現地マーケターが伝えるシンガポールの水産品事情と輸出の可能性
「シンガポールに日本の水産物を輸出できないだろうか?」
こういったご相談をよくお伺いします。
シンガポールは島国で水産物は元々豊富だし、参入の余地はないのでは?と心配される方も多いですが、そんなことはありません。
実は、シンガポール近郊で獲れる水産物は生食できず、高級寿司店などのお寿司のネタのほとんどは、日本から輸入されています。
特に日本のカニや牡蠣は高級品として、現地でとても人気です!
この記事では、シンガポールではどんな水産物が食べられているのか、どこで売られているのかなどの現地情報をお伝えします。
水産物でシンガポール参入を考えている方はぜひ参考にしてください。
シンガポールに輸入されている日本の水産物は毎年増加している
シンガポールでは年間12万5千トンの水産物が輸入されており、そのほとんどが海外から輸入されています。
なかでも、日本からの輸入は、2019年は51億円 、前年度比で16.8%も伸びており、順調に輸出額を拡大しています。
実際のシンガポールへの輸出シェア比率は、マレーシアから12%、インドネシアから12%、ノルウェーから12%、ベトナムから11%、中国から10%についで、日本は8%です。
東南アジア諸国で近海から獲れる水産物、水産加工品の輸入が中心となり、ノルウェーからはシンガポール人が大好きなサーモンなどが輸入されているようです。
シンガポール食品庁のレポートによると、シンガポール人1人当たり年間魚介類消費量は2019年で約22kg。過去2015年からほぼ横ばいで推移しています。一方、日本では1人当たりの年間消費量は年々減少傾向にあり、2018年時点で23.8kg。
シンガポールは日本の同じくらい魚介類を多く消費している国だということがわかります。
また、シンガポールでは2018年、三重県産活カキの輸出解禁がされ、話題になりました。
もともと生カキ輸出には、農食品・獣医庁(AVA)の貝類衛生プログラム基準を満たし、シンガポールの食品安全基準を満たしていることを証明する輸出国管轄機関発行の衛生証明書を提出しなければなりませんでしたが、水産庁とシンガポール政府との調整が整い、輸出が可能になりました。
輸出解禁後、すぐに商談会など通じてシンガポールのバイヤーらへ積極的な売り込み活動が行われるとともに、鮮度をキープすることができる長距離輸送も物流の力で実現しました。

つまり、シンガポールにはすでに様々な日本の水産物が輸入されているだけでなく、輸入環境や規制がさらに改善されれば、日本からの輸出量を増やせる可能性がある市場だと考えられます。
シンガポール人はシーフードが大好き
シンガポールに一度でも滞在されたことがある方は、シンガポール名物のシーフード料理「チリクラブ」を食べられたことがあるのではないでしょうか?
「シンガポールシーフード料理」というものがあり、シーフードを使った中華料理として、現地の方や旅行客に大変親しまれています。
メインとなるのは「スリランカキングクラブ」という、大ぶりなカニをチリソースで炒めたもの。
黒胡椒やガーリックで炒めたものもあり、円卓を囲んで大人数で楽しむスタイルが主流です。

チリクラブ以外にも、エビが比較的安価で手に入ることからエビ料理が数多くあったり、「cockles」といわれるザルガイや、エイ、ザリガニをチリソースで炒めるた料理など、日本で見られないような魚介類を使った料理が、日常的にレストランや屋台で食べられています。
また、マーケットに並ぶ魚類も、日本では馴染みのないものを多く目にすることができます。
シンガポール人の一般家庭の食卓に並ぶシーフード料理
(出典:ThaiLife “Home cook meal before leaving Singapore” July 23 2017)
日本のカニや牡蠣はシンガポールで大人気!
一方で、日本産のカニは高級品として親しまれており、タラバ蟹やズワイ蟹などは、日本食レストランはもちろんこと、日本食スーパー、現地の小売店、ECなどで高額で販売されています。
2018年に日本で初めてシンガポール向けに輸出解禁となった三重県産活カキは、現地のオイスターバーなどでも提供されはじめています。
もちろん、刺身や寿司など生の水産物は大人気で、どこのショッピングモールに行ってもほとんどお寿司が食べれるレストランがあり、現地の人々の食生活にとって、大変身近な存在になっています。
なお、東南アジア近海で取れた水産物は生食には向かないため、お寿司に使われる水産物はほとんど日本などからの輸入品となります。

シンガポールで水産物はこうやって売られている
ウェットマーケット
シンガポールの「ウェットマーケット」とは、魚や肉、野菜、果物など生鮮食品を取り扱う市場のことです。
シンガポール国民の台所として、シンガポール島内に107ヶ所存在し、毎日各地から運ばれる新鮮な食材が並び、賑わっています。
その一つがLittle India地区にあるTakka Market。
インド料理によく使われる羊肉や鶏肉、果物、水産物、野菜など、それぞれの専門店が軒を連ねており、毎日賑わっています。
新型コロナ感染拡大でロックダウンに近い状態になった時期は、FBやウェブサイトを活用し、ライブで市場と消費者をつなぐオンライン販売を開始したりと、画期的な取り組みを実施していました。
https://www.tekkaonlinemarket.sg/

