たった1回の県産品PRで数多くの成果をあげた理由|長崎県の海外販路開拓事例

レセプションで実施された認証式の様子。
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元々長崎県産の農作物をシンガポールに輸出していた長崎県。更なる市場拡大を目指し、重点市場だったシンガポールでのB2B・B2C向けのプロモーションを実施しました。

プロモーションの成果は顕著で、イベント会場のレストランシェフが全面バックアップ体制で長崎のPRに協力してくれたり、PR対象の食品のみならずイベントで使用していた県産品の器まで取り扱いを検討する企業も現れました。

このような成果の背後には長崎県の「熱意」が大きく影響しています。この記事では、この熱意が具体的にどんなもので、どうシンガポールのビジネスパートナーに伝わり成果につながったのかを紹介します。

シンガポール含め海外でのPR活動を検討中の方々にとって、長崎県の取り組みは大いに参考になるはずです。ぜひ参考にして、効果的なプロモーション戦略を立ててください。

長崎県産農産物(いちご・みかん・牛肉)の魅力をシンガポールで広く伝えるためのイベント開催やPRを弊社がご支援させていただきました。

本事業で実施した4つの取り組みの実施概要と成果

まずは実施内容の概要をご紹介します。本事業で取り組んだ内容は以下の4つです。

  1. 【事業者・メディア向け】長崎県の食材を堪能できる「レセプション」の開催
  2. 【一般向け】「Don Don Donki」全16店舗での「長崎いちごフェア」の実施
  3. 【一般向け】Isetan Serangoon Central内での「長崎フルーツフェア」の実施
  4. シンガポールのSNSインフルエンサーを起用した長崎のPR動画制作

【事業者・メディア向け】長崎県の食材を堪能できる「レセプション」の開催

レセプションで実施された認証式と長崎県のプレゼンテーションの様子。

レセプションで実施された認証式と長崎県のプレゼンテーションの様子。

「レセプション」では、農産物や和牛を取り扱う卸業者の方やインフルエンサー、メディアをご招待し、開催時期となった冬の旬の長崎県産の食材を使って「スペシャルメニュー」をご提供しました。

参加していた卸業者から「うちで長崎県産品プロモーションを実施しないか?」という打診をいただいたり、イベントで使用していた長崎の伝統工芸品である波佐見焼を「県産の農産物とあわせて取り扱いを検討したい」という事業者もいました。

新規でレストランと長崎県の農家との取引が新たに成約できた事例もあり、1度のPRイベントとしては類を見ないほどの成果を生むことができました。

 

◼️会場:
La D’Oro(日系イタリアンレストラン)

◼️対象:
農産物や和牛を取り扱う卸業者、インフルエンサー、メディア

◼️招待者数:25名

◼️シェフ考案の「スペシャルメニュー」おしながき
【1品目】Nagasaki Madai(長崎マダイ)
【2品目】Nagasaki Gotou Sweet Potato Gnocchi(長崎五島いものニョッキ)
【3品目】Nagasaki Hiramasa Cartoccio(長崎ヒラマサの包み焼き)
【4品目】Nagasaki Wagyu A5 Tenderloin(長崎和牛 A5 テンダーロイン)
【5品目】Nagasaki Strawberry Valiation(長崎いちごのデザート)
【6品目】Kogashi Wasanbon Castela(小菓子 和三盆カステラ)

◼️メディア掲載事例:

【一般向け】「Don Don Donki」全16店舗での「長崎いちごフェア」の実施

「Don Don Donki」全16店舗での「長崎いちごフェア」の様子

「Don Don Donki」全16店舗での「長崎いちごフェア」の様子

シンガポールで大人気のスーパーマーケット「Don Don Donki」とのコラボレーションで、シンガポール国内の全16店舗で「長崎いちごフェア」を実施。

試食の効果もあって開催期間中多くの方に手に取っていただき、あっという間にその日の数量が品切れとなる店舗があったほど大盛況となりました。

 

◼️店舗数:
シンガポール国内にある全16店舗の「Don Don Donki」

◼️期間:
1月18日〜28日の11日間(そのうちの3店舗では3日間で試食提供を実施)

◼️販売:長崎県産いちご

◼️実施内容:
Orchard Central店での購入者アンケート、店頭販売、試食販売

【一般向け】Isetan Serangoon Central内での「長崎フルーツフェア」の実施

Isetan Serangoon Central内での「長崎フルーツフェア」の様子

Isetan Serangoon Central内での「長崎フルーツフェア」の様子

一般顧客層向けにIsetan Serangoon Centralにある「Fruits Cafe TOKIO」にて「長崎フルーツフェア」を実施。

多くの現地生活者が足を止め、イベント開始後から約1時間で100名近くの方にご来場いただきました。

会場となった店舗の売り上げは通常の約3倍を記録し、長崎県産の新鮮な果物の需要が顕著にみられました。

◼️会場:
Fruits Cafe TOKIO(Isetan Serangoon Central内)

