その海外視察、ムダにしていませんか?成功させるためにやめるべきこと
海外進出の第一歩として欠かせない海外視察。
机上にとどまらず現地に向かおうとしているだけでも素晴らしいですが、私の願いとしては、その海外視察をもっともっと実りあるものにしてほしいんです。
私たちがいるシンガポールにも毎年海外視察にいらっしゃる企業様が多いですが、「持ち帰られるものがもっとあるのに…」ともったいなく感じることが多々あります。
何十回も海外視察に行ければいいのですが、そんなケースは稀ですよね。一度で多くを持ち帰らないといけないはずです。
そこで今回、これから海外視察に向かう方へ、視察の価値を最大化させるための心構えについてお話したいと思います。
大事なのは、「日本で通用したやり方を一切忘れること」です。初歩的な内容に聞こえますが、実は多くの人が忘れがちでとても重要なことです。特に初めて海外視察に臨む方へ知っておいてほしいので、ぜひ参考になるとうれしいです。
「行けば自動的に情報が入ってくる」という考えをやめる
海外への視察が決まったら、まず「現地の人たちがどこに行って、何をしているのか」をよく観察し、情報を収集アンテナを張り巡らす意識で、見たり感じたことに対して敏感になれないと、海外進出は失敗します。
なぜなら、現地に行っただけ・住んでるだけでは、有益な情報は入ってこないから。
ただぼーっと行動していたらなんのきっかけも掴めないのは当たり前のことですが、特に海外進出においては異文化だからと構えずにオープンなマインドでいると、その場で感じる感動や違和感をきっかけに新たな発見があったり、情報をより一層深めたり、商談につながるチャンスが手に入りやすくなります。
海外視察に行く際には以下の2つを意識して取り組んでから挑むとより一層有意義なものになります。
- ゴールを設定する
- 仮説を立てる
ゴール設定をする
視察におけるゴールは何かを予め明確にしておきましょう。
そうすることで視察中により効率よく意識的にゴールを達成するために有益な情報収集をしやすくなるからです。
たとえば、街の観察をするとすれば、ビルの上に掲示されているロゴをみれば、今シンガポール市場でプレゼンスをあげている企業がどこなのか、推測するきっかけになります。
レストランに入っても、隣のテーブルでオーダーされて食べられているものがなにかを観察すれば、マーケティングリサーチのきっかけにつながるかもしれません。
あるいは、行列がある飲食店、スーパーに行ってみて、お店のお客さんが注文しているものや買い物カゴに入れているものを覗くだけで、現地の生活スタイルの実態が見えてきます。実際に、私はスーパーで会計で並んでいるとき、いろんな人のカゴの中身を見るのが大好きです。
なかには街歩きやスーパーのカゴを覗いたりしても「自分の仕事には関係ない」と思うかもしれません。
ですが、これはシンガポールに限らず、日本とはまったく異なる海外市場向けにビジネスをする場合、現地の生活環境や他業界の動向は、海外進出を成功させる「最低限の基礎情報」として知っていなければ話になりません。
街中で目を光らせる間にインターネットではわからない新しい発見があるかもしれないし、仕事で現地の方とのコミュニケーションが円滑になるネタが得られることもあります。

シンガポールにあるWater Marketの様子。接客している人とのコミュニケーションが取れるため様々な情報が得やすい。
仮説を立てる
最低限、現地へ渡る前に「こうなのではないか?」という仮説を立ててから現地を訪問し、検証してみる姿勢で出張や海外視察に臨みましょう。
仮説がない状態でいくと、結局現地で情報を集めても何が有益でそうでないのか、また足りない情報は何なのかなどが現場で判断できなくなるからです。
海外市場開拓に有意義な情報を得るには、先入観を持たずに街中でものごとを観察したり、現地に住んでいる生活者(ローカル・日本人)から直接話を聞くと、デスクリサーチではわからなかったことまで理解することができます。
実際、弊社も現地のパートナーやサプライヤーとのやりとりが円滑になるように、シンガポール特有の英語「シングリッシュ」を学び、使うことがあります。シンガポール独自の行事の話、兵役の話など、ちょっとしたローカルネタを話すだけで、親近感が湧いて信頼してもらいやすくなり、結果的にこれまで知らなかった新しい情報を手にいれることができたり、仕事がやりやすくなったりするのです。
どのように事前準備をし、現地で情報収集をすべきかは、具体的に以下の記事にまとめてるのでぜひ参考にしてみてください。
海外進出の目的をここまではっきりさせないと90%失敗で終わります
「文化が違うから」と思考停止するのをやめる
日本との違いを感じたら「なぜそれが違うのか」を徹底的に調査しましょう。
なぜなら「違う理由」を深掘りすると、現地市場に関して得られる情報の質も量も増えていくから。
環境、文化、人口比率、政策、宗教…。いろんな理由が見えてくるはずなのに、深掘りせずにいてはそれ以上の発見は得られないので、海外販路開拓に有益な情報を見つけるチャンスを逃します。
たとえば、日本とシンガポールでは「広告」を取り巻く環境にかなりの違いがあります。シンガポールでは基本的にビルボード看板が禁止。交通広告も日本ほど充実しておらず、その分広告費の相場も高額です。
なぜ違うのか?
