「食」事情に変化が!?シンガポールの新たなトレンドとは【2021年版】

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毎年のようにトレンドが変わっている、シンガポールのF&B市場

私がシンガポールに移住した4年前からも、どんどん「食」のトレンドが移り変わっています

特に最近では、肥満や環境問題への意識の高まりととともに、人々の食に関する意識が非常に高まっていることを実感し、また、新型コロナウイルスの影響で一気に浸透したトレンドも見受けられます。

そこで今回は、世界的な潮流のモノも、シンガポールならではのモノもあわせて、シンガポールのF&B市場を舞台に起きている最新トレンドをご紹介します。

この記事が今後海外市場へビジネス展開を検討されている食品企業の方にとって、事業のヒントになれば幸いです。

【1】政府がヘルシーな料理を後押し!

シンガポール政府は「Healthier Choice Symbols」という6つのシンボルマークを作成し、ホーカーセンターと呼ばれる屋台のメニューやスーパーマーケットで販売される商品などでマークが導入されています。

「砂糖が少ない」「油分が少ない」など、一定の基準を満たしている料理に対してこのマークを表示することになっており、消費者はそのマークを見て、よりヘルシーな料理を選択することができるようにしています。

出典:シンガポール保険省 Ministry of Health Singapore, Make a Healthier Choice Today!, 5th March 2021

ホーカーセンターに関しては、シンガポールは外食文化であり、ホーカーセンターで朝昼晩3食とも食べるという生活も一般的です。

また、ホーカーセンターは家族や友人との「交流の場」としてシンガポールの人々にとって重要な場所で、そこで食べる「ホーカーフード」は安く、とても美味しいので、かなりの国民の生活に欠かせない場となっています。(個人的にも大好きです!)

ですが、ホーカーフードがヘルシーかと言えば、必ずしもヘルシーメニューばかりではないため、シンガポールではホーカーセンター依存ともいえる生活習慣での健康維持管理が、非常に大きな課題になっています。

実際、日本貿易振興機構(JETRO)発行の「ヘルシーライフスタイル | シンガポール版」によると、シンガポールでは肥満や糖尿病が社会的に大きな課題になっていると指摘されています。

具体的には以下のような内容の課題が挙げられています。

  • 人口の高齢化とライフスタイルの変化によって多くの国民が心臓病、ガン、糖尿病、精神病、呼吸器疾患といった生活習慣病のリスクを抱えているといわれ、これらの生活習慣病はシンガポールにおける死亡原因の7割を超えている。この二大リスク要因は、肥満と喫煙で、それに高血圧や高血中コレストロールなどが続く。
  • 糖尿病は、シンガポール人にとって深刻な健康問題の一つとなっている。国際 糖尿病連合(IDF)によれば、18歳以上の糖尿病患者は2017年に64 万人。18歳以上人口の13.6%に相当する。2017年8月、リー・シェンロン首相は演説で、シンガポール人の9人に1人は糖尿病であり、60 歳以上に限ると10 人中3人は糖尿病であると指摘した。
  • 政府は2016年4月、「War on Diabetes」を宣言し、糖尿病に宣戦布告した。健康推進庁は国民の糖尿病の発病 と進行を防ぐための取り組みを強化している。2016年9月、健康推進庁は「Let’s Beat Diabetes(糖尿病に打ち勝とう)キャンペーン」を開催した。「B.E.A.T.」は、糖尿病の予防と管理の重要性を訴えるためのキーメッセージである。

Be aware: 糖尿病のリスクを知り、糖尿 病検診をしよう

Eat: 玄米、果物、野菜を食べ、糖分、塩分、 脂質の摂取を減らそう

Adopt: 活発な生活習慣を心がけ、毎週 少なくとも 150 分の運動をしよう

Take control: 健康的な体重を維持し、 定期的に健康診断を受けよう

出典:JETRO「ヘルシーライフスタイル | シンガポール版」(P.31)https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/91a0338b87113e7c/hls-spr.pdf

