海外バイヤーの本音|なぜ彼らが日系企業との取引をためらうのか
「日本の会社と商談してもねぇ…(話が進まないし、ビジネスにならない)」
これは、長年にわたり日系企業のシンガポール進出を支援してきた弊社が、最近現地のバイヤーからよく耳にする声です。
海外展開において現地バイヤーの獲得はほぼ必須であり、バイヤーとの連携がなければ、未知の外国での販路開拓は非現実的です。
良好な関係を築くべき現地バイヤー。特に親日でありアジアのハブとしても比較的日本企業が参入しやすいとされるシンガポールで、日本企業に対してネガティブなフィードバックが多くなっており、危機感を感じています。
もちろん、ネガティブなフィードバックが全てではありませんが、特に今回はバイヤーから聞かれる率直な意見に焦点を当て、考えられる対処法についても紹介します。
現地バイヤーの獲得を目指している方はぜひ参考にしてください。
「海外のバイヤー」が日本企業に対して思ってる本音
シンガポール市場で創業して14年以上になる弊社は、長年数多くの業界の日系企業の海外市場進出を支援させていただいてきました。
特に新型コロナウイルスの猛威があってからは、オンラインでシンガポール市場のバイヤーと日系企業をつなぐ「オンライン商談会」に関わることが急増。
コロナ禍を経てからは「対面での商談会」も再び活発に実施されるようになりました。
シンガポール市場を拠点とする弊社は、日系企業の方々以上にシンガポール市場で活動するバイヤーと継続的な情報交換や関係性構築に力を入れています。
そして、関係性が密になればなるほど「ぶっちゃけた本音」を聞く機会が増えおり、正直言って、それらはネガティブな評判が多いことに危機感を感じています。
実際どんな本音を聞くのか、以下にご紹介していきます。
「返事に時間がかかりすぎ」
シンガポールでは、メールよりもLINEやWhatsAppなどのSNSツールを使用したコミュニケーションが主流になっています。
特に、シンガポールのビジネスシーンは迅速な対応を好む傾向にあり、「次、次!」という感じで商談を素早く進める風潮があります。
このようなスピード感は、徐々に進めていくことに慣れている日本のビジネススタイルとは異なり、日本人担当者が戸惑うことも少なくありません。
しかし、「郷に入っては郷に従え」の精神で、相手のペースに合わせる準備をしておくことが大切です。そうしないとネガティブな印象を与えかねません。
シンガポールでのビジネスでは特にWhatsAppの使用が一般的なので、渡航前にアプリのインストールをして使い方に慣れておくことをおすすめします。
また、社内でコミュニケーションのスピード感について共有しておき事前に協力を仰いでおくと良いと思います。
「日本語の資料を翻訳してるだけの資料をもらっても、知りたい情報が得られない」
「弊社の商品は東京から約XX時間の位置にある●●県のXXXを使っているこだわりの商品です」
というようなセールストークは、日本ではよくあるのかもしれません。
ですが、海外のバイヤーの視点に立つと「こだわり」の部分を具体的に知りたいわけで、日本であること以上の細かい情報(どこの地域の品物か)は、そこまで有益な情報とは感じてもらえません。
なぜなら日本人の中で「●●県=商品の価値を上げるイメージ」があるかもしれませんが、シンガポール人にはその背景がそもそもわかりません。
伝えるべきは「●●県は、XXXということで大変日本の中でも有名である」といった背景なのに、重要な情報が資料になっていないケースが多いと言われます。
日本の資料を翻訳しただけのものを使い回しても、アピールにならないことが多々あるので、現地のバイヤーが知りたい情報がちゃんと資料に書いているか、よく確認しましょう。
「日本人は日本人しか信用しない」
海外進出を目指す日系企業は、日本人のバイヤーと取引をしたがるなと、弊社でご支援させていただく中で感じることがよくあります。
おそらく言葉の問題や、商習慣の部分で安心感があるからだと思いますが、そのような態度がしっかりとバイヤーにも伝わります。
たとえば、些細なことですが日本語がわからない現地の方が一人だけの場で、日本人同士が日本語のみで会話し、内容を現地の方に共有していないという場も、何度も見てきました。
これでは現地の人が明らかに「蚊帳の外」なので「信用されていない」と捉えられてもおかしくありません。
実際に「日本人は日本人のことしか信用しないよね」と言われることが何度かありました。
海外市場の現地パートナーと組んでビジネスを成功させている人もいますし、逆に現地バイヤーと組んだ方が有益な情報が得られるケースが多いので、このような声が聞こえることは大変残念に思います。

海外のバイヤーからの評判を良いものにするには?
なぜこのような声が聞こえてきてしまうのでしょうか?
