シンガポールでポップアップストアを成功させる完全ガイド
シンガポールはブランド力がある日本企業にとって「東南アジア進出の最初の拠点」として非常に魅力的な市場です。
ですが、シンガポール市場は購買力が高く、日本製品への信頼が厚く、英語圏であるため情報発信もしやすい特徴がある一方で、実際に販売する実務は想像以上に複雑です。
輸出規制、通関、会場契約、現地オペレーション、PR設計…
これらを十分に理解しないまま進めると、スケジュール遅延や予期せぬコスト増加につながります。
本記事では、日本ブランドがシンガポールでポップアップ販売を実施するための実践ステップを、準備段階から運営・PR・その後の展開まで具体的に解説します。
海外市場進出に向けてシンガポールでポップアップを出店してみたい方は、ぜひ参考にしてください。
海外進出前に知っておくべき実践ステップ
結論から言うと、シンガポールでのポップアップは非常に有効なテストマーケティング手法なので、「自分たちの商品がシンガポールで売れるのか」を検証したい日本企業にとって、本格的な市場参入を見越して実施できる施策の中で、最も現実的でリスクが低い最初の一歩だと言えます。
この記事での「ポップアップ」とは、ショッピングモールや屋外スペースで企業・ブランドが期間限定で出店するショップやイベントのことを指しています。
ポップアップは、自社のブランディングを最大限に維持しながらテストマーケティングをすることにも最適です。
シンガポールでは高島屋や伊勢丹といったショッピングモールで開催される催事への出店や、大きなイベントの一角にブースを立てて出店することもできます。
ですが、ポップアップはこれらと比べると、消費者に直接ブランドを訴求できる(比較的制約が少ない環境で自社の世界観を表現できる)ことが最大の強みです。
【参考】シンガポールの巨大モール Plaza Singapuraで開催されていたとあるポップアップの様子
ポップアップの実施がおすすめな日本企業とは
一方で、最も重要な注意点があります。それは、ポップアップは海外進出の始まりとなる「最初の一歩」なだけで、決して「ゴール」ではないということです。
単なる1回限りのお祭り的な「販売イベント」ではなく、市場参入を見越したプロジェクトとして捉えて取り組まないと、最終的な投資対効果は低いままになる可能性が高いからです。
例えば、人気のショッピングモールで1〜2週間のポップアップを実施する場合、会場レンタル費、ショップデザイン・施工、運営費だけでも800万円以上がかかります。それに加えて、初めてのローンチの際のPRやSNSの運営、インフルエンサーから広告運用まで、ポップアップの実施でやるべきことは様々です。
なので、すでに海外から大きな注目を浴びており、現地の需要がものすごく大きなブランドでない限りは、目先の1回の出店で得られる利益を出すことは難しいです。
目先の利益を重視するブランドではなく、以下のブランド・企業にポップアップは推奨しています。
- 自社ブランド、商品がシンガポール向けに刺さるのか反応をみたい
- 将来的に本格的にシンガポールに進出したく、そのための手法を探したい(自社店舗やオンライン販売、小売販売を持ちたい)
- ブランドへの認知を海外で確立したい
こうした中長期的な事業計画があり、収益化には時間がかかる可能性があっても、広報・マーケティング・ブランディングといった予算を確保し、人的にも資金的にも投資ができる企業にとっては、ポップアップは有効な選択肢になります。
そのほかにも、ポップアップを実施することによって、以下のようなメリットや副次的な効果が得られた事例があります。
- ポップアップ後の展開に向けて、現地のビジネスパートナーを探せる
- ポップアップが大盛況となりメディアにも大きく取り上げられた結果、複数のモールのテナント担当者から出店検討の打診が入る可能性がある
- シンガポールで実店舗を持つと固定費負担が大きく、戦略次第では重荷になる可能性があるが、定期的なポップアップで顧客接点を作りながらファンを育てられる