【2】生野菜をあまり食べない国で急増する「サラダバー」

生野菜は保存が大変で腐りやすいので、常夏の国シンガポールではあまり生野菜メニューは見かけません。

シンガポールでは、それに加えて特に中華系の人々が温かい食べ物を好むこともあり、基本的に火が通った料理が多く、生野菜を食べる習慣があまりありません

しかし、健康志向が増す昨今、シンガポールの街中にはヘルシーなサラダを提供するお店が年々増えており、人気を得ています

この傾向は実は新型コロナウイルスが蔓延する以前から広がっており、2017年にはすでにフードデリバリーサービス「foodpanda」が2年分のデータに基づいて実施した調査結果に関する報道が飲食産業関連のメディアで多々見受けられており、2015~2016年にかけて全体の12%を占めていたスープやサラダ・ベジタリアンフードの注文率が、2016~2017年の間に全体の約25%近くを占めていたそうです。

出典:QSR media, Singaporeans are switching from fast food to salad, says foodpanda research, 15th March 2017

ちなみに弊社のオフィスの近くにもサラダバーがあります。「The Salad Shop」というチェーン店で、連日オフィスワーカーたちが平日のお昼時にはたくさん訪れていてとても人気です。

価格は$9.5~13(日本円で約780~1070円)と安くはありませんが、フレッシュな野菜をふんだんに取り入れたお惣菜はとてもおいしいので、私自身も含めリピーターが多いような印象を受けています。

在宅勤務で自炊も多くなりましたが、オフィスで仕事しても近くで新鮮な野菜が食べられるのはとても便利で安心です。

シンガポールで人気のサラダバーについては、ライフスタイルメディア「Honeycombers」の記事がとても参考になるので、ぜひご覧になってみてください。

出典:Honeycombers, Fresh off the bowl: Salad bars for a hearty, healthy lunch, 4th May 2020

【3】シンガポール産野菜の需要増加、水産物は日本が有利

世界的にサステイナビリティ(持続可能性)が注目されていますが、シンガポールでもサステイナビリティや環境に対する意識が近年強まっています

同時に、限りある小さな国土で資源がほとんどないシンガポールだからこそ、あえて「シンガポール産(Made in Singapore)」であるということを強みにする食材も年々増えていて、重要視されるようになってきています。

世界的なトレンドに倣って生まれてきた潮流とも言えますが、特に「フード・マイレージ」と呼ばれる食料の総輸送量・距離を減らすローカル食材や、農場から食卓へと呼ばれるコンセプト「Farm to Table」を謳う食材に注目が集まっています。

ホテル「One Farrer Hotelや、日本食レストラン「nokaでは、ルーフトップガーデンで自家栽培しているハーブや野菜を食材として使用しています。

また、ミシュランの星を獲得したこともある「Labyrinthというレストランでは、食材の90%以上をシンガポールのローカル食材を使用しています。

出典:THE STRAITS TIMES, Hotels in Singapore which grow produce in their own rooftop gardens help to reduce food waste, 5th April 2020

野菜はローカル素材に注目が集まっている一方で、日本産の美味しい水産物への需要はかなり大きいです。

輸送技術の向上もあって発送後たった1日でシンガポールに届くケースもあるので、今後より身近になっていくのではと考えられます。

シンガポールへの日本産の水産物輸出に関する詳細は別の記事にまとめていますので、ご興味ある方は是非ご覧ください。

現地マーケターが伝えるシンガポールの水産品事情と輸出の可能性

【4】屋内栽培で圧倒的に低い食料自給率を向上!

国土の小さなシンガポールでは畑は少なく、なんとシンガポールで使用される食料の約9割を輸入に依存しています。

この低い食料自給率を改善すべく、政府は、食料自給率を2030年までに30%まで引き上げることを目指しています。

その中で注目が集まっているのが、野菜の屋内栽培です。パナソニックは2014年にシンガポール初となる屋内野菜工場を発表し、レストランやスーパーマーケットに野菜を卸しています。

出典:INSIDER, Panasonic’s first indoor farm can grow over 80 tons of greens per year — take a look inside, 9th February 2017

また、シンガポール政府は屋内栽培を進める会社に補助金を出し、更なる発展を支援しています。

日本でも食料自給率の問題がささやかれていますが、日本のスタートアップ企業がシンガポール市場で活躍したり、またシンガポールