シンガポール市場で日本産ワインに可能性はあるのか?現地在住者による現地事情レポート
日本が国を上げて輸出強化を図る項目の一つに、日本産のワインがありますが、その輸出先として無視できない地域がシンガポールです。
なぜなら、シンガポールは世界的にみてもワインの輸入・消費量が人口規模の割に大きいため、日本産ワインの輸出拡大に向け、少なからず影響力があると考えられるからです。
小国ではあるので限界はありますが、実際に2021年には日本産ワインの輸出額は53.9%増加しているため、伸び代はあるといえます。
本記事では、シンガポール在住の弊社スタッフがシンガポールのワイン市場で起きているトレンドや、どのようにワインが流通しているのかなど、具体的にご紹介します。
日本産ワインの輸出拡大に関して検討されている事業者の皆様の参考になれば嬉しいです。
データから読み解くシンガポールのワイン事情
小国シンガポールのワイン輸入額が世界全体の約2%も占めている
シンガポールは食品の9割以上を輸入に頼る都市国家であり、各国の輸入金額のランキングでは小国ながら世界6位にランクインしており、輸入の割合の高さが伺えます。
ワイン市場においても同じことが言え、自国によるワインの生産はほぼなく、世界各国から様々なワインを輸入しています。
【出典】WORLD OPTIONS, World’s Top Exporters And Importers – Updated 2024, 4 Feb 2024
シンガポールのワインの輸入額は、2022年に7億7,800万USドル(約1兆1,996億円)を記録しており、これは世界全体の輸入額に対して1.98%となっています。
【出典】The Observatory of Economic Complexity (OEC) , Wine of fresh grapes, including fortified wines; grape must other than that of heading no. 2009
しかし、シンガポールは物流のハブ拠点であるので、輸入したワインを他の国に再輸出することも盛んに行われています。
2018年には、5億300万USドル(約7,755億円)のワインが再輸出されていました。
これは2022年の数値ではありませんが、2022年の輸入額である7億7,800万USドル(約1兆1,996億円)に対する再輸出額の割合は、2022年も引き続き大きいと予想されます。
【出典】日本貿易振興機構, シンガポールにおける食品(アルコール飲料・清涼飲料水)の再輸出実態調査, 2019 年 3 月
明治学院大学ワイン法・政策研究会の「美味しいお酒の法と政策〜アジアのワイン市場とワイン産業〜」によると、2016〜2021年までのスパークリングワイン市場は5.1%、スパークリング以外のワイン市場は5.2% CAGR(年平均成長率)の伸びが予測されています。
シンガポールからの再輸出があるとはいえ、成長が見込まれている市場だと言えます。
フランスのヴィンテージワインの輸入量が圧倒的に多い
【出典】UN Comtrade, last update 2020
2020年のシンガポールにおけるワイン輸入の国別のシェア率をみると、ずば抜けて高い割合を誇るのは、様々なヴィンテージワインの生産地と知られるフランスで、6割強を占めています。
二番手に続くのがニューワールドワインの代表的な産地であるオーストラリアで12.3%。
続いてフランスと同じく古くからワインを生産しているような国々、イギリス(6.54%)、イタリア(3.53%)、スペイン(1.09%)が並んでいます。
ニューワールドワインの産地として、アメリカ(2.78%)、ニュージーランド(2%)、チリ(1.27%)もランクイン。
ですが、日本産のワインは表に載っていないほど輸入量が少なく、少なくとも0.36%以下の割合であり、シンガポールにおいて日本ワインはまだまだ普及していないことがわかります。
ちなみに国税庁の資料によると、日本のワインの主な輸出先は香港、中国、台湾が1〜3位を占めています。
4位にはシンガポールがランクインしており、輸出額では6位に順位を落としているものの、対前年同月増減率は53.9%と大きく輸出額を増加していることから、シンガポールへの日本産ワインの輸出増加にはまだまだ伸び代があると考えられます。
【出典】国税庁, 『酒のしおり 主な輸出先の輸出額』, 2021年
シンガポール市場のワイントレンド
以下では、シンガポールの市場で実際に見受けられる3つのトレンドについて詳しくご紹介いたします。
- スパークリングワインの人気が高まっている
- ニューワールドワインの人気も定着している
- ナチュラルワインが急速に流通し始めている
【1】スパークリングワインの人気が高まっている
statistaの調査によると、シンガポールでのスパークリングワイン市場において、小売店での売上(スーパーマーケットやコンビニエンスストアでの売上など)は、2024年には2,000万米ドルを記録しました。
飲食店での売上(レストランやバーでの収入など)は、2024年には6,420万米ドルに到達。
合計で8,420万米ドルに達すると予想されています。
小売店での売上は、今後年間5.99%の成長が見込まれています。
【出典】statista, Sparkling Wine – Singapore (Most recent update: Apr 2024)
実際に日本産のスパークリングワインは「ルミエール・スパークリング・甲州 2019」がS$66で、「グレイスブランドブラン」がS$220で、それぞれシンガポール国内で販売されています。
【2】ニューワールドワインの人気も定着している
シンガポールのオンラインワイン小売業者「VINI VINO」のワインオンラインストアでのトップセールスランキング1〜10位のワインの原産国は、以下のような順位でした。
1位 イタリア
2位 イタリア
3位 チリ
4位 イタリア
5位 オーストラリア
6位 レバノン
7位 レバノン
8位 アメリカ
9位 イタリア
10位 イタリア
古くからワインが作られているイタリア産のワインも確かに多いのですが、ニューワールドワイン生産国(チリ、オーストラリア、レバノン、アメリカ)のワインが全体の5割を占めています。
シンガポールのワイン市場は伝統ある国の人気はありつつ、ニューワールドワインも幅広く好まれていることが伺えます。
実際に後ほどご紹介するシンガポールの国内大手スーパー「Fair Price」のワインコーナーでは約9割がニューワールドワインでした。
【3】ナチュラルワインが急速に流通し始めている
「ナチュラルワイン」とは有機栽培されたブドウを原料とするワインのことで、シンガポールのワイン市場を占める割合は小さいものの、確実に人々の人気を集めてきています。
お店で提供する大半のワインをナチュラルワインとしているワインバーも増えており、以下のようなバーがそのトレンドの先駆者となりました
シンガポールの大手メディア 「Time Out」の記事で、ナチュラルワイン専門のECサイトを運営する「Wine Mouth」の創設者の一人Caitlin Schriner氏はこのナチュラルワインブームについて、「ロックダウン中に人々が探究的になり、新型コロナウイルスの蔓延と共にナチュラルワインの消費が増加していることに気付いた」と話し、特徴の一つとして「(ナチュラルワインは)低〜中アルコールであることが挙げられるため、様々なラベルを試すことができるのも魅力だ」と語っています。
シンガポール国内の売り場をリサーチ|ワインの流通事情
以下では、2023年9月現在の状況について、店舗別にシンガポールのワインの流通事情について詳しくご紹介します。
シンガポールの各種スーパーに関しては、以下の記事で詳しくご紹介しているので参考にしてみてください。
シンガポールのスーパーマーケットまとめ|価格帯やターゲット層とは
ローカルスーパーでの販売

