海外進出の目的をここまではっきりさせないと90%失敗で終わります
海外進出を本気で考え始めた方々へ。
その国になぜ進出するのか目的ははっきりしていますか?
弊社は主にシンガポール進出をお手伝いしており、ご相談にいらっしゃる企業様にシンガポール進出の目的を最初に必ずヒアリングしています。
よくある回答が「富裕層がいるからシンガポールに進出したい」「日本の商品が流通しているから進出したい」といったふわっとしたもの。
日本ではシンガポールのそういった面ばかりが取り上げられているので仕方がないことかもしれませんが、正直言ってもっともっと深いレベルで考えられないと進出は失敗に終わります。
海外進出は甘くありません。大きな損失を出してほしくないので、時には企業様に「やめた方がいいですよ」と正直にお伝えすることもあります。
なぜ進出するのか明確な目的を持てない理由は、リサーチ不足にあると考えています。
海外進出に失敗したくないのなら、最初の検討段階で現地のリアルな情報収集は必ず行ってください。
本当にニーズがありそうか、勝機はあるのか、ある程度見えていない状態でスタートさせるのはリソースが無駄になりかねません。
この記事では、進出検討段階でどこまでどうやってリサーチするのかご紹介していきます。これから海外進出を本気で考える方はぜひ参考にしてみてください。
こんな海外進出目的は失敗する!致命的な2つの落とし穴
安易な目的でシンガポール市場進出を検討して、早い段階で諦めてしまう理由は、大きく分けて2つしかありません。
1:現地のニーズや市場のことを知らないから
2:「誰に届けたいのか?」というターゲットが明確じゃないから
「日本にいるんだから知らなくて当然じゃないか!」と思う方も多いかもしれませんが、例えば東京に進出するとしたときに、事前に最低でも競合の価格帯や出店予定先の立地を調べたり、現地に1回は行くなどはするはずです。
海外市場となると文化も言語も習慣も異なるので、より一層「自分の目で確かめる」作業は必須になります。
にもかかわらず、なぜかこれらをすっ飛ばしてしまう日系企業も少なくありません。
そしてそのような企業は、一旦海外進出しても市場に根付く前に撤退を余儀なくされたり、販路が全く開拓できないで終わってしまうケースもよくあります。
厳しく聞こえるかもしれませんが、現地のことを何も知らないまま、綺麗に言語化された「海外進出の目的」を飾り程度に考えて補助金などを申請し「海外進出を目指す」と言っているようでは、海外市場での継続的な売り上げを達成する企業にはなれません。
これから海外進出を検討されている企業には、安易に考えて先走ってもただコストを生むだけです。
この記事でご紹介する内容をもとに、以下の2つの点について、十分に検討いただけたらと願っています。
1:現地のニーズや市場のこと
2:「誰に届けたいのか?」というターゲット
進出先の市場の事情や、進出先にいる「人」に対して興味を持つこと。検討段階で十分に考えること。
海外進出の目的を明確にする鉄則です。
「行ってみないとわからない」を痛感した、海外進出サポートの事例
具体的な例があった方がわかりやすいと思うので、とある大手美容サロンが進出する市場での「広告プランを作成する」ために、現地調査を実際に弊社で実施させていただいた際の内容をご紹介させていただきます。
シンガポールが舞台ではなく、弊社として知見が全くと言っていいほどなかったトルコ・イスタンブールでの調査でした。
なので「これからシンガポール市場進出したいけど、シンガポールのことが何もわかっていない」という方の参考になったらと願っています。
視察前のデスクリサーチを徹底する
当たり前ですが、事前にイスタンブールの美容業界についてデスクサーチを実施しました。
具体的には以下のような情報を中心に情報収集をしました。
- 商談相手となりそうな事業所のリスト作成
- メディアで注目を集めている現地の美容サロン
- 美容関連の最新トレンド
以下の記事ではデスクリサーチに関する具体的な手法について詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
海外の競合を日本から調査する限界|現地に行かないとわからないこと
現地の方と時間を過ごして一次情報を片っ端から仕入れる
弊社が現地に赴いて実施したことは、以下の通りです。
- 美容に詳しい通訳つけた
- 街を歩きまくった
- 日本人と全く関わらずに現地で現地の人と過ごす
- 現地ならではのところにどっぷり入ってくる
- 現地の人と交流してみて聞いてうまく行く
特に、現地で「日本人とまったく関わらずに現地で現地の人と過ごす」という点は非常に重要で、ネットリサーチではわからない生の情報をたくさん知ることができます。
