日本食の海外進出を狙うなら「現地とのコラボ」は絶対におさえよう
「海外で日本食品の販路開拓を成功させる」とは、簡単に言うと「海外の生活者の日常に、日本の食品を溶け込ませる」ことです。
そのゴールを達成するためには、現地の飲食業界のコミュニティや業界関係者と協働することは、絶対に外せません。
なぜなら、現地の生活者の実態が把握でき、最新の情報を知れる唯一の場(相手)だからです。
特に「現地の飲食店」は生活者と直接対面するタッチポイントなので、絶対に抑えておくべきです。
たとえば、シンガポールで実施されたキャンペーン「Seafood Loves Sake」では、日本食以外の12店舗の高級レストランのシェフが、「日本酒」と「日本食以外の食事」とのペアリングを提案したことで、日本酒と接点がなかった様々な文化圏の方々に魅力を届けて、新たな需要を喚起しました。
現地の業界関係者と協働することで、海外の生活者の日常と日本の食品との距離感がぐっと縮まります。
このブログでは、シンガポール市場で10年以上、日本の食品プロモーションに関わってきた弊社より、
・「現地の業界関係者」とはだれなのか?
・彼らと具体的に何をすべきなのか?
がよく理解できる、海外市場の飲食業関係者との協働やコラボレーションの事例をご紹介します。
日本の食品を海外市場で販路開拓したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
【対レストラン】非日本食の現地レストランを含めて、シェフと共同でターゲットに刺さる新商品を開発しよう
商材が日本食以外のレストランでも利用できる、ということを打ち出すことは、海外市場で展開していく上でとても重要なポイントです。
なぜなら、シンガポールの日本食レストランは、常に日本の取引先とつながっていて、日本の食品を熟知している場合がほとんどであり、そのようなレストランを利用するお客様も、すでにたくさんの日本食材を知っている場合が多いので、市場はすでに飽和状態とも言えます。
一方で、シンガポールでは日本食以外のレストランは市場の8割を占め、日本食材と異文化料理の組み合わせで新しい食材の活用法や魅力が引き出される可能性を秘めています。
そのため、海外市場で日本の食品の販路開拓を考えるなら、日本食以外のレストランと取引することを視野に入れて販路開拓に臨むと、格段に商機が増えます。
日本食レストランでないお店でも、日本の食材がいかに万能であるかを現地のシェフに知ってもらい、現地のシェフと共同で新しい商品やメニューを開発し、ターゲットとなる生活者に新しい食事体験を提案してもらいましょう。
実際に、弊社がお手伝いさせていただいた日本酒の販路開拓キャンペーン「Seafood Loves Sake」では、日本食以外の12店舗のレストランのシェフやスタッフ、大勢のディストリビューターや酒蔵と協働して実施しました。
日本食以外の高級レストラン12店舗のシェフが、日本酒にあうユニークなメニューを考案し、日本食以外のレストランで活躍する「現地のシェフ目線」で日本酒をご紹介しました。
これまでにない日本酒の魅力を発信することに成功し、イベントにご来場いただいたお客さまは、日本酒とシェフの料理とのペアリングに魅了されていました。
来場者が「日本酒が日本以外の料理とこんなにも相性が良いのか!」と驚き興味をもってくれただけでなく、協働した非日本食レストラン側からも「日本酒への関心が高まった」との声が多く寄せられました。
中には、一度テイスティングした日本酒を「もう一度飲みたい」と言ってださるレストラン関係者も数多くいらっしゃいました。
海外市場での日本食品の販路開拓は、思った以上に多様な可能性を秘めています。
ぜひ日本食レストラン以外の卸先や取引先を獲得する視点をもって検討してみてください。
ちなみに、シンガポール市場の日本酒については、以下のブログでも紹介しているので、参考までにご覧ください。
【対業界関係者】オンライン商談会に臨んで、自ら現地の市場の動向を把握しよう
積極的にオンライン商談会に参加して、移り変わるトレンドやシェフの考え方を直接把握しましょう。
直接把握することによって、レストランのオーナーやバイヤー、専門家などと良好なビジネス関係を築き、協力体制を育むことができるからです。
同時に、市場のトレンドを理解することで、商材の商機を逃さないことにも繋がりますし、海外市場向けに売り込むべきポイントをブラッシュアップするきっかけにもなりえます。
シンガポールの飲食業界は特に動きが早いです。お店がなくなっても、新しいお店がすぐにできます。
また、ミシュランを獲得したレストランやシェフなどの大手企業は、常に新しい機会やコラボレーションを求めています。