実際、「将来的にはシンガポール市場で小売店での販売を目指す」といった現地のビジネスパートナーを探す必要がある場合は「シンガポールでポップアップを実施して成果を出すことかできた」という実績はかなり有効な営業材料になります。
現地の小売店への直接営業をする際や、バイヤーとの交渉を行う際に、ポップアップを通じて「実際にシンガポールでどれくらい売れたか」を伝えることができるので、説得力のあるトークとなり商談で成約する後押しになるからです。

ポップアップを実施する8つのステップ
「ポップアップをやってみたいけど、何から始めればいいのか分からない」という声をよく聞きます。
シンガポールへの初輸出を伴うポップアップの場合、準備期間は少なくとも6ヶ月を見込んでおくと、余裕を持って進められます。
準備期間中の基本的な流れは次の通りです。
- 商品の輸出可否の確認
- 輸出業者の選定・輸出準備
- 販売業者・現地法人の選定
- 会場手配・施工
- 現地に刺さるコピー・マーケティング(ブランディング/ローカライズ)
- 店舗運営・スタッフ管理
- PRイベント・メディア戦略・SNS立ち上げ
- ポップアップ終了後の展開戦略
特に「1:商品の輸出可否の確認」と「2:輸出業者の選定・輸出準備」は、JETROなどの公的機関や輸出業者に相談ができるので、まずはここから情報収集したい場合はJETROシンガポールのウェブサイトをチェックしてみてください。
「3」以降は現地パートナーとの連携がないと、現地の人脈や事情をゼロから探して手配する必要があるのでかなり難航する恐れがあります。
弊社ではシンガポールを拠点に17年以上、日本企業の方々向けに「3」以降のプロセスをサポートしてきたので、検索しても得られないような情報やノウハウがあります。
この記事ではこれ以降、弊社の知見を活かして上記の1〜9についてなるべく詳しくご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
【1】商品の輸出可否の確認
シンガポールは他の東南アジア諸国と比較すると、比較的輸出しやすい国だと言われています。ですが、そもそもシンガポールに輸出できる商品かどうかは、ポップアップの実施を決めたらまず最初に確認しましょう。
輸出可否を確認するためには、詳細な成分情報が必要になるので、事前に工場側で成分表を手配できるよう準備してください。
例えば、食品の場合は「原材料の内容によっては輸出ができない」というケースがあります。具体的には、豚肉の有無など、特定の食材が含まれているかどうかで取り扱いが変わることもあります。例えば、ある食品メーカーでは、「豚由来成分が何%含まれているのか」といったレベルまで確認されていました。
輸出の可否判断は申請者側が提供できる情報の粒度によって左右されるため、可能な限り細かいレベルで成分データを準備し、スムーズに手続きができるようにしましょう。
または、調べた結果手続きが複雑になり、想定よりもだいぶ時間がかかってしまったというケースもあるので、早めに確認することをおすすめします。
輸出可否の調べ方は、基本的には政府機関であるSingapore Food Aagency(通称:SFA)にオンラインで問い合わせすることが一般的です。輸出業者との取引がすでにある場合は、輸出業者から問い合わせてもらいましょう。
日系のショッピングモールの催事に出店する場合は、出店先の商業施設の担当者が取りまとめている場合もあります。自社でポップアップをする際には、専門業者に依頼することになります。

【2】輸出業者の選定・輸出準備
次に重要なのは、輸出と通関を担当するパートナー、そしてシンガポール国内の配送を依頼できるパートナーの選定です。
「輸出できそうだ」という見通しが立ったら、次はシンガポール向けの輸出を依頼できる業者を選び、実務に着手します。
事業者を選定する際に押さえておきたいポイントを以下にご紹介します。
品質を担保できる環境を手配できるか
食品の場合は特に、シンガポールに商品の品質や鮮度を保った状態で輸送できるかどうかが非常に重要となります。
シンガポールは年間を通じて気温が高く、30度を超える日も珍しくありません。ポップアップ会場の店頭に届けることまで想定し、現地の気候条件に耐えうるサプライチェーンを前提に設計する必要があります。