本プロジェクトでは、通訳に入ってくれた方が、イスタンブールの美容事情にに詳しい方だったため、調査すべきエリアや人気の美容サロンの紹介、トルコの美容事情などを手厚く現地で支援してもらえたことも、とても重要な援護射撃になりました。
現地で仕入れた情報をもとにさらに深掘りをする
今回の場合においても、実際に現地で調査をしてみると、以下のようなことが判明しました。
- イスタンブールには、子供が18歳になったときに親が脱毛をプレゼントする文化がある
- 美容院で剃毛する文化習慣があるが、永久ではない
- 男性も脱毛に対する意識が高い
現地に行ってこれくらいの情報はある程度の方であればすぐ仕入れられると思いますが、問題はここからです。
現地で仕入れた情報や人脈を頼りに、さらに調査できることを追求して深掘りするところまで、1度の滞在で徹底的に実施します。
弊社では具体的に以下の取り組みを現地に行ってから実施することを決めてやりました。
- 飛び込みでどローカルな床屋へ行って、ヒアリングをする
- どローカルな美容サロンを訪問し、タイアップの可能性を測る
現地の業界にいる方々との直接的な意見交換を踏まえた上で、帰国後には要望として受けていたターゲットを改めて検討し、より明確にしたうえで露出が図れる広告プランを提案するという流れになりました。
クライアントとなる某大手美容サロンは、イスタンブールの事情についてこれほど詳しく熟知しているわけではなかったので、広告プランの設計とあわせて、自分たちが検討していたことや計画にも反映できるような重要な情報が手に入ったことを喜んでくださいました。

シンガポール市場の調査で「自力でやるべき」チェックリスト
ここからは、シンガポール市場に進出をご検討中の「メーカー系商材」「食品商材」を扱う方を想定して、具体的にやるべきことをチェックリストとしてご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
食品系商材の場合
- 日系のスーパーでの調査は絶対に行う。
シンガポールはすでに日系の食材が多く流通しています。
その多くが日系スーパーに必ず卸していると言っても過誤ではないので、どのようなメーカーがすでに日本から進出しているのかは確実にチェックしましょう。
日系のスーパーには「Meidiya」「Isetan」「Don Don Donki」「Fish Mart SAKURAYA」などがあります。
シンガポールにあるスーパーの特徴については以下の記事で詳しくまとめているので、参考にしてみてください。
シンガポールのスーパーマーケットまとめ|価格帯やターゲット層とは
- ローカルスーパーは、エリア別に複数店舗で調査をする。
エリアによって仕入れている品物が異なる場合があるため、駐在員が多いエリアや、どローカルな人が多いエリアなどの地域別に店舗の調査に行きましょう。
例えばシンガポールで有名なローカルスーパー「FairPrice」では、エリアごとにおいてある商品が顕著に変化しています。
インド系の住民が多い「リトルインディア」近辺のエリアにある店舗では、欧米のチーズなどの品揃え悪い傾向にあります。
一方で、欧米系の駐在員が多くいる「ホーランドビレッジ」近辺のエリアにある店舗では、欧米系の食材がたくさん陳列されています。
シンガポールの場合は住民の民族ごとにも食文化がだいぶ異なるので、インド人系の方と、中国人系の方のかごの中身は全く異なります。
食品の場合はエリアごとの陳列棚の違い(仕入れを担当するバイヤーの意図がわかる)や、実際に店舗にいる購入者の購買行動を観察し、チェックしておくことも非常にお勧めです。
【参考】リトルインディア地区にある超巨大インド系スーパー「Mustafa Center」は、シンガポール在住のインド系生活者はほとんどが訪れる場となっています。
- 業務用販売としての可能性を模索する
一般向けではなく飲食業界への販路拡大も可能性があるのかどうか、探るに越したことはありません。
具体的にはシェフやレストランの人に話しかけてどんな食材を求めているのかを聞いてみましょう。
お客さんとしていけば、無視されることはなく、丁寧に答えてくれることが多いので安心してください。
会話の中から有益で最新の情報を得られることが多いので、意外に一般消費者よりも業務用での販売に可能性があることも考えられます。
可能であればサンプル品を用意しておいて、お店で渡して繋がりを作ってしまうのも有効です。
- ウェットマーケット(ローカルな市場)を調査する
普通のスーパー同様に一般消費者も飲食業界関係者も食材調達に来ているケースが多いので、調査対象としては欠かせない場所になります。
実際に「野菜」の購入動向を調査するために、ボランティアとして無償でウェットマーケットで働いたという方にお会いしたこともあります。
接客を通じてローカルの生活者がどのような野菜を買ってるのかわかるので、究極的な実地調査だと感じました。
メーカー系商材の場合
食品ほどエリアごとの大差が見込まれるわけではありませんが、メーカー系商材も基本的には食材と同様の現場リサーチをおすすめします。
- 事前にECのウェブサイトを調べる(価格、メーカー、仕様、レビューなど)
- ベスト電器のような家電量販店に行く
- 売り場に立って、だれがどの品物を取って買ってるかを見る
- どこの国の、どんなブランドが、いくらで売られているか、複数の店舗を調査する
- B2Bでの販路拡大を目指すなら、レストランやカフェに行き、使っている物を調査する
メーカーの場合は特に、事前に競合がどれだけEC販売しているのか、ターゲットが一般消費者なのか業務用なのかでも、提携すべき現地パートナーが大きく異なってきます。
実地調査をしながら組めそうな企業がないか、同時並行で調査していくのもおすすめです。

「それでも海外に活路を見出したい」からが本当のスタート
海外進出の目的を明確にしないまま、仮に運良く海外市場への販路が拓けたとしても、実際に販売してみて「あれ、ウチの商品全然売れない(求められてない)…」ということがあるかもしれません。
むしろ、シンガポール市場の場合はほとんどが飽和状態の市場なので、そのようなケースがほとんどです。
極端に言えば、ほとんどの商品が「もうあるからいらない」と思われていると考えた方がいいかもしれません。
なので、断られたり、販売が思うようにいかないとわかった後に「このあとどうしよう?」と考えられるかどうかが肝心です。
逆に断られた後に「それでもなんとか海外進出したいんだ!」と思えないようであれば、最初から時間もコストもかけて海外進出を検討すること自体おすすめしません。
例えば、日本のこだわりの原料を使って作った「醤油」をシンガポール市場に進出させたい!と考えたとしましょう。
シンガポール市場ではすでに、新鮮な生醤油は500円くらいで買えるため、「高級な醤油」「伝統ある醤油」というだけで売れるわけがない状況です。
このような状況を目の前にしても、「市場は飽和状態かもしれないけれど、この国のこういう人たちにこういうニーズがあるようなので、やってみたい!」というほど思えてないなら、無理に海外進出を進めるよりも、いかに国内市場のπを広げるかを考える方が、はるかにコストはかかりません。
シンプルに「海外にあるニーズに応えよう」という発想で「海外進出」を検討できているか?
そもそも、進出しようとしている海外市場にニーズがあるのか?
このような根本的なこともしっかりと把握できていない中で「とりあえず海外進出しよう」というのはあまりに安易すぎます。
ニーズを考えた時に、現地の人の顔が思い浮かぶだろうか?
そのニーズを持つ現地の人がどんな人か思い浮かばないのであれば、あなたは何を持ってしてニーズを汲み取るのだろうか?
見えない相手にものを売るなんて危険なゲームをやろうとしていないか?
自分の商品に対しても無責任ではないか?
ぜひ胸に手を当てて考えてみてください。
【参考】シンガポールのローカルスーパーでは、すでにこれだけの種類がうどんが販売されています。
現地パートナーに頼りきりは失敗を招く危険信号!
自社で現地に行けない場合は、我々のような現地のパートナーに委託して調査を行ってもらう方法もあります。
ですが、現地パートナーからの情報だったとしても、日本にいながら仕入れることができる情報のみを鵜呑みにして意思決定するのは、大変危険なことです。
なぜなら現地の市場の「どこ」に「どんな」ニーズがあるのか、どんだけ頑張って委託先の会社が目を凝らしたとしても、当事者以上の調査ができるはずがないので、自分で調べず気が全くなく他者に依存しているようでは、成功するはずがないからです。
海外だとトレンドも事情もニーズも、日本とは変わります。
私自身、シンガポールには十年以上住んでいますが、それでも目まぐるしく流行が変わるシンガポール市場のニーズを汲み取るというのには難しさを感じることがあります。
海外市場に進出する際は、東京に進出する以上に丁寧に隅々まで自分の目でみて調査しなければ、成功へ導くニーズの裏付けや、進出の目的を言葉にすることは難しい。簡単にはわからないということです。
では、人任せにせず自力でどのように調査すればいいのか?
難しいとはいえ、海外進出の目的を明確にするためにできる情報収集方法は、案外いくらでもあります。
以下にご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
【参考】シンガポールで大人気のFacebookライブコマース番組を仕切るEddyと実施した「品評会」で議論を交わすバイヤーと事務局
「ものづくり」マインドが、日系企業の海外進出を阻害している?
少し話がずれるかもしれませんが、そもそもなぜ「進出先の海外の生活者を見る」という視点が抜けてしまうのでしょうか?