ウェットマーケットの中にある、日本でいう「魚屋さん」では、近海で水揚げされた水産物が氷の上に並べられて売られています。
値段はスーパーマーケットより割安で、魚を選んで、内臓を取ったり、三枚おろしなどにもしてくれます。

スーパーマーケット
ローカルのスーパーマーケットにもシーフードコーナーがあり、魚の量り売りをしています。
品揃えはウェットマーケットと似ていますが、冷凍の水産物も販売されています。

シンガポールにはドン・キホーテが進出しており、現地ではDon Don Donkiという名前で、日本の食品や雑貨などが比較的安価で販売されています。
魚介類コーナーには大人気のお寿司コーナーがあり、現地の生活者にマグロやサーモンのお寿司が大人気です。
日本と同等の価格でリーズナブルなお寿司が楽しめます。


オンラインショップ(EC販売)
シンガポールでは昨今、ECで生鮮品を購入する人も増えてきました。
日本の魚介類を専門に販売しているECが、「Zairyo」です。
(出典:Zairyo https://www.zairyo.com.sg/)
ウニなどの新鮮食材を提供することで知られています。
豊洲市場と九州から、新鮮な季節の食材を週4回調達して販売。
日本の農産物を売るだけでなく、オンラインでオリジナルレシピの提供・提案も行っています。
先進的なローカルの魚屋さん
日本と同様、魚介類だけを専門にした魚屋さんは昔に比べて激減していますが、その中でも厳選した商品だけを販売するこだわりの魚屋さんが登場しています。
その一つがこちら「Dish The Fish」、若い2代目経営者が運営する新しい新時代の魚屋さんということで、厳選されたアジアの人気魚から、海外のあまり知られていない魚まで幅広く紹介、販売をしています。
根強いファンに向けて、SNSなどでも積極的に発信しています。
(出典:Dish The Fish https://www.dishthefish.com.sg/)
B to B向け小売・レストラン等へのディストリビューター(卸業者)
シンガポールでは、シーフード専門のディストリビューターが、現地のレストランや小売店に商品を卸しているケースがほとんどです。
そこで今回は、輸出するにあたって関係性の構築が必要となる代表的なディストリビューター(卸業者)を数社、ご紹介します。
Kirei Japanese Food Supply Pte. Ltd
日本食品や酒のブランドを取り扱う輸入卸業者として、乾物、冷凍食品、日本酒やビール、焼酎といった酒類など、多様な商品を取り扱っています。また、東京の築地市場から週2回、新鮮な商品を空輸しています。
Evergreen Seafood
1995年に設立された、シンガポールを拠点とする活魚介類のサプライヤー。チルド、ドライ、冷凍など様々な種類の魚介類の調達、梱包、加工、供給を行っています。主な取り扱い品目は、マッドクラブ、活水産、冷凍シーフードなど。
https://www.evergreenseafood.com.sg/
Soshinsen Holding Pte Ltd
刺身から水産加工品など、日本の水産物を中心に扱う輸入卸業者です。一般向けとB to B向けの販売の両方を実施されています。オンラインでも注文できるほか、空輸のスケジュールを記載するなど、タイムリーなサービスを提供しています。
具体的に動き出すなら、まずはシンガポールの輸入規制をチェック
実際に農林水産物の輸出しようと考え始めると、
- 物流コストが高い
- 鮮度が重要であるので搬送設備や搬送時間などを考慮しない
- 輸出相手国により証明書が必要る
- 必要書類をそろえるための手続きが複雑な場合がある
…などの、大小様々な課題に必ず直面します。
そこでおすすめなのは、「海外で実施される商談会やバイヤーと出会える機会を探すこと」並行して、自社の商品がシンガポールに輸出できるのか「まず輸出規制や手順をチェックすること」です。
以下にいくつか具体的な内容をまとめましたので、参考にしてみてください。
まず自社の商品がシンガポールに輸出できるか調べましょう
水産物の輸入は、シンガポール食品庁(SFA)が所管する食肉・魚介類法および食品販売法によって規制されています。
規制がかなり細かいので、そもそも自社の商品がシンガポールに輸出できるのかを調べましょう。
下記、JETROのウェブサイトに詳細がまとめられていますので、ぜひご参照ください。
【参考】日本貿易振興機構(JETRO) :
日本からの輸出に関する制度 水産物の輸入規制、輸入手続き
https://www.jetro.go.jp/world/asia/sg/foods/exportguide/marineproducts.html
輸出に必要なライセンス(資格)や書類等を揃えましょう
規制に問題なければ、施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等を揃える必要があります。
また、ハイリスク製品に分類される品目は輸出国発行の衛生証明書の提示が求められます。
展開する海外市場への輸出に際して必要なライセンス(資格)や書類等を調べ、準備しておきましょう。
輸出通関の手続きを進めましょう
船荷証券(B/L)またはエアウェイビル(AWB)、インボイス、パッキングリスト(P/L)など、水産物の輸入通関にあたり必要な書類を作成します。
この辺りは、輸入者となる企業との調整が必要です。
下記、JETROのウェブサイトに詳細がまとめられていますので、ぜひご参照ください。
【参考】日本貿易振興機構(JETRO) :
日本からの輸出に関する制度 水産物の輸入規制、輸入手続き
https://www.jetro.go.jp/world/asia/sg/foods/exportguide/marineproducts.html
【事例紹介】BtoB向け・BtoC向けの施策を両方セットで行いましょう
シンガポールに輸出ができる準備が整っても、結局のところ販売先などの商流がなければ、ビジネスは進みません。
またもちろん、消費者に商材が認知され、需要がなければ、輸出したところでビジネスとして成り立ちません。
そこでおすすめしたいのは、バイヤー、ディストリビューターなどを探す「B to Bの施策」と、現地消費者向けに商品の認知度向上と需要喚起を行う「B to Cの施策」を、セットで実施することです。
以下、実際にシンガポール市場で実施した事例を交えながらご紹介します。
【BtoB向け】商談会・展示会
シンガポールでは様々な日本の商材のの認知度向上や輸出拡大を目指すため、現地のバイヤーを招聘した商談会が開催されています。
各自治体が主催するもの、JETROや農林水産省などの行政機関などが開催するものなど、規模もテーマも様々です。
新型コロナ感染拡大以降の2020年9月現在、オンライン商談会というのも登場し、シンガポールに渡航せずにオンラインで商談するやり方もこれからは促進されていくと思われます。
自治体や行政機関などで定期的に商談会の出展社を募集していることがあるので、チェックしてみましょう。
【事例紹介】JETRO:日本産水産物輸出商談会 IN:FUSE (2019年)
2019年にJETROが主催し、弊社もお手伝いした水産商談会「IN:FUSE」の模様です。
日本の水産物・水産加工品メーカーおよび商社など約35社が参加、当日はバイヤー、シェフ、サプライヤー、メディアなど約200人が参加しました。