品質が担保できる輸送方法を現地の輸出・物流パートナーと連携して構築することで、将来的に実店舗を持ったり取引先が増えたりした場合でも、現実的な運用プランを考えやすくなります。
倉庫ひとつをとっても常温倉庫・冷凍倉庫など複数の選択肢があるため、自社商品に必要な保管条件を明確にし、それを踏まえて、適切な倉庫環境が手配可能な業者を選ぶようにしましょう。
場合によってはポップアップの実施以前に、輸送上の問題を解決するためにテスト輸送を実施したり、現地倉庫の環境を確認したりする必要があるかもしれません。
実際に輸送をして、倉庫に行って、商品にダメージがないかなどを実際に見て確認するなど、シンガポールへ輸出したい商品の品質や鮮度を保った状態で輸送・管理できるか、輸出業者と細かく確認しましょう。
現地到着までの時間管理に問題がないか
輸送手段が船便か空輸かによって、費用感とリードタイムが大きく変わります。これらの点についても、商品内容・数量・適切な保管状況に応じて、輸出業者・物流パートナーに相談しながら設計することが重要です。
実際にポップアップ開始までの準備期間が短い中で「船便を選択したところ、船便遅延により商品到着がぎりぎりになった」というケースもありました。
こうしたリスクを回避するためにも、余裕を持った計画と、遅延リスクを織り込んだスケジュール設計が欠かせません。
ポップアップ終了後の物流手配まで計画する
ポップアップの場合は、短期間で「輸入 → 販売」まで行った後、残在庫をどう扱うか(現地で処分するのか、日本へ送り返すのか等)まで含めて、物流設計を行う必要があります。
事後の戦略が曖昧だと、想定外の追加コストや、現場対応の混乱につながりやすくなります。

【3】販売業者・現地法人の選定
シンガポールでポップアップを実施する際、最初に決めるべきことは「誰が販売主体になるのか」です。
本格参入を前提とするのか、それとも市場テストなのかによって、選ぶべきモデルは変わります。
自社現地法人で販売する
将来的にシンガポールで継続展開を見据えるのであれば、現地法人を設立し、自社が輸入者・販売者となる方法が最もコントロールしやすい形です。
自社で在庫・売上・税務を管理し、価格やブランド表現も自由に設計できます。外部マージンが発生しないため、利益率を最大化しやすい点もメリットです。
一方で、法人設立、銀行口座開設、GST対応などの体制構築が必要となり、初期コストと工数は小さくないので、多くの企業にとっては、ポップアップ単発の実施には負担が大きいケースが多いです。
現地のバイヤー/ディストリビューターを活用する
現地企業が商品を買い取り、輸入者として再販売する形式です。輸入手続きや在庫リスクを現地側が担うため、日本企業側の負担は軽減されます。
また「まず売れるかどうかを確認したい」段階では取り組みやすい始め方なので、スモールスタートで実施する取り組みをしてみたい場合はこのパターンがおすすめです。
一方で、価格設定や販売戦略はディストリビューターの方針に左右されやすいため、ブランドが持つ世界観などを守りたい場合に、課題があることがあります。
また、そもそも御社の世界観を理解した上で、積極的に御社のブランドを販売したいというパートナー探しが必要となるので、ポップアップを実施したい際にすぐに実施できるわけではありません。商談会を実施しても成約できるかどうかも、商品の特徴がシンガポールの市場に合うかどうか次第でもあります。
まったく何もシンガポール市場に対して知識がなく、商談会に向けて聞かれそうなことへの準備ができていない状態で商談会をすると、返って逆効果になりかねないので注意が必要です。
以下の記事では、日本の商材を数多く扱ってきたシンガポールのローカルのバイヤーに独占インタビューを実施し、ぶっちゃけた本音を伺った内容を記事にしています。
バイヤーの探し方や商談で聞くべき質問もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
海外進出の成功確率を上げる「バイヤーインタビュー」徹底解説!