◼️期間:1/20~28の9日間
◼️販売:長崎県産みかん、いちご

◼️実施内容:
県知事自らによるセールス・オープニングスピーチ、先着80名様にみかん無料配布

※大石知事は通訳を介さず、ご自身で英語で長崎のフルーツについてプレゼンテーションを実施。

シンガポールのSNSインフルエンサーを起用した長崎のPR動画制作

シンガポールのSNSインフルエンサーを起用した長崎のPR動画制作の様子シンガポールのSNSインフルエンサーを起用した長崎のPR動画制作の様子

シンガポールで大人気の「食」のコンテンツクリエーター Lennard Yeong氏を長崎に招聘し、長崎県のいちご・みかん農家や、主要観光地(雲仙、夜景で有名な稲佐山、陶器の町・波佐見町など)を訪問したPR動画を作成。

動画はLennard氏のSNSで一部投稿され、滞在中のストーリーズシェアなども含めた総閲覧数は公開後から約1ヶ月で20万件超えを記録しました。

長崎県の農家訪問では、いちごやみかんをその場で摘んで食べることができ、新鮮な甘みにLennard氏自身が大変感動されていました。

シンガポールではそのような経験ができないため、動画を見たファンからも様々なコメントが寄せられました。

長崎県の担当者は「今までは国内での動画作成が多かったが、今回は海外市場向けのため、映像の切り取り方や編集の仕方なども、今まで作成したものとは違うスタイルの目を引く動画となった」と、訪日コンテンツならではの知見を得ることができたご様子でした。

 

◼️内容:
長崎県のいちご・みかん農家の訪問、主要観光地(雲仙、夜景で有名な稲佐山、陶器の町・波佐見町など)

◼️Lennard氏のコメント:
実際に訪問したことにより、丁寧な栽培や味の特徴であることや、どれほどの思いを持ってつくっているのか、栽培や選定・工場での出荷の様子が見れて貴重な体験だった。

◼️作成した動画:
https://www.instagram.com/lennardy/reel/C14Kc6PSdl6/
(起用したインフルエンサーLennard氏のInstagramより一部視聴可能)

◼️Lennard氏のSNSを見たファンからのコメント:

Lennard氏のSNSを見たファンからのコメント

成果を上げられた理由は「熱意」の伝播

初の試みが多く不安でも、圧倒的な熱意があった

元々長崎県は農産物をシンガポールに輸出しており、今回の事業で対象となっているイチゴ・みかん・長崎和牛はすでに販路がある状態でした。

しかしながら、長崎県として自信がある農産物で既存取引があり市場のニーズがあるはずなのに、輸出が微増のまま推移していたため、販路開拓の重点国としてもっと力を入れたいと検討されていました。

「九州農政局:九州の九州の主な農林水産物・食品の輸出品目と輸出先マップ」をもとに弊社作成した表【出典元】「九州農政局:九州の九州の主な農林水産物・食品の輸出品目と輸出先マップ」をもとに弊社作成

そこで本事業でのB2B・B2CへのPR事業を実施。

結果として類稀な成果を生んだものの、当初は長崎県としてシンガポールでのSNSを活用した事業は初めての取り組みで、担当者もSNSにはあまり詳しくなかったことから不安もあったと伺いました。

ですが、新取引の成立や現地事業者の全面協力を得るなどの成果に結びついた圧倒的な理由が長崎県にはありました。

それは、本事業で確実に成果を出すために、実際にシンガポールにきて本事業に向けて関係者の関係性の構築や、市場視察のために、積極的に密なコミュニケーションを図って市場の理解に努めていた「熱意」があったことです。

なぜなら、日本の素晴らしい食材がすでに手に入りやすい環境で市場が飽和状態にあるシンガポールにおいて、取引先を増やせるかどうかは相手に「どうしてもあなたと取引がしたいんだ!」「協力して欲しいんだ!」という熱意が伝わらないと、販路開拓は難しいからです。

担当するシェフが心動かされるほどの熱意が伝わった

本事業の場合は、担当者の方をはじめ長崎県が一団となって現地に積極的にコミュニケーションを図り、市場を理解しようと努めていらっしゃった様子が、様々な関係者に伝わったことが成果に結びつきました。

たとえば事業が始まる3ヶ月前に、弊社同行の上、卸業者やイベントを予定する小売店やレストランなどの関係者を打ち合わせと挨拶を兼ねて訪問し、事業概要を直接改めて説明したことがありました。