それには海外進出をしようとしている日本企業側に大きく分けて、以下の2つの姿勢がないことに原因があると考えています。
- 現地市場や現地バイヤーのことを理解し、相手に協力してもらおうという意識を持つこと
- 日本の「当たり前」で現地バイヤーと対峙せず、やれることをすべてやる意識を持つこと
現地市場や現地バイヤーのことを理解し、相手に協力してもらおうという意識を持つこと
進出を検討している日本側が、日本で当たり前に通用している商習慣や感覚のまま、海外のバイヤーと対峙してしまっていて、相手のことを理解しようという姿勢で臨んでいないからではないかと感じています。
なぜなら本当にビジネスを進めたかったら、相手の習慣ややり方を理解して興味を持ち、協力してもらえる体制をこちらから(日本側から)組んでもらえるように働きかけなければ不可能だからです。
たとえば、弊社が共催する日系企業の商材をシンガポールで販促支援するプロジェクト「RednoW」では、自分たちが販売したいと思っていた商品があっても、現地のバイヤーや大人気ライブコマースを手掛ける現地の方々との「品評会」を実施し、フィードバックを受けて検討し直すということを行っています。
実際にこの「品評会」では、
パッケージにプレミアム感がないので、富裕層をターゲットにするのであれば、見栄えのする箱に入れてセット売りすると良い。
この価格だと、日本旅行に行った際なら買う可能性はあるが、シンガポールで買うとなると、なかなか購入者はいないと思う。
ライブコマースで販売する場合は、商品について説明するビデオがあった方が魅力が伝わり、販売しやすい。
などのアイディアが続々と現地のパートナーから寄せられ、出品する商品を手掛ける企業が改良して臨んだところ、全商品が10秒で完売するという結果になりした。
【参考】「RednoW」品評会の様子
また、日本人じゃない現地バイヤー取引するのに不安がある場合も、相手のこと(その国や市場)のことより深くを調査することで、不安や恐怖を取り除くことができる可能性が大いにあります。
なぜならほとんどのケースが、知らないから怖い(判断できない)だけな場合が多いからです。
残念ながら実際のところ、せっかくシンガポールまで来ても現地の市場を理解(調査)する気がなく、ただ展示会や商談会に出ただけで日本に帰って行く人はかなり多く見かけます。
まずは根拠のない周りの噂や情報だけに惑わされず、相手に関する情報収集をしたり、自分の目で確かめるなど判断材料を詰めて的確な判断ができるようにしましょう。
以下の記事では、海外の現地市場に行く前や行った後にどんな調査をしておくべきなのか、より具体的にご紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
海外進出の目的をここまではっきりさせないと90%失敗で終わります
日本の「当たり前」で現地バイヤーと対峙せず、やれることをすべてやる意識を持つこと
日本では当たり前に通用しているやり方をそのまま海外でやろうとせず、海外のバイヤーが求めるコミュニケーションを取れるように準備をしっかりしましょう。
なぜなら、準備段階での一手間で、現地バイヤーの印象を変えることができるからです。
たとえば「返事に時間かかりすぎ」な問題は、シンガポールのバイヤーとの商談であれば、SNSを使ったコミュニケーションをすることを受け入れてやってみる準備をするだけで、現地バイヤーの印象は大きく変わる可能性があります。
また、商談で使う資料も日本語のものをただ翻訳した資料を渡すのではなく、「相手が知りたい情報が何か」を考えて作り替えるという一手間を加えるだけで、現地バイヤーにはきちんと思いが伝わります。
日本で当たり前な「一旦持ち帰って」という感覚がデフォルトになっていて、日本でしか通用しない商習慣が現地バイヤーの悪評を招いているので、ぜひやれることは準備して臨む意識を持ちましょう。
以下の記事では、中小企業の海外進出においてチェックすべきポイントをなるべく詳しくまとめました。
事前に準備すべき内容としてぜひ参考にしてみてください。
さいごに(これ以上、未来の足枷をつくらない)
シンガポールはアジアのハブであり、様々な国と交易している多民族国家なので、どういう価値観で商談をしてもオープンに受け入れられる文化があります。
海外市場の中でも文化的な価値観の違いにはかなり緩い方にもかかわらず、日系企業に対してこのようなネガティブな評判がシンガポールのバイヤーから寄せられていることは、本当に由々しき事態です。
正直にいうと「日本の当たり前」から脱する意識もなく海外進出を考えているような人は、もうこれ以上海外のバイヤーと商談しない方がいいとさえ感じてしまいます。
なぜなら、このような評判はそう思われてしまった日系企業への悪影響だけにとどまらず、その後に「本気で成功したい!」と思って商談に臨む今後の日系企業にとっての「足枷」を増やす可能性があるからです。
「日本の会社と商談してもねぇ…(話が進まないし、ビジネスにならない)」
という現地バイヤーの声は、実は今後に尾を引くほど深刻な状況であることを意味しているのです。
これは海外進出を目指して、これまで海外のバイヤーと商談をしてきた日本企業全体の責任とも言えます。
だからこそ今後海外市場展開を目指す企業には、海外の事業者と「本気で」ビジネスを創造し、市場展開することにエネルギーを注ぐ意識をきちんと持って臨んでいでいただけたらと心から願っています。
本記事が少しでもそのような取り組みの一助となれたら大変嬉しいです。