イベント販売代理/ポップアップ運営会社を活用する
短期のポップアップを現地パートナーが代行する形式です。場所の手配、販売スタッフの確保、POS準備、現地オペレーションなどを一括でサポートします。
ブランドの方向性は日本側が握りながら、実務部分を現地に委ねられるため、テストマーケティングとの相性が良い方法です。
初期リスクを抑えつつ、スピード感を持って実行できる点が最大の利点でもあります。弊社ではこの形で、現地パートナーとしてシンガポールでのポップアップ運営をサポートすることがあります。

どの形式が最適かは、「どこまで自社でコントロールしたいか」と「どこまでリスクを取れるか」によって決まります。
- 長期展開を前提とするなら、法人設立
- まずは市場反応を見たいなら、現地パートナー活用
ポップアップは販売する場であると同時に現地市場での販路開拓を検証する場でもあるので、その位置づけも明確にしたうえで、どの形式が好ましいのか決めましょう。
【4】会場手配・施工
【重要】ポップアップの会場選びは結果を左右する
次に検討が必要になるのがポップアップを実施する「場所の選定」ですが、ポップアップの成功は立地で7割決まると言っても過言ではありません。
ですが、シンガポールの土地勘がない場合はどのエリアがターゲットに適しているのかを判断できないかと思います。
例えば、シンガポール人向けに販売したいと思っていたのに、観光客比率の高いエリアでポップアップを実施してしまうと、ターゲットと実際の来場者にズレが生じて想定した成果が得られないことがあります。
実際にある弊社のクライアントは、シンガポールのチャンギ国際空港直結の巨大商業施設「JEWEL」でポップアップを実施しました。シンガポール人向けに販売・PRを目指していましたが、JEWELは空港のショッピングモールであることもあり、来場者の中身は「海外旅行者比率が約3割」であり、時期によってはそれ以上であることもありました。
この結果を受けてポップアップの担当者は、「シンガポール住民向けに販売するなら、CBD(都市中心部)で実施した方がよかったかもしれません」とお話ししていらっしゃいました。
ポップアップを実施する会場選定は、現地企業から事前に情報収集をしたり、場合によっては連携して事業を進めたり、現地の商習慣やカルチャーを把握した上で慎重に決めましょう。
【参考】シンガポールの巨大商業施設Vivo Cityでのポップアップの様子
シンガポールにおけるポップアップ会場の事情
シンガポールでポップアップを実施するのであれば、主な選択肢は以下の通りです。
- ショッピングモールのイベントスペース(催事場)
- ショッピングモールのテナントスペース(店舗スペース)
- フェア/イベントへの出展
- コンセプトストア内スペース(店舗の一角)
この中でコストが最も高いのは「ショッピングモールのイベントスペース」と「ショッピングモールのテナントスペース」です。特にCBD(中心街)で交通量が多いモールは、当然ですが費用が高くなります。
出店期間にも差があり、例えば「ショッピングモールのイベントスペース」は、1週間単位でレンタルするケースが多く見られます。人気なモールだと、1週間でレンタル費15,000ドル(185万円程度)です。
一方で「ショッピングモールのテナントスペース」となると、6ヶ月〜12ヶ月以上が最低契約期間になることが一般的です。
会場ごとに注意点も異なります。例えば、ある大手モールでは既存テナントの競合にあたるブランドを避ける傾向があります。別のモールでは、サンプル調理を禁止しているケースもあります。
こうしたルールは会場によって大きく異なるため、早い段階で確認が必要です。
| 形式 | 費用 | 出店期間 | 具体的な場所名 |
| ショッピングモールの イベントスペース |
高 | 1週間単位 | Plaza Singapura Waterway Point など |
