ホテル・宿泊施設のインバウンド集客は「お金では買えない魅力」が武器になる
訪日インバウンドの集客を目指す宿泊施設は、宿泊施設自体の中身を整備して、より魅力的な宿泊施設にしようとするところがほとんどです。
ですが、訪日観光客の集客に成功している宿は「お金では買えない魅力を上手に施設内で打ち出している」という共通の特徴があります。
お金で買えない魅力とは、その施設がある「場所の魅力が感じられる」ということが重要なポイントのひとつです。
なぜなら、その場所にある歴史的な背景や、何気ない地元のご当地グルメ、独特な食材や調理方法などの「その地域での当たり前」は観光客にとってものすごく特別なもので、魅力的に映るからです。
「その場所にある魅力」を、宿泊施設のセールスポイントとして打ち出しているところは、訪日観光客がわざわざ遠方からでも行きたくなるような場所として大人気になっています。
今回は、訪日インバウンドの業界に10年以上に関わり、日本各地の現場を見てきた私の知見と、海外の旅行会社やインバウンド業界の関係者から直接聞いたお話をもとに、「訪日インバウンド集客に成功している宿泊施設」のなかでも選りすぐりの事例を紹介します。
訪日インバウンドの集客方法に悩む方は、ぜひ参考にしてください。
全国屈指の木彫刻の街で地元の職人に弟子入り気分|富山県南砺市「Bed and Craft」
「Bed and Craft 」は富山県の南西部に位置する、南砺市にある宿泊施設。
白川郷とともに世界遺産に登録されている「五箇山」、越中の小京都と呼ばれ古い街並みが残る「城端」など、それぞれがユニークな特徴を持つエリアです。
そのエリアにある井波という町は、日本遺産にも認定された「木彫刻の町」として有名で、この地に点在する6棟の宿が「Bed and Craft 」。すべて一棟貸しとなっています。
井波には、600年の歴史を誇る「井波別院瑞泉寺」に京都から派遣された彫刻師のもとに、地元の人たちが弟子入りしたことから、木彫刻の町として栄えた歴史があります。
【参考】井波別院瑞泉寺の内部。木彫りの美しさに圧倒されました。
瑞泉寺から伸びる「八日町通り」という門前通りには、今も木彫刻の職人さんのお店が点在しています。

「Bed and Craft 」の全6棟の宿は、地元の職人さん達がそれぞれの作品と見立てて設計しており、まるでギャラリーに泊まるかのような体験ができる空間となっています。
そのため、これは実際に私が経験したことですが、八日町通りを散策していたとき、木彫刻のお店の方とおしゃべりしていたら、実は自分が泊まる宿の内装を手がけたのが当該職人さんその方だったことが判明。それを知った感動は何にも変え難い旅の思い出になりました。
【参考】宿泊していたお部屋の様子。照明の木彫りを手がけたご本人にお会いできるとも思わず感動しました。
また、宿泊者限定のコンテンツとして、地元の木彫り職人さんに直接手解きを受けながら、まるで弟子入りしたかのように木彫りのスプーンや豆皿を作るワークショップも提供されています。
そのユニークさは世界でも高く評価されており、「ミシュランガイド北陸2021」で旅館部門では富山県唯一の「3レッドパビリオン:特に魅力的な宿」の評価を獲得するほど。
土地にある歴史と文化を宿泊施設と見事に融合させた事例として、類稀な場所だと言えます。
ソウルフード讃岐うどんにどっぷり浸かって学べる宿|香川県三豊市「UDON HOUSE」
香川県といえば讃岐うどんの本場ですが、香川県の西側の三豊市には、そんな讃岐うどんにどっぷり浸かれる「UDON HOUSE」という宿があります。
県庁所在地である高松市とは反対側で、高松と比べると交通の便が良いわけではありませんが、訪日インバウンドの観光客にも人気の宿泊施設として知られています。
その理由は、讃岐うどんを中心に地域の文化にどっぷり浸かることができるから。
たとえばドミトリータイプの宿泊施設では、部屋の名前が「TEMPURA」「KAMATAMA」「ZARU」などのうどん関連のものばかり…。寝ても覚めても讃岐うどんです。
また、宿泊付きのプランでは、讃岐うどんに関するワークショップにも参加できます。
具体的にはまず、基礎知識を学んだあと、讃岐うどんを作る工程を実際に体験できるようになっています。
生地踏みや出汁についての学習だけでなく、うどんを寝かせている間は、近くの農園で野菜の収穫体験をし、うどんを切り、釜揚げにし、さいごには収穫した野菜を使って作った天ぷらと一緒に…。1杯の讃岐うどんをつくる工程をすべて堪能できる体験になっています。