こういった商談会を出展することによって現地バイヤーとの直接的かつ具体的な商談、また現地のマーケット情報、生の情報を収集することができます。その際に、いかに次のステップに繋げるために、その場での料金表の提示、徹底したフォローなど事後フォローが商談成約のポイントとなります。
【BtoC向け】ディストリビューションチャンネルの構築
【事例紹介】JFOODO:Seafood Loves Sakeキャンペーン(2019年)
日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)が主導で行なったキャンペーンです。
シンガポールにおける日本酒市場の拡大を目指し、12の非和食トップレストランとタイアップし、日本酒とシーフードのペアリングメニューを2ヶ月間提供しました。
本件は、シンガポール外食における日本酒市場を拡大させるために、プロモーションによって「シーフードといえば日本酒」という連想関係をつくり、ターゲット消費者の態度変容を起こして飲食店での飲用、そして小売店での日本酒の購入に結びつけました。
単に、日本酒を紹介するのではなく、日本酒のあるライフスタイルを具体的に表現し、エンターテイメント性を持たせながら、楽しく知り、体験することを通じて、日本酒をシンガポール在住の人たちに身近に感じてもらうことで、需要創造につなげました。


さいごに
シンガポールでは世界各国の水産物が輸入され、様々なチャンネルで販売されていることがおわかりいただけたのではないでしょうか?
もちろん、商品によっては細かい輸入規制があることや、取り扱いが重視される物流搬送の手配など、輸出伴う課題をクリアする必要はあります。
しかしながら、近年急速に広がる日本食文化の普及もあり、日本から輸入される商品の量が毎年増加している今、水産物も可能性があると現地在住のマーケターとして強く感じています。
これをビジネスチャンスと捉え、更なる需要拡大に繋げていくには、
- 現地の食生活や業界の現状を調べてマーケットを理解する
- パートナーやバイヤーとの信頼関係の強化を行いながら現地での商流形成を行う
- 同時並行で販促マーケティングに取り組む
至極当然のステップではありますが、上記の3つのポイントを着実に実施していくことが非常に重要です。
これらのプロセスを経て、シンガポールの家庭の食卓が日本の水産物で埋め尽くされる日が来るのも、そんなに遠い未来ではないかもしれません!
今後も日本の食文化や水産物が、シンガポール市場を皮切りに世界へと羽ばたいていくことを楽しみにしています。
また弊社では、シンガポール市場をターゲットに、日本各地の様々な特産品や水産物のPR・販路拡大をご支援しております。
具体的にお困りなことなどございましたら、ぜひこちらのフォームよりお気軽にご相談ください。