| ショッピングモールの テナントスペース |
高 | 6ヶ月〜12ヶ月以上が最低契約期間 | 上記ショッピングモール内の テナントスペース |
| イベント会場/ フェアへの出展 |
低〜中 | 数日程度 | ブティックフェア Sake Matsuriなどのイベント |
| コンセプトストア内 スペース |
低〜中 | 数日〜1ヶ月程度 | CRANE (雑貨系) Lumine(ファッション系)など |
シンガポール市場へ未進出で、これから中長期的に進出を検討したいという日本企業に対して弊社がおすすめしているのは、
- 交通量の多い「ショッピングモールのイベントスペース」
- シンガポールで人気の「フェア/イベント会場への出展」
この2パターンです。
いずれも潜在顧客にリーチしやすく、ブランディング/PRの観点でも認知獲得につながりやすく、特にイベント・フェアは、主催者側がPRを実施し、メディアやインフルエンサーが訪れることもあります。
実際に、シンガポール最大級の雑貨・ライフスタイル商品のBtoCイベント「Singapore Boutique Fair」へ日本企業として初めて出展されたセメントプロデュースデザイン様は、厳しい出店審査を通過して、3日間で200万円と想定超える売り上げ(成果)を達成されました。(他のブランドでは、それ以上のセールス実績もあります)
「Singapore Boutique Fair」については、以下の記事で詳しくご紹介しています。「フェア/イベント会場への出展」をご検討の方はぜひ参考にしてください。
雑貨・ライフスタイル商品でシンガポール市場進出するなら「Singapore Boutique Fair」に出店しよう
【5】現地に刺さるコピー・マーケティング(ブランディング/ローカライズ)
日本で成功しているブランドだったとしても、海外市場で販売する場合は、日本で通用していたPR戦略や商品の訴求をそのまま展開すれば売れるというわけではありません。
特に初めて海外に出展する場合には、商品の説明や訴求は単なる翻訳ではなく、現地の言語・文脈で「伝わる形」に意訳することが欠かせません。
特に日本のブランドは、商品説明が長くなりがちな傾向があると感じています。シンガポールは多国籍国家でもあるので、言葉による丁寧な説明よりも、どの民族の方でも理解できるような「端的で分かりやすいキャッチコピー」と「ひと目で理解できるビジュアル」が求められます。
この点に関しては、日本ですでにブランディングが確立している企業は、すでに利用しているものを進出先の文化に合わせていく作業が必要になります。
現地市場の調査やグループインタビューを行えば勝ち筋が見えてくる可能性があるので、気になる方はぜひ以下の記事をご覧ください。
一方で、日本国内でもブランドの輪郭が曖昧な場合は、海外に出すタイミングでブランドの全体設計が必要になります。
具体的にはブランドのストーリーを明確にし、差別化させるポイントを整理した上で、現地市場と現地メディア向けに発信するための準備をしましょう。
以下の記事では、シンガポールと日本の広告クリエイティブのデザインに絞って、どれほど表現の仕方が違うのかをご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
【海外広告】私がシンガポールに来て気付いたデザインの決定的な違い
また、弊社では独自でシンガポール最大級の日本酒イベント「Sake Matsuri」で、日本産の加工品を日本酒にあう「おつまみ」としてキュレーションし、シンガポール初の【おつまみ専門のポップストア】を企画・実施したことがあります。
結果的に3日間で58種類の商品を1,800個販売し、見事完売。単価が日本円で数百円〜数千円程度の商品ばかりだったにも関わらず、100万円以上の売り上げを達成!
