オーバーツーリズム対策はシンガポールの成功例から学ぼう|観光地を救うヒント

シンガポールのマリーナベイエリア
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人口約564万人のシンガポールは、狭い国土に約2倍の外国人が訪問していますが、日本で問題視されているオーバーツーリズムがまったく聞こえない…。

これはなぜなのか?個人的にとても不思議に思っていました。

シンガポールと日本の観光の特徴を調査してみた結果、以下の3つの要素に対して大きな違いがあり、これらの掛け合わせがオーバーツーリズムを緩和する仕組みを構成しているとわかりました。

  1. 1箇所の滞在時間
  2. 予約制
  3. 価格帯

今回は具体的にシンガポールを代表する観光エリア「マリーナベイエリア」を事例として取り上げ、シンガポールでオーバーツーリズムが起きていない理由について詳しくご紹介します。

今後訪日インバウンドの増加が見込まれる地域の皆さんは、オーバーツーリズム緩和の対策としてぜひ参考にしてください。

【1】1箇所での滞在時間が長い!

マリーナベイエリアには、この1箇所のエリア内に楽しめるスポットがたくさんあり、おそらく1日中遊んでも足りないほど充実しています。

具体的には以下のような内容です。

  • マリーナベイ・サンズ(高級ホテル)
  • カジノ
  • 会議施設
  • レストラン、人気ブランド、高級ブティックが連なるショッピングモール(店舗数170以上
  • マーライオン
  • アートサイエンス・ミュージアム
  • ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ

施設自体もかなり充実しているのですが、マリーナベイ・サンズには宿泊者ではなくても入場可能なシンガポールを一望できる「展望デッキ」や、ショッピングモール内で乗るボート「サンパンライド」、マリーナベイ・サンズの建物が光で彩られるショー「SPECTRA」などがあります。

年齢や興味関心、時間帯関係なく朝から晩まで十分たのしめる内容が詰まっているので、長時間滞在が期待できます。

1箇所のエリアに長く滞在する人が増えると、訪れる人の分布が他の観光地にバラけないので、ある程度観光地への人の動きを制限できます。

これにより1日で観光地に集中しないように分散化が図れて、オーバーツーリズムの緩和につながっていると考えています。

マリーナベイエリアの位置関係

【参考】マリーナベイエリアの位置関係

一方、日本の東京・浅草は、オーバーツーリズムによる混雑が深刻化しているという話をよく聞きます。

滞在時間の観点で考えると、浅草寺、雷門、仲見世、かっぱ橋道具街、花やしきなど、様々なコンテンツがありますが、それぞれの滞在時間はシンガポールの観光地ほど所要時間はかかりません。

また、お料理に興味ある人はかっぱ橋に長く滞在するかもしれませんが、そうでない人には少し退屈なので他の場所への移動を考えるでしょう。コンテンツが刺さるターゲットの偏りもまた、東京で短時間滞在を助長しているとも言えます。

加えて、都内は交通の利便性も高いので、1日の間に気軽に渋谷、銀座、新宿、もしくは東京での滞在や消費を最小限にして他の地域に移動することもできます。

「長時間滞在しなくても満足できる場所」と「移動しやすい環境」の掛け合わせで、訪問する人の分布を制限しにくい構造になっていると考えられます。

浅草の様子

【2】事前予約制は当たり前!

オーバーツーリズムへの抑止力として「事前予約制」は絶対的に必要な要素だと考えています。

なぜなら事前予約の仕組みさえあれば観光地でのキャパシティを超えてしまうのをを未然に防止することができ、「予約がないと楽しめない」のであればその地を訪問する人を減らせるので、オーバーツーリズムの緩和につながるからです。

実際にシンガポールでは、主要な観光地は当たり前のように予約制が導入されています。

例えばマリーナベイエリアにある「スカイパーク展望デッキ」は、狭い空間で許容範囲を超えた混雑が起こりやすいと考えられる人気の観光地です。
また地上56階とすごい高さにあるので、許容範囲を超えると落下の危険も出てきます。

ここでは事前にウェブサイトから希望訪問時間を選んで予約して訪問することを強く推奨しています。

マリーナベイ・サンズWebサイト

【出典】マリーナベイ・サンズWebサイト, 予約ページ

オンラインで簡単に事前予約できるので煩わしさはありませんし、多言語対応もされているので外国人でも問題なくスムーズに購入できます。

また、マリーナベイ・サンズ館内や付属施設でたのしめるコンテンツは、予約が一括してできるようになっています。

同エリアでのアクティビティを一括で予約できることによって、同じエリアに長く滞在することを自然と促す仕組みになっていると感じます。

マリーナベイ・サンズWebサイト

【出典】マリーナベイ・サンズ Webサイト, 予約ページ

また、予約の仕方もウェブサイトだけではなく、SNSを使って予約が取れる仕組みも一般化しています。

日本でもLINEで予約できるお店が増えてきましたが、シンガポールはLINEは主流ではなく、Whatsappで予約できるレストランや、予約フォームを設けているところが多い印象です。

