シンガポールの富裕層旅行会社の約9割と接点を構築。伊勢志摩・高付加価値インバウンド誘致
伊勢神宮、海女文化、伊勢志摩国立公園。豊かな観光資源を持ちながら、シンガポールの旅行業界での認知度はまだまだ低い。そんな状態から1年で、現地ラグジュアリー旅行会社の約9割と接点を構築し、メディア露出、そして実際の送客へ。Vivid Creationsが現地レップ(代理拠点)として取り組んだ、伊勢志摩の高付加価値インバウンド誘致事業をご紹介します。
プロジェクト概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| クライアント名 | 公益社団法人 伊勢志摩観光コンベンション機構 |
| 事業背景 | 観光庁「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり」モデル観光地(全国14地域、2023年3月選定)の一つとして、伊勢志摩地域が推進する高付加価値旅行者誘致事業 |
| Vivid Creationsの役割 | シンガポール市場における現地レップ事業(旅行会社セールス、ネットワーキング構築、情報発信、メディアPR、ファムトリップ運営) |
| 期間 | 2025年度〜(2026年度も継続中) |
伊勢志摩地域では、単価の高い旅行者を誘致し地域経済への貢献を高める「高付加価値化」を軸に、コンテンツ造成・受け入れ体制整備・ガイド育成など複数の事業が総合的に進められています。重点ターゲットは、価格やブランドそのものより「特別な体験」を求めるモダンラグジュアリー層。欧米(米・英・仏)に加え、リピーター率が高く今後の成長が見込まれるアジアの重点市場としてシンガポールが位置づけられ、現地パートナーとしてVivid Creationsが事業を担っています。
課題:素晴らしい観光地なのに、シンガポールでは認知度が低い伊勢志摩
事業開始にあたっての事前リサーチで見えてきたのは、シンガポール市場における伊勢志摩の認知度の低さでした。
- 訪問率の低さ:シンガポール人旅行者の三重県訪問率は約0.9%(JNTO調べ)。東京・大阪はもちろん、他の地方デスティネーションと比べても低い水準
- メディア露出の偏り:近年の現地メディア記事はほぼ皆無。あっても世界的に有名なラグジュアリーリゾート「アマネム」に集中し、それ以外の伊勢志摩の魅力が伝わっていない
- 旅行会社の認知不足:現地旅行会社への事前調査では、伊勢志摩を「よく理解している」担当者はゼロ。富裕層向け旅行会社ですら「アマネム以外の宿を知らない」「現地で旅程を組めるパートナーがいない」という状態で、顧客に伊勢志摩を提案できない構造的な課題がありました
ラグジュアリー対応可能なホテルや観光施設が揃っているにもかかわらず、旅行商品を「売る側」に情報が届いていない。まずは旅行のプロである旅行会社に伊勢志摩を知ってもらうことから。これが初年度の方針となりました。
実施したこと:セールスからPR、イベントまで一気通貫
1. ラグジュアリー特化の旅行会社セールス
Vivid Creationsが保有する100社超の現地旅行会社コンタクトリストから、ラグジュアリー系およびSIT(スペシャル・インタレスト・ツアー)系の会社を選定し、月3社以上のペースで個別セールスを実施。旅行会社が求める情報(ユニークな体験、宿泊施設、モデルコース等)を盛り込んだ50ページ超の営業資料を独自に制作し、提案に活用しました。
セールスの過程で得られた質問やニーズ(DMCの紹介、英語対応ドライバーの手配可否、モデルコース、サイクリングツアーの詳細など)はすべて記録・言語化し、伊勢志摩観光コンベンション機構への報告と次の提案に反映しています。

2. ニュースレター配信
現地旅行会社向けのニュースレターを定期配信。企画・コンテンツ制作・配信・反応レポートまですべてVivid Creationsが担当しました。
3. セールスコール(旅行会社訪問同行)
伊勢志摩からの出張時には、現地旅行会社への訪問に同行し、商談をサポートしました。
4. ネットワーキングイベント
シンガポールのラグジュアリー会員制クラブを会場に、富裕層向け旅行会社を招いたネットワーキングイベントを開催。伊勢志摩で実際に活躍し高付加価値旅行者らをご案内するプロフェッショナルガイドと現役漁師をゲストに迎え、スパークリングワインを片手にしたカジュアルかつラグジュアリーな空気感を演出しました。漁師やガイドなど「本物の担い手」に直接会えるイベントは参加者の反応も高く、その場で「伊勢志摩に行きたい」という声が多数上がりました。