この成果を生むために、ターゲットに合わせて商品選定やブランドロゴ、キャッチコピー、ブースデザインなどを考えて臨んだ経緯を、以下の記事からすべて見ることができます。
現地市場に刺さるローカライズを検討する際に、ぜひ参考にしてみてください。
ミッション:日本の加工食品を「おつまみ」として海外で売れ!私たちがシンガポールでやったこと
上記の事例の他にも、弊社ではライフスタイルブランド、キャラクターグッズ、ギフト・食品関連のポップアップなどの実績もございます。
【6】店舗のオペレーション・スタッフ管理
ポップアップは短期戦。実際に始まってしまうと、今度は「オペレーションの品質」がお客様からのブランドに対する評価を決めることになります。
特にシンガポールの消費者は比較的テンポの良い対応を好む傾向があるので、スムーズで素早いオペレーションが実施できると顧客満足度に直結します。
ポップアップストアオープン中にスムーズなオペレーションをするためにまず重要なのは、混雑時の対応を事前に把握し、決めておくことです。これは特にショッピングモールでの出店やイベント・フェアでは対策が求められます。
例えば初めてポップアップを開催する場合でも、前から注目を集めて、初日に行列ができることがあります。このときに人気があって行列ができているなら問題ないのですが、運営側が混雑に対応できていないケースだった場合は、機会損失やクレームにつながりかねません。
当日に円滑な運営ができるように、ブランドを理解し、商品を正しく紹介できるスタッフの手配と教育を徹底しましょう。そのために必要な事前準備は以下の4つです。
①スタッフへの「ブランドの紹介資料・店舗運営資料」
これは最低限必要な事前共有だと言えます。スタッフが自社ブランドや商品を十分に理解できていないと、誤った説明をしたり、誤った商品を販売してしまいまうからです。
こうした事態を防ぐために、分かりやすい資料に落とし込み、事前教育を行いましょう。海外でポップアップをする際に、意外とこれを準備していないブランドが多いように思います。
具体的には、以下のポイントを押さえて資料にできるとよりスムーズな運営に活かせます。
- 読んだ人が商品のユニークセリングポイント(USP)を明確に理解できるようにする
- 効果的な接客のセールス方法(セールススクリプト)を示す
- 商品への注意事項やQ&Aを踏まえて、店頭での質問にも対応できるようにする
- 商品への注意事項やQ&Aを踏まえて、クレームを事前に防げるようにする
スタッフが勉強してくれるだろうという甘い期待は捨て、全く御社のことを知らない現地のスタッフを営業スタッフとして育てられるように、教育・サポートしましょう。
②顧客からの質問に備えた「Q&Aリスト」
事前に用意しておくと運営期間中とっても役に立つのが、顧客からの質問に備えた「Q&Aリスト」です。先の「ブランドの紹介資料・店舗運営資料」とともに事前に準備し、運営スタッフに共有しましょう。
よく聞かれる質問には以下のような内容があるので、参考にしてください。
- 商品の賞味期限や保管方法
- 商品に含まれる材料(ムスリムの方は、アルコールや豚肉はNG。そのほかアレルギー表示など)
- 商品に欠品があった場合の対応方法
- 顧客からクレームがあった際の対応方法・連絡方法など
③キャッシュレス対応の支払いシステムの使い方
店舗運営には支払いシステム(POS)が不可欠です。特にシンガポールはキャッシュレス社会のため、多くのポップアップではキャッシュレスのみで対応しているケースがほとんど。
POSシステムは、シンガポール現地のサービスが複数あるので、自社の目的に合わせて選定してください。
多様な決済サービスが存在するため、現地環境に適した手段を選定し、運用マニュアルが作れたら事前に研修や教育ができるのでおすすめです。
④期間中の売上管理・在庫管理・発注業務の実施方法
ショッピングモールのイベントスペースや催事では、ブース内に在庫を保管しなければならないことが多く、追加のストレージが提供されないケースも少なくありません。
そのため、倉庫から複数回配送が必要になることもあります。
売上と在庫を見える化し、適切なタイミングで追加発注できる体制を作ることが円滑なオペレーションに直結するので、事前にどのような仕組みで行うか検討しましょう。