その理由は、いくつか考えられ得そうですが、例えば「シンガポールでは市内の走る車の台数が制限されていたり、車の購入費が日本より格段に高い(購入した車と同額規模の許可証の購入が必要)ため、公共交通機関を使う人が圧倒的に多いから広告費が高い」という仮説が考えられそうです。
これだけでも十分、シンガポール市場やお国柄への理解度を深めることができます。

シンガポール駅構内のデジタルサイネージの様子。吊り革広告などは基本的になく、駅構内の広告も限られています。
徹底的に調べる、そこにチャンスがあるかも
日本には「一汁三菜」という食文化があり、それにあわせて食器も様々なサイズやデザインがあります。一方でシンガポールにはそういった食習慣はなく、おかずは大皿にのせるのが主流で、それを白飯椀に乗せながらみんなで食べます。
このように食習慣は流通する生活雑貨のラインナップに影響を与えているので、シンガポール市場に生活雑貨を輸出したいという日本企業の方々は、現地の生活者のライフスタイルにあう提案ができるかが重要なポイントになります。
実際、弊社でご支援させていただいた事例でも、クライアント様に現地の文化に合わせて商品選定から実施し直していただいたことがありました。
また、別のクライアント様は、進出前に何度も出張を重ね、競合調査や売り場調査などのフィールド調査、政府機関との面談を実施し、海外進出で勝負ができる商品や戦略を十分検討した結果、自社単独での進出ではなく、現地のローカル会社との業務提携を検討することになりました。
このように、現地市場と日本の状況の間にある「違い」を切り口に現地市場の特徴を深めていくと、海外販路開拓に役立つ有意義な情報やチャンスが得られる可能性が広がります。違いをただ単に「違うんだ」で終わらせず、ぜひ現地市場への理解を深めるきっかけにしてください。

シンガポール料理の例。大皿に乗った料理をシェアすることが多い。
相手が察してくれると期待するのをやめる
直接会って話しているから「私の言っていることわかってくれるよね…」というのは、基本的に海外市場ではどこの国でも通用しないということを肝に銘じて、現地の人と対話しましょう。
なぜなら日本語は主語がなくても伝わる言語で、英語は主語がないと伝わらないという真逆の特徴があるので、日本語で会話している時以上に主語と述語を明確に話さないと伝わりません。
明確にはっきりと対話しない限り、海外販路開拓を現実的に契約交渉し、実績として結果を出すことは難しいので、言わなくても「相手が察してくれる」という甘い考えは海外市場では捨ててください。
たとえば、日本語で言う「空気を読む」ということはまったく理解されないと言っていいでしょう。最新の注意を払ってでも細かく言葉で伝えないと理解しあえないと考えて、基本に忠実に「5W1H」をきちんと構成して英語で丁寧に伝えることは思っている以上に重要です。
商談の結果を左右するといっても過言じゃないので、現地の卸業者やパートナー企業との商談を控える場合は確実に明確にした上で臨みましょう。
このことをよく熟知されている弊社のクライアントのトップの方がシンガポールへいらした際に、
自分たちは日本では知名度があってもシンガポールではまったく無名。
私たちの商品がなくても困らない人たちとシンガポールで商談をしてもらえるのだから、初心に戻り、謙虚に丁寧に相手に接している。
とお話しされていて、素晴らしい心構えだなと思いました。
日本人同士、日本国内でならわかってくれるという「当たり前」は海外にはありません。このことをよく理解した上で、会話をするように気をつけてみてください。