また、翌朝2日目は、朝食に近所の「うどん屋さんホッピング」も楽しめるという、まさに讃岐うどんに浸る滞在ができる宿泊施設となっています。
讃岐うどんを捏ねて切るだけの体験は、この宿泊施設でなくても提供できます。
ですが、体験に「学び」の要素が加わっていたり「捏ねて、寝かせて、切って、食べる」まで讃岐うどんを作る上で必要なすべての要素を体験できるのはこの「UDON HOUSE」だけです。
【出典】Trip Advisorの口コミ
今日はうどんハウスで最高の時間を過ごしました。
10:40から17:00まで、私たちはうどんの生地を準備し、天ぷら用の野菜を収穫し、そしてもちろんうどんをたくさん食べるという素晴らしい経験をしました。
美味しいものが好きな人、楽しい時間を過ごしたい人には、迷うことなくこの体験をおすすめいしたいです。
最近訪日インバウンドで特に好まれる「地元の人の暮らしに没入できる体験」をまさに具現化しています。
「UDON HOUSE」に宿泊した訪日観光客は、きっと讃岐うどんのことも、香川県が讃岐うどん文化の地であることも、一生忘れないことでしょう。
訪日リピーターが大絶賛!世界中の食通を魅了する米処の宿|新潟県南魚沼市「里山十帖」
【出典】里山十帖 Webサイト
シンガポールの富裕層系旅行会社と話していて、必ずと言っていいほど名前が挙がる宿泊施設が、新潟県南魚沼市の「里山十帖」です。
人気雑誌「自遊人」がリアルメディアとして運営する宿泊施設で、雪国ならではの重厚かつ貴重な、築150年の古民家を現代的にリノベーションしてつくられています。
南魚沼はコシヒカリの産地のなかでも、さらに評判の高いコシヒカリの名産地として知られているので、「里山十帖」の夕食ではなんと魚沼産コシヒカリを「メインディッシュ」として提供しています。
普通の白飯の前に「煮えばな」と呼ばれるお米からご飯に変わる瞬間の水分をたっぷり含んだ、お米そのものの甘さが楽しめる段階のご飯も提供しており、外国人でもよくわかる「お米の本物の美味しさ」を体験できるようになっています。
実は私が「里山十帖」のことを最初に知ったのは、訪日経験30回以上で、かなりの食通のシンガポール在住の友人からでした。
「煮えばな」を食べられたことは、これまで訪日して体験した中でも最高の食体験の1つだった
と大変熱く語っていたのが印象的でした。
そのほかの料理も、雪国の伝統や文化を取り入れた健康的なお食事を提供しています。
中でも野菜は無農薬、有機野菜を中心にできるだけ近くから仕入れ、宿を中心に半径25km圏内からの調達率が50%以上を占めているとの説明付きで、地域の魅力を存分に生かした宿泊体験を意識していることが伝わってきます。
【出典】里山十帖 Webサイト
年間提供品目の「80%以上が郷土の料理」であり、昔ながらの調理法・食材保存法を取り入れ伝統的な保存方法である雪室や発酵食にも力を入れているので、滞在しているだけで南魚沼の地域文化を存分に味わうことができます。
一見「何もない」ような場所に見えてしまう南魚沼市ですが、地域を巻き込んで「この場所ならでは」をしっかり提供している宿として、世界中の食通を唸らせていることは、日本人としてとても誇らしさを感じます。
さいごに
宿泊観光施設における訪日インバウンドの集客は、単に設備にお金をかけることだけが「集客力増加」に貢献するわけではありません。
なぜなら、設備の良さよりも、その土地の魅力を存分に味わうことができる宿泊施設になっているかどうかが、訪れた人にとって「わざわざ来た価値」になるからです。
訪日インバウンドの集客を考えている宿泊施設は、設備投資の前に自分たちの宿泊施設がある土地の魅力について、改めて向き合うところからぜひ始めてみましょう。
特に、シンガポールからの訪日観光客は、いわゆる富裕層ではない一般の人でも、素晴らしい体験ができるのであれば、4つ星、5つ星の宿に泊まることは普通にあります。
また、すでに約8割が日本に一度は行ったことがあるというリピーターが多いので、「その宿に泊まりたいから、その土地を訪れる」というケースは珍しいことではありません。
その宿に泊まる理由が「その場所に行かないと体験できないことがあるから」という、土地に根ざした魅力の発信ができていると、このような訪日観光客の心をぐっと掴むことができます。
弊社では訪日インバウンドの誘客施策に関して、長年の知見とシンガポールの最新の動向などの情報をもとに、個別にご相談をお受けすることができます。
ぜひお気軽にご相談ください。







