結果を基にして、実際の市場での反応を確認することが目的です。

具体的には、大手小売店内でのポップアップイベントや試供品配布を通じて、消費者が商品を手に取り、その反応を直接収集します。

このテストマーケティングでは、消費者の生の声を聞くことができます。どのような点が好評で、どの点が改善が必要かを把握し、商品の小売価格や販売チャネルの設定を再検討する良い機会です。

たとえば、実際の購入者と直接対話をすることで、価格設定に関するフィードバックや、競合商品との差別化戦略についての洞察を得ることができます。

テストマーケティングの結果を収集した後は、それを分析し、製品の調整とマーケティング戦略の再評価を行います。

これにより、実際のローンチに向けて最適な戦略を策定し、市場での成功を見込むための準備を整えることができます。

 

●パッケージデザインにこだわろう

商品の第一印象を決めるパッケージデザインなどブランドの世界観の検討は非常に大事です。

競合の類似商品がどのようなコピーで、どのようなデザインで展開しているのか、現地の人々はどのようなデザインに興味を示すのかなどを汲み取ったブランディングができているかは売り上げに大きく影響します。

さらに、日本の商品であることを強調するために漢字のみを使用したり、侍や富士山といった日本的なモチーフを取り入れたパッケージデザインを展開している例がありますが、これらは単独で商品の本質的な価値を伝えることはできません。

シンガポールの消費者は日本製であるだけで商品を選ぶことは少なく、商品本来の独自の価値提案を明確に伝えるブランディングが重要です。

消費者のニーズや市場のトレンドを考慮に入れ、地域に適したブランドメッセージを設計することで、競合との差別化を図り、消費者に訴求力のあるブランドを構築することができます。

さいごに

今後海外展開を検討されている方は是非上記のような失敗事例を反面教師にされてみてください。

今回は失敗にフォーカスを当てた記事となっていますが、実際には熱意を持って地道に継続させ続け事業をどんどん拡大されている企業も多くあります。

いくつか弊社が提案させていただいている解決策を取り上げさせていただきましたが、こちらに記載していること以上にたくさんの検討項目が実際にはあります。

現地にいるからこそわかる視点も多く提供できるかと思いますので、海外展開を検討された際はまずは相談レベルでも良いので是非お気軽にお声がけください。