シンガポールの至る所でみられる大手ローカルスーパーでは、ワイン売り場の広さが棚2セットほどあります。
扱っているワインの産地は、ニューワールドワインが9割で、中でもチリ、オーストラリアが比較的多く見受けられます。
価格帯は一番安いものでS$16(約1,700円)で、最高はS$35(約3,800円)程度でしたが、ほとんどの商品がS$20(約2,200円)代で販売されていました。
別の大手ローカルスーパーでは、ワイン売り場は非常に大規模に設置されており、10列以上もの棚が使われていました。ワインプロモーション専用のスペースもありました。

扱っているワインの産地は、伝統的な生産国からニューワールドまで様々で、国ごとに陳列されていましたが、日本産ワインの取り扱いはありませんでした。
価格帯も幅広く、S$20(約2,200円)〜S$100(約11,000円)以上まで様々でした。
ローカルワイン専門店での販売

現地の大型ショッピングモール内にあるワイン専門店は、比較的大きい規模で展開されており、扱っているワインの産地も伝統的な生産国からニューワールドまで様々。
専門店とあってか、若干伝統国が産地のワインが多い印象もありました。
価格帯は全体的に高価格で、S$50(約5,500円)〜100(約11,000円)が多く並んでいますが、ワインセラーには数百ドル、S$1,000(約11万円)を超えるものもありました。
こちらでも日本産ワインの取り扱いはありませんでした。
日系スーパーでの販売

シンガポールには日系のスーパーがいくつかあり、調査に行った店内のワイン売り場の広さは棚3列分程度でした。
扱っているワインの産地は、約3割が日本産、約3割がフランス産、そして残りはニューワールドワイン中心というラインナップでした。
価格帯は、フランス産のワインはS$50〜80(約5,500円)程度が最も多く、中にはS$100(約11,000円)近いものもありました。
日本産のワインは$25〜$150(約2,700〜16,000円)まで幅広い価格帯の商品があり、ニューワールドワインはS$30〜50(約3,300〜5,500円)程度の価格帯が中心で、中には$70(約7,600円)の商品もありました。
ECサイト・その他店舗での販売
シンガポールで有名な日系スーパー「明治屋」のオンラインストアでは、「イヅツワイン(赤・白)」や「ルミエール・スパークリング・甲州 2019(スパークリング)」が購入できます。
Outrum Parkにあるワインビストロ「Praelum」では「甲州鳥居平畑プライベートリザーブ」がS$145(約16,000円)、「グレイスブランドブラン(スパークリング)」がS$220(約24,000円)で購入できます。
【出典】明治屋Webサイト
さいごに(日本産ワインをシンガポール市場から輸出拡大するには)
世界的にワインの輸入・消費量が人口規模の割に大きいシンガポール市場。
日本産ワインの輸出拡大に向け、無視できない海外市場であるといえます。
一方で、フランスやイタリア、ニューワールドの美味しいワインがたくさんあるため、日本産ワインがシンガポール市場でシェアを獲得していくには、現地市場のニーズにあった提案や施策を実施することが必要不可欠です。
例えば、シンガポールで日本食が大人気なので、「日本食に日本ワインはピッタリ!」といったコンセプトを通じて認知度を高める活動をするということも良いかもしれません。いずれにせよ、地道に日本ワインの露出、体験の場の提供を続けていくことが必要だと感じています。
ワインではありませんが、日本酒に対しても競争が激しい市場状態の中でシェア率・輸出量拡大を目指し、さまざま取り組みがなされています。
弊社では日本貿易振興機構(JETRO)内に創設された日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)では、「日本酒には魚介料理があう」というコンセプトを広めるために、毎年レストランとタイアップして、日本酒と魚介料理のペアリングを提供するPRキャンペーンを実施しました。
詳しくは以下の記事でご紹介しているので、気になる方はぜひご覧ください。
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本記事が日本の素晴らしいワインの輸出拡大に向けて、微力ながらお力になれることを心より願っています。