5. 観光セミナー
現地旅行会社向けのオンライン/オフラインセミナーを実施。アジェンダ設計、資料制作、プレゼンテーションまでVivid Creationsが担当し、参加者アンケートで反応と学びを毎回収集しました。
6. ファムトリップ(招請旅行)
セールスやイベントを通じて関心を持った旅行会社・メディアを実際に伊勢志摩へ招請。行程はクライアントとテーマをディスカッションしながら共同で設計し、視察先ごとにアンケートを取得。「ジャーナリストには刺さったが旅行会社の評価は低かった」といったギャップも可視化し、今後の情報発信に活かせるデータとして蓄積しました。
成果:接点ゼロから、送客とメディア露出へ
- 合計31社と新規接点を構築。シンガポールのラグジュアリー系旅行会社の約9割にアプローチが完了
- セールス後、実際にツアーを造成し送客につながった旅行会社が登場
- ファムトリップに参加したジャーナリストの寄稿により、現地有力メディア3媒体に記事掲載(ラグジュアリーメディア、英字新聞、ラグジュアリー旅行誌)
- 旅行会社に対して伊勢志摩の現地DMC(旅行手配会社)の紹介を継続的に実施し、実送客に貢献
- イベント・セミナーのアンケートでは、参加者全員が「今後伊勢志摩を顧客に提案したい」と回答
- 成果が評価され、次年度も継続受託が決定
一方で、アンケートでは「伊勢志摩を知ってはいるが、訪れたことはない」という担当者が依然として半数以上。旅行会社は自分が体験していないデスティネーションを顧客に売ることが難しいため、次年度は「実際に訪れたことのある旅行会社を増やす」ことをテーマに、ファムトリップ・視察の拡充を提案し、事業を継続しています。

本プロジェクトのポイント
1.「紹介でしか開かない扉を開ける」シンガポールの富裕層コミュニティーへ足で入り込む
シンガポールのラグジュアリー旅行業界は、富裕層コミュニティと同じくクローズドな世界です。展示会に出れば会える相手ではなく、紹介と信頼関係を通じてしか入っていけません。Vivid Creationsは現地で築いてきた旅行会社・メディア・会員制クラブとの関係を土台に、100社超のコンタクトリストからラグジュアリー系・SIT系の会社を選び、月3社以上のペースでドアノックを重ねました。接点の約半分は新規開拓によるものです。
2.「資料ではなく本物を連れていく」現地イベントに日本からゲストを呼び寄せる
ラグジュアリーの世界で最後に人を動かすのは、代理店の説明ではなく現地の担い手の生の言葉です。ネットワーキングイベントには伊勢志摩で実際に活躍する漁師とガイドを日本から招き、旅のプロを相手に自らの言葉で伊勢志摩を語ってもらいました。堅くなりがちなB2Bイベントを、会員制クラブを会場にスパークリングワインを片手にしたカジュアルな空気感に設計したのも、この層に合わせた演出です。その場で伊勢志摩に行きたいという声が多数上がりました。
3.「コーヒー1杯から始まる営業」現地ジャーナリストへの提案の場を地道に
メディアPRも関係から始まります。現地ジャーナリストとコーヒーを飲みながら伊勢志摩に興味はないかと切り出し、興味があると返ってきたら、メディアに刺さる旅のテーマを事前に設計し、資料にまとめて提案する。ジャーナリスト側が媒体に持ち込みやすい形まで整えるのがVivid Creationsの仕事です。この積み重ねがファムトリップの招請につながり、現地有力メディア3媒体への記事掲載という結果になりました。
4.「動いているところを見せる」全商談の議事録と学びをクライアントに開示
月次の定例に加え、全商談の議事録を共有し、詳細な成果報告書を作成しました。商談で出た質問やニーズ(DMCの紹介、英語対応ドライバーの手配可否、モデルコースなど)、旅行会社が興味を持ったポイント、イベントやファムトリップのアンケート結果まで、すべて言語化して蓄積しています。しっかり動いているところを見せられる形で報告することが、次年度の提案と継続受託の土台になりました。
5.「日本と現地の両方が分かる」日本の代理店にも、現地の会社にもできない役割
日本の代理店は現地のネットワークとメディアへの土地勘を持ちません。逆に現地の会社は伊勢志摩や日本文化への理解が浅く、クライアントとの日本語でのやり取りもできません。Vivid Creationsはシンガポールに拠点を置く日本人チームとして、現地のラグジュアリー業界に入り込む力と、伊勢志摩の魅力を学び続けて言語化する力の両方を持っています。この立ち位置が、現地レップという役割を成立させています。
担当者(CMO 宮川 元希)コメント

一番の成果は、シンガポールのラグジュアリー旅行コミュニティに対して、コネクションを作りながら伊勢志摩のラグジュアリーコンテンツをきちんと紹介できたことです。地域の側から見ると、ラグジュアリー業界はクローズドでなかなか手が届かない。そこに現地から地道にアプローチし、ラグジュアリー旅行業界で伊勢志摩の認知を高め、さらに送客という結果まで見え始めたことを嬉しく思っています。
伊勢志摩観光コンベンション機構様は、伊勢志摩の魅力の掘り下げからコンセプト・ブランディング作り、旅行者ペルソナの設計、そして観光コンテンツ作りと地元の事業者との連携まで、多岐に渡って取り組まれています。伊勢志摩という素敵なデスティネーションを、弊社はシンガポール現地パートナーとして海外・現地のターゲット層に対して売り込み少しずつ送客に貢献しており、私たちもやりがいを持って事業を推進できました。
こんな地域・団体におすすめ
- 高付加価値・富裕層インバウンドを狙いたいが、海外現地にネットワークがないDMO・自治体
- シンガポール・東南アジア市場での認知拡大とメディア露出を両立させたい観光事業者
- 海外現地向けセールスからPR、イベント、ファムトリップまでを一気通貫で任せられるパートナーを探している方