英語が苦手な旅行者でも、電話ではなくチャットや予約フォームで予約できるなら翻訳ツールが使えるので難なくできます。

Whatsappで予約を受け付けているレストラン例「Ole」ホームページ

【出典】Whatsappで予約を受け付けているレストラン例「Ole」ホームページ

【3】日本は価格が安すぎる

シンガポールは物価や滞在費が高いので、シンガポールへ旅行に行ける人というだけですでに篩にかけられていますが、現地での観光体験の価格帯も安すぎない設定になっています。

たとえば、マリーナベイエリアの「スカイパーク展望デッキ」は、オフピークでも日本円で約3,500円(SGD$32)かかります。

価格はオフピークとピークで変動する仕組みで、別途VIPパッケージも用意されています。

マリーナベイ・サンズ Webサイト

【出典】マリーナベイ・サンズ Webサイト, 予約ページ

実際に私自身も展望デッキに行ったことがありますが、買った時点では正直チケットは「ちょっと高いなぁ」と思いました。

ですが、眺望が本当に素敵で、有名観光地にありがちな「混みすぎてて写真撮れなかった」ということもなかったので、高いチケット代を払った以上の満足感がありました!

展望デッキからの景色

自身がスカイ展望デッキに行った際に撮った写真。

また、マリーナベイサンズのショッピングモール内で楽しめるボート「サンパンライド」は、30分コースで約1,600円(SGD$15)

2024年10月に行われている、チームラボとスタジオジブリの世界という2つの日本関連の展示は、2つセットのチケットで約5,800円(SGD$53)というお値段でした。

Arts Science Museum Webサイト

【出典】Arts Science Museum Webサイト

マリーナベイエリアにある植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」は、入場料は無料ですが、一部屋内施設には入場料がかかり、大人1人あたり約6,700円(SGD$59)です。

Gardens by the Bay Webサイト

【出典】Gardens by the Bay Webサイト

シンガポール在住者の場合は割引価格となっており、観光客料金の半額以下でした。

Gardens by the Bay Webサイト

【出典】Gardens by the Bay Webサイト

日本に住んでいるとあまり実感がないかもしれませんが、実は2024年9月現在、カナダからアメリカ旅行に行くよりも日本旅行に行く方が2024年9月現在安いという状況です。

また日本で「卵が298円で高い」と嘆く人の姿をみたことがありますが、カナダでは1000円を超えていたり…。

(収入が違うとはいえ)日本と海外では物価感覚が違いすぎることを知らないと、訪日観光客がこぞって押し寄せることになりかねないので、価格帯の設定には十分気をつけるべきでしょう。

さいごに(3つの要素から自分のところに活かせるものがないか見直してみよう)

シンガポールでは

  1. 1箇所の滞在時間が長い
  2. 事前予約が当たり前
  3. 体験にかかる料金がそこそこ高値

という特徴が掛け合わさることで、観光客の分散化を防ぎ、許容できるキャパシティを超えない仕組み化がつくられていると言えます。

 

一方で日本の多くの地域では

  1. 1箇所の滞在時間が短い
  2. 事前予約の仕組みが整っていない(その場に行かないとわからない)
  3. 体験にかかる料金が安い

という条件が重なることで、観光客の動きを予測したりコントロールする仕組みが作られておらず、オーバーツーリズムを引き起こす可能性が高い状態にあると言えます。

せっかく遠くから来てくれるのだから、事前予約や料金設定などのハードルをなくし「気軽に楽しんで欲しい」という心意気は素敵なことです。

ですが、住民の生活にまで影響が及んで「住んでよし、訪れてよし」のバランスが大きく崩れてしまうようならば問題です。

今後オーバーツーリズム対策を検討しなければいけない地域の方はシンガポールでの事例を参考に

  1. 滞在時間の長期化を図る工夫
  2. 事前予約システムの導入検討
  3. 現在のサービス提供価格の見直し

この3つをぜひ重点的に見直してみてはいかがでしょうか。

Vivid Creationsではシンガポールに軸足を置く会社だからこそ知る、シンガポール現地の様々な最新情報を元に日本各地の訪日インバウンドマーケティングを支援させていただいています。シンガポールからのインバウンド誘客の取り組みにご興味があればぜひお問い合わせください。