シンガポール最大級の琉球新報「NATAS」の会場。このような催事出展や視察の際にも必ず明確に言いたいこと・聞きたいことが準備できていないと、有益な情報収集はできません。
日本人だけで考えるのをやめる
慣れない海外市場でのビジネスにおいて「日本人のパートナーと組んだ方が安心」と思う気持ちはわかります。ですが、ビジネスパートナーが「日本人であること」に固執するのは大変危険です。
なぜなら、現地の事情を一番よくわかっていたり、現地で広い人脈を持っているのは、現地のローカルの方々であることが多いからです。現地のパートナー企業との連携も考えた上で、ベストな選択をする方が海外販路開拓を成功させる可能性が高まります。最初から日本人だけでやるつもりで市場開拓を考えるのはやめましょう。
実際に私自身、シンガポールに住んでいる世界各国の起業家が集まる団体に所属しているのですが、やはりローカルの方が持っている情報やリソースの幅広いことには毎回驚かされていて、頼りにさせてもらっています。
日本人の事業者でもいいのですが、現地との関わりを十分に持っている企業でなければ、現地市場に精通した精度の高い情報収集ができないので、販路開拓を実際に進めようとしても選択肢が増えません。
弊社の取り組みにも、日本人ではない現地のパートナー企業とタッグを組み行っている「Sake Matsuri」事業があり、シンガポール市場を熟知する現地のパートナー企業とともに日本企業の販路開拓をご支援しています。

「Sake Matsuri」の来場者の様子
日本人ではない海外の取引先と組むのは不安だとか、騙されそうで怖いというような恐怖感を持っている方は、根拠のない周りの噂や情報だけに惑わされず、相手に関する情報収集をしたり、自分の目で確かめるなど判断材料を詰めて的確な判断をしましょう。
取引先について以下の情報があるかはチェックしておくと、不安材料が減らせたり、判断しやすくなるはずです。
- HPはあるか
- HPに十分な情報があるか?実績などが記載されているか?
- 周りにその会社を知っている人がいれば聞いてみる
- 現地で出会った人にその会社のことを知っているか聞いてみる(評判などが聞ける可能性があるため)
もちろん、やり取りしている中で、返事がとても遅いや、隠し事をしている感じがするなど、不透明なことが多く違和感を感じたら注意です。
ですが、現地のルールを熟知しているローカルを味方につけられないとビジネスはうまくいかないので、パートナー企業を選ぶ際は「日本人がいる会社」に固執せずベストな選択が選び取ることで、海外販路開拓を成功させる可能性を高めましょう。
さいごに(当たり前を捨てて充実した滞在にする)
海外出張や視察で海外販路開拓を模索する際に重要な「やめるべきこと」について、弊社では15年以上シンガポール市場で日系企業の海外進出を支援する中で感じていることをご紹介させていただきました。
海外での商談会の場で「何を聞くか」「現地のバイヤーと何を話すか」「どんな準備をするか」といったハウツーよりも、今回ご紹介したような考え方(マインド)の有無の方が正直結果を左右するのではないかとさえ感じます。
弊社は海外進出をサポートする立場として、海外市場と日本市場の「違い」を楽しみながら経験値に変えていける日本のビジネスパーソンを増やしていけたらと願っています。
どうしたら海外視察や海外視察がより充実したものになるのか、具体的にご相談があるという方はぜひお気軽に以下のフォームからご連絡ください。