これには最近「日本はものづくり大国だ」と言われていることに起因しているような気がしています。
「にほんはものづくり」が素晴らしいということは、海外在住歴が長い分、とても痛感するところです。
職人のこだわりや繊細さ、きめ細やかな配慮などは、他国が到底追いつこうと思っても真似できない何かが宿っていると思わざるを得ないし、私自身、海外在住の一日本人としてもとても誇りに思うことでもあります。
むしろそのような背景があったからこそ「日本の良質なコンテンツを海外に届けたい」と思って、シンガポールで起業しました。
ですが、ここで敢えて言いたいことがあります。それは日本の「ものづくり」とは、
- 「自分の作りたい物を作る」ということ?
- 「世の中の欲しい物を作る」ということ?
どっちの意味合いが強いのか、ということです。
長年日本の「ものづくり」を担う企業の海外進出を支援してきた立場からみて、正直にいうとかなり前者に偏っている気がしています。
作り手側に偏っているからこそ、受け取り手という「誰に届けたいか」よりも、自分の商品のことばかりに目がいってる会社が多いということです。
長年職人の「技を磨く」という「ものづくり」に励んできたからこそ、一旦職人から離れて「買い手のニーズ」をもとに商品を作るという発想が、そもそも乏しいのではとさえも感じます。
このことを強く感じるのは、シンガポール市場での販路開拓支援をする際に、日系企業の商品を商業施設の棚に並ばせていただける機会になる時などに多く感じてきました。
具体的には、一旦商品を作り、商業施設の棚に置いてから「売れる・売れない」が検証されるという風潮を感じる時です。
また、海外進出となると「Japan as No.1」の時代を引きずってか「こだわりがつまった日本産の商品なら、簡単に販売棚に置いてもらえる」と勘違いしている方も少なくないようにさえ感じます。
はっきりいって、海外市場こそ「商品棚に置いてもらう」ところまでいくことさえ難しいのが現状です。
なぜなら、他の諸外国の製品との差別化や価格競争などの様々な面で「勝つ」ことができて初めて、商品棚に乗せてもらうことができるからです。
以下の記事では、シンガポール市場に流通する「牛乳」について詳しくまとめているので、気になる方はぜひ参考までにご覧ください。
日本産牛乳の輸出強化をシンガポール市場で実現するには|シェフへの独占インタビュー
世界中の高品質なものが潤沢に手に入るシンガポール市場においては、なおさら競争は激しくなります。
そのようななかで、シンガポール進出を検討されているある会社の経営者の方が、弊社のオフィスにいらした際に、以下のようなことを仰っていました。
「私たちは要らないもの売りにいっているという精神で営業をしている」
「すでにシンガポールにある商品を、自分たちはわざわざ日本から持ってきて売るのだから、もっと謙虚でいなければならない。」
日本の作り手重視な「ものづくり」とは真逆の、現地の生活者視点で海外進出を考えている思想だからこその発言だと感じて、とても感動しました。
市場のニーズを満たす物を提供することで初めてビジネスとして成り立つとするならば、日本の作り手重視な「ものづくり」の思想では海外進出は絶対にうまくいきません。
これだけはこれから海外進出を目指す企業にお伝えしたい、とても重要なポイントです。
【参考】弊社が実施するプロジェクト「RednoW」でご紹介している、マーケット理解を元に販売する「マーケットイン」の図解
さいごに(調査後に意思決定をする)
上記にお伝えしたような現地市場での調査してみると、デスクリサーチでは気がつけなかった様々なことがわかります。
なかには市場進出への困難さを浮き彫りにするような「喜ばしくない情報」もあるかもしれません。
ですが、本文でもご紹介したように「それでも海外市場に進出したいんだ!」と思えた先に、はじめて海外進出の目的や成功への道筋が明確になってくると感じます。
現地の市場のことをきちんと理解できていないないのに、海外進出の目的なんてわかるわけがありません。
海外進出の目的を明確にするには、市場の情報収集を徹底した上で、以下の3つの意思決定パターンがあります。
- 徹底的に自分の足で情報収集し、ローカルにニーズがあるのかを探る。
- 情報収集した結果、自分の商品が市場に求められているかを判断する。
- 求められているなら、進出方法を考える。【A】
- 求められていないなら、
- 海外進出をやめると決める。【B】
- 海外進出をやめないと決め、どうやったら求められるようになるかを考える。【C】
情報収集をきちんと実施した上で「やる」という意思を固める【A】か【C】のパターンまで至れるのであれば、海外進出の目的を明確にすることができるようになると感じています。
同時にこの段階で初めて、海外進出に挑む価値があり、海外進出をおすすめすることができます。
安易な考えで海外進出を考えても、時間と労力を費やすだけで意味がありません。
この記事を通じて、日系企業の海外進出の在り方を改めて考える機会をご提供できていたら大変嬉しいです。