実際に「レセプション」の会場となったレストランでは、すでに取り扱いが決まっている長崎和牛以外にも「長崎県産の農産物を利用してもらいたい」という希望を打ち合わせで伝えたこともありました。

また、現地の協力者への訪問も1度で終わらせず、その後何度も訪問し、シェフとの関係性を構築して、定期的に長崎県の農産物の良さを味わってもらっていました。

その際には、シェフがメニュー開発しやすいようにすぐにサンプルを手配するなどの配慮を怠らず、結果的にサンプルで使用したものも気に入っていただき、結果的には「本事業とは別でも取り扱いを開始したい」という問い合わせがあったほどでした。

また、当初は長崎和牛だけを扱う予定だったところが、すべてのコースで長崎県産の農産物を利用する「スペシャルメニュー」を考案してもらうこともできました。

担当したシェフは

食材を利用してほしいとアプローチをしてくるところはたくさんあるが、現地まで来て話をしにくるところはあまりない。

事前に食品サンプルを送ってくれて、品質を確認させてくれた。

食材の品質が予想以上に高かったので、素材の味を活かしたメニューの開発に気合いが入った。

と、長崎県の熱意に心が打たれたと話していました。

【参考】レセプションで実施された認証式の様子【参考】レセプションで実施された認証式の様子。左から長崎県知事、会場のシェフ、長崎県議会議長。

熱意を成果に結びつける秘訣は「協力体制」と「現地を熟知するパートナー」

担当の方と改めて成果が出た秘訣について詳しく伺ったところ、以下の3つのポイントをお聞かせいただくことができました。

(1)熱意を共有するチームとして一丸となっていたこと

担当者個人だけでなく、担当の課全体が一丸となって「シンガポールでのプロモーションを良いものにしよう」という思いがあったとのこと。

「何かあったらサポートするから」という心強い体制が組まれていたことが、のびのびと積極的に現地での活動することができた背景にありました。

(2)県内の関係事業者からの協力体制が強固にあったこと

シンガポールにある長崎県人会の会長や、波佐見焼を手掛ける事業者、県内の酒造メーカーの方など、行政側のみではなく地域事業者の積極的な協力体制があってこそ実現できた取り組みでした。

「長崎の魅力が伝わるのであれば」というご厚意で無料でサンプルを提供いただいたこともあり、なんとか形にしたいという思いが一層強まりました。

また、いちごやみかんなどを育てる農家の方々が「自分たちの作った美味しい果物を海外に届けたい」という思いを持ち、行政の働きかけに対して協力体制をもっていただけていたことも非常に後押しになったとのこと。

官民連携して思いの面でも行動の面でも協働できていたことが成果に大きく結びつきました。

(3)現地で迅速にサポートできるパートナー企業の存在

現地の市場に精通している弊社の存在があったことで、安心して任せることができたとのことでした。

特に、商材によっては長崎県と現地の卸業者・レストランなどの事業者の間にいくつもの事業所が入らざるを得ないケースがあり、コミュニケーションが円滑に行えない分、迅速に動けないという課題を感じられていました。

弊社を通じて、現地の卸業者、レストラン、一般顧客、メディア関係者など、様々な関係者と一気に連携が取れ、スムーズに意向を伝えて実行できたことに安心感があったとのことでした。

 

さいごに(県産品PRは心構えが肝心)

以上、長崎県産品のPR事業についてのご紹介でした。

日本の農作物の輸出拡大に関しては、日本政府が国をあげて重点品目を提示していることから、弊社にもお問い合わせが実際に寄せられることも多々あります。

ですが、シンガポール市場は飽和状態で、すでに素晴らしい日本の商品が数多く日常的に購入できるような状況が整っています。

そのような中で輸出拡大を目指すには、今回長崎県の皆様が実行されていたように、熱意を持って直接「現地の方に伝えたい」という積極的なコミュニケーションを図ることや、現地を理解しようという姿勢が必要不可欠になります。

なぜなら、ただ単に日本産のものを紹介するだけでは、他にも様々な魅力的な商品があるので、現地の事業者に相手にされないことが多いからです。

以下の記事では、海外販路開拓を目指す企業が、具体的にどのようなことを現地に行く前や現地滞在中に実施すべきなのか、詳しくまとめているのでぜひ参考にして下さい。

海外進出の目的をここまではっきりさせないと90%失敗で終わります

シンガポールのお店の中の様子

本事業での取り組みを機に、長崎県の県産品の魅力がますますシンガポール市場を皮切りに世界中に広がっていくことを心から願っています。