例えば、従来の食肉への環境負荷を懸念して誕生し、注目を集めている「代替肉」には、植物由来のもの・人工的に培養されたものなど様々な種類があります。
シンガポールでは少し前に、大豆由来の代替肉を使ったインポッシブル・バーガーが話題になりました。
世界的には消費者の健康や動物福祉・環境に対する懸念から、代替肉の一種である「クリーンミート」とよばれる人工培養肉への需要が世界的に高まっています。
昨年末、シンガポールでは動物の細胞から人工培養でつくられた「クリーンミート」の販売が、世界で初めて承認されたと発表がありました。
シンガポールのローカル企業 Shiok Meats は、シンガポールと東南アジアで初の細胞農業企業で、細胞から甲殻類(エビ、カニ、ロブスター)の肉を製造し、注目を集めてています。
出典:Shiok Meats, Shiok Meats launches the world’s first cell-based lobster meat in an exclusive tasting event, 20th November 2020
様々なトレンドが非常に早いスピードで展開しているシンガポールの飲食業界。シンガポールは多国籍国家なので、世界中のトレンドが市場に反映されやすいという特徴が表れているのではないかと考えられます。
海外市場で販路拡大を模索するためには、情報を待っているだけではなく、オンライン商談会で現地のプレイヤーから直接最新の動向を聴いたり、情報交換するようにしましょう。
ちなみに、シンガポールの「食」を取り巻くトレンドは、以下の記事で詳しくまとめて紹介しているのでぜひご覧ください。
【対メディア】現地で有力なメディアやインフルエンサーを見極めて協働しよう
業界に関連するオンラインメディアやSNSのインフルエンサーを活用したPRは、国内だろうが海外だろうが現代では欠かせないもの。
ですが、海外進出の場合は「本当に効果が得られるメディア・インフルエンサーを活用できているか」という視点がとても大切です。
シンガポールの飲食業界は大変小さな市場なので、メディアを通じた噂はすぐに広まりますが、なんといっても一番有効なのはSNS。
特に「Foodie(フーディー)」と呼ばれるグルメ通のインフルエンサーは、商材の認知度向上に直結するほどの威力を持っているからです。
またシンガポールでは高級レストランのトップシェフ同士がInstagramでつながっており、インスタグラムを使って新しい食材や料理を紹介しているのも特徴的です。
シンガポールのシェフ・コミュニティは非常に強く、業界内で情報を交換する貴重な場となっているため、SNSで発信された情報は、日本料理に関心が高いシェフや一般の人々の間で広がっていきます。
例えば、ドイツのプレミアム家電メーカー「Miele」のシンガポール支社のシェフであり、大人気料理番組「Masterchef Asia」(『料理の鉄人』のようなイギリス発祥の番組「MasterChef」のアジア版)の参加者でもある、Lennard Yeong氏のInstagramには、8万人以上のフォロワーがいます。
彼は通常、週に3~4回投稿し、1回の投稿につき2,000~3,000件以上の「いいね!」を獲得しています。
投稿している内容はLennard Yeong氏自身の食を巡る旅や、実験的に作った料理だけでなく、シンガポール国内の様々なレストランで提供されている流行の料理などを紹介しています。
この投稿をInstagramで見る
また、シンガポールには「8days」や「Wine & Dine」などのフード事情に強いメディアもたくさんあり、日常的に多くのレストランがこのようなメディアと協力してプロモーションを盛り上げています。
各種メディアでは、Foodie(グルメ通)のInstagramアカウントをまとめた記事が数多くあり、紹介されているようなFoodieを活用したプロモーションも日常的に行われています。
出典:asiaone, 5 of the best Singapore-based foodies to follow on Instagram, MAY 14, 2020
現地のメディアとインフルエンサーの両方と協働することで、販路開拓したい商材の情報を現地で拡散することができます。
商材と親和性の高い、現地のメディアやインフルエンサーを見極めてアプローチしましょう。
【対コミュニティ】レストランスタッフや調理師学校に通う未来のシェフ向けに研修をしよう
商材の文化的背景や特徴を知ってもらうために、PRイベントやキャンペーンを実施することはよくありますが、誰に向けてやるのが効果的でしょうか?