必要であれば運営スタッフに共有し、ポップアップが始まってから慌てる必要がないように体制作りができていたら安心です。

【7】PRイベント・メディア戦略・SNS立ち上げ
ポップアップの開催が決まったら、事前に行うPRは、実施期間中の売上以上に重要だと、個人的には感じています。
なぜなら、中長期的に海外進出を検討している企業にとって、ブランドに関する正しい情報を発信し、シンガポールでの認知を獲得することがポップアップを実施するの主目的の1つだから。
ポップアップの運営にばかりリソースを割きすぎて、PRを疎かにしてしまっていては本末転倒。ポップアップを実施することによる認知拡大や、実際の来客数を増やすためには、現地市場へのPRは欠かせません。
PRの手法は多岐にわたりますが「初期の認知獲得」と「来場促進」という観点に限る場合は、弊社ではまず以下を推奨しています。
- 記者リストの作成・プレスリリース配信(3ヶ月前から準備)
- SNSの立ち上げ(2ヶ月前から準備)
- メディア・KOLの招待(1ヶ月前から準備)
- メディア・KOLへのギフティング(1ヶ月前から準備)
- KOLとのタイアップ投稿/UGC投稿
これらのプロセスの中でも、以下の3点については必ず事前に確認いただきたいポイントです。ぜひ参考にしてください。
- プレスリリースは絶対に配信しよう
- 現地メディア・インフルエンサーのリストはターゲットに合わせて作成しよう
- インフルエンサーとの関係性は会期中も事後も丁寧に行おう
①プレスリリースは絶対に配信しよう
具体的にまずはじめの一歩として着手するのは、想定しているターゲットとブランディングに合わせて、プレスリリース、メディアリスト、KOLリストを作成することです。
特にプレスリリースは、シンガポールで初めて販売するタイミングこそ、メディア露出を獲得しやすい絶好の機会です。最低でもポップアップイベントの実施を告知するプレスリリースの配信は絶対にやりましょう。
余力があれば実施期間中の動向、事後の反響などもプレスリリース配信できたらメディアに注目してもらえる可能性が高まります。
プレスリリースの配信の仕方はシンガポールの場合、日本と全然違うので気をつけましょう。
例えばシンガポールには「PRTIMES」のようなプラットフォームはないので、記者に直接送るしかありません。そのため「記者リスト」は必須で、それ以前に関係性の構築も必要となります。シンガポールは人の入れ替わりも早いので、弊社では記者リストを毎月の勢いで更新し、記者の情報更新をしています。
このように進出先の海外市場によってプレスリリースの配信方法や習慣は変わるので、事前に把握して計画しましょう。
②現地メディア・インフルエンサーのリストはターゲットに合わせて作成しよう
「プレミアムブランド」として訴求したい場合は、ラグジュアリー志向のライフスタイルインフルエンサーや、プレミアム媒体の編集部へアプローチしましょう。
食品ブランドであれば、フード系メディアに加えて、ライフスタイル、ニュース、子育てメディアなどとも相性が良いです。
シンガポールでは国土が狭い分、メディアの数は限られているので、インフルエンサーリストの方がメディアリストの作成よりも時間がかかります。
一般的にはフォロワー数が多いインフルエンサーよりも、ナノインフルエンサー(数千規模)の方がフィード投稿をしてくれるケースが多いこともあります。特にシンガポールは食への関心が高い国民性として知られており、フード特化のメディアやインフルエンサーが多い傾向があります。
UGCを増やすためにはフォロワーが多い「インフルエンサー=いい」というわけではないので、ニッチな分野で活躍するKOLを起用するなど、戦略的にメディア/インフルエンサーを選定することが求められます。
③インフルエンサーとの関係性は会期中も事後も丁寧に行おう
メディア・インフルエンサーへのギフティングはシンガポールの場合とても効果的です。無償提供によってオーガニックな投稿を増やすだけでなく、ローカル文脈での解釈・紹介が生まれ、現地とのエンゲージメントを創出できます。必ずサンプル品を用意して、ローンチに合わせてギフティングを実施しましょう。