実は、一般的な生活者向けではなく、飲食店で働くスタッフに向けて実施するのがオススメです。
なぜなら、一般消費者向けに実施する場合は、その一時でしか効果を発揮できませんが、レストランで働くスタッフは、お客さまと関わりをもつ最前線にいる立場です。
取り扱う食材に関する知識や良さ・文化的背景を理解してもらえたら、来店したお客様へのPRにも繋がる可能性があります。
シンガポールでの日本酒市場を拡大を目的に実施された「Seafood Loves Sake」では、シェフによる新料理の考案だけでなく、レストランのスタッフへの「日本酒入門コース」と呼べるような日本酒の特性を説明できるようする教育機会を設けました。
参考: シンガポールのレストランで実施されたスタッフ向けの研修の様子
また、調理師学校の学生に向けたPR施策を実施するのもオススメです。
なぜなら調理師料理学校は、将来のシェフ候補にアプローチできる場だからです。
料理学校でトレーニングを受けたシェフの多くは、調理師学校で出会った食材を卒業後も使い続ける可能性が高いと言われており、学校で培われるネットワークを通じて日々様々な情報交換が行われています。
業界内での認知を高めるにはもってこいのコミュニティとも言えるでしょう。
弊社では以前、シンガポールの有名な料理学校である『AllSpice Institute』と提携して、日本の農林水産省が主導する「Certification of Cooking Skills for Cuisine in Foreign Countries(海外における日本料理の調理技能の認定)コース」を日本料理研究会と共催しました。
業界内での日本料理の基礎的な技術力を向上させ、参加者の知識と実践的なスキルに基づいて評価することを目指して実施された本取り組み。
ミシュランの一つ星を獲得した内山英仁シェフが東京から講師として来星し、日本料理の哲学や出汁の取り方などを学び、魚の切り方の実習も行われました。
参加者は、料理学校の生徒のみが対象というわけではなく、プロ・アマ問わず「日本領位の調理技術を習得したい人」向けに幅広く募集し、実施されました。
イベント会場に設置されたブース。日本酒やお魚などの日本食品をご紹介しました。
イベント開始前の会場の様子。たくさんの業界関係者にお越しいただきました。
参加した料理研修生は技能的な知識のみならず、「おもてなし」をはじめとする日本文化に対する理解を深めることができました。
受講生のひとりだったシンガポールのトップインフルエンサーが、Facebookに受講後の感想を投稿しています。
“日本人の几帳面さには驚かされるばかりです。鯵を切る技術には、非常に多くの精密なステップがありました。”(投稿内容より抜粋)
出典:i eat i shoot i post, https://www.facebook.com/ieatishootipost/
また、調理師学校ではありませんが、一般向けの料理学校「ABC Cooking Studio」と「伯方の塩」のコラボレーションによるPRキャンペーンが実施されたこともあります。
実施されたのは、「伯方の塩」を使ったユニークなレシピをご紹介するワークショップで、参加者には無料の「塩パック」が提供され、ワークショップ後も自分のお料理をつくるときやスクールでの練習時に使用できるようにされました。
最後に(まとめ)
以上、海外市場の飲食業関係者との協働やコラボレーションの事例、いかがでしたか?
現地のレストランや業界関係者との連携は、シンガポールでは特に欠かせない要素です。
言い換えればこれらの視点を差し置いて実施されてきたような従来のBtoCのプロモーションは、もはや時代遅れです。
- 【対レストラン】非日本食の現地レストランを含めて、シェフと共同でターゲットに刺さる新商品を開発しよう
- 【対業界関係者】オンライン商談会に臨んで、自ら現地の市場の動向を把握しよう
- 【対メディア】現地で有力なメディアやインフルエンサーを見極めて協働しよう
- 【対コミュニティ】レストランスタッフや調理師学校に通う未来のシェフ向けに研修をしよう
日本とは大きく異なる海外市場で、日本の食品を展開するのは簡単なことではありません。
弊社ではシンガポール市場で10年以上培ってきたノウハウや、業界関係者との幅広いネットワークを駆使して、日本の食品の海外市場展開を包括的にサポートさせていただいています。
お役に立てることがあればぜひお問い合わせください。