ギフティングの効果を最大化するには、丁寧なコミュニケーションが成功の鍵です。具体的にはローンチの前に事前に20〜30名のインフルエンサーにギフトをお送りしたり、メディアにはプレスリリースと合わせてギフトをお送りすることで、SNSやメディアでの情報発信を促し、ローンチに合わせた認知拡大を目指せます。
パッケージそのものは特にSNSでの見え方に直結するため、パッケージのデザインに自信がない場合は「ギフティング用の特別包装」を準備することもあります。思わず投稿したくなるようなSNS映えするパッケージにする工夫が、ギフティングの効果を高めます。
さらにオープン後のSNS運用やインフルエンサーとのタイアップも有効です。自社投稿は広告色が強くなりがちで、スキップされることもあります。一方、クリエイターによる顧客目線の投稿はレビューとして機能しやすく、信頼獲得につながり、フォロワーにとっても参考情報になります。
ローンチ時の瞬発的なコラボレーションだけでなく、SNS戦略と合わせてその後も継続的にインフルエンサーとの関係性を構築するのが効果的です。
【参考】長崎県産イチゴのPRでのインフルエンサー投稿
【8】ポップアップ終了後のシンガポール展開
これは極めて重要なポイントですが、ポップアップは始まりであり、終わりではありません。成功するブランドは、ポップアップを単なる販売イベントではなく、市場参入を吟味するプロジェクトとして設計しています。
ポップアップの最大のメリットは、「自社商品に対する市場の反応を見ること」と「自社のブランディング」です。
- 自社商品が現地で売れるのか
- どんな人が購入するのか
- どの商品が売れるのか
- 適切な価格帯はどこか
- どんなメッセージが刺さるのか
こうした点を検証することで、その後の展開に向けて最大限の学習が得られます。
継続してポップアップを実施する場合は、会場の下見や催事担当者とのネットワーキングを重ねることで、次回以降の展開がしやすくなります。
さらに最終的に自社店舗を持つ判断をする場合、モール側に「呼ばれたいブランド」になる必要があります。その意味でも、ポップアップでの販売実績は非常に重要です。
実際に、あるブランドのポップアップが大盛況となりメディアにも大きく取り上げられた結果、複数のモールのテナント担当者から出店検討の打診が入ったケースもあります。
ただし、店舗を持つことが海外展開の正解とは限りません。むしろシンガポールで実店舗を持つことは固定費負担が大きく、戦略次第では重荷になる可能性もあります。
たとえばオンライン中心で販売し、定期的にポップアップで顧客接点を作りながらファンを育てているローカルブランドもあります。
ポップアップ出店の先にどのような展開を見据えているのかを事前に吟味して、より効果的で有意義な「海外進出の最初の一歩」としてのポップアップを実施しましょう。
まとめ
シンガポールでのポップアップは、「売るための場」であると同時に「市場を学ぶための場」でもあります。
短期間での売上だけで判断するのではなく、市場の反応や顧客の声、売れ筋や価格帯、ブランドの伝わり方を検証し、その後の展開につなげることが中長期的に考えてより有意義な取り組みにできます。
本記事でご紹介した通り、ポップアップの成功は、輸出・物流・現地パートナー・会場選定・マーケティング・運営・PR、そして終了後の戦略設計まで、すべてが一貫して設計されて初めて実現します。
一方で、これらをすべて自社だけでゼロから構築するのは簡単ではありません。特にシンガポール市場においては、現地特有の商習慣やネットワーク、スピード感への理解が成果を大きく左右します。
- 自社商品がシンガポールで通用するのか知りたい
- ポップアップをやってみたいが、何から始めればいいか分からない
- 信頼できる現地パートナーを探している
- PRやマーケティングも含めて一括で相談できる先を探している
といったお悩みをお持ちでしたら、弊社へぜひ一度お気軽にご相談ください。弊社では、シンガポールを拠点に、日本企業の海外進出を多数支援してきた実績をもとに、ポップアップの企画から実行、その後の展開まで一気通貫でサポートしています。
まずは情報収集の段階でも問題ありませんので。貴社の状況に合わせて、最適な進め方をご提案させていただきます。
本記事が海外市場進出に向けたポップアップ出店を目指す日本企業の皆様にとって、参考になれば幸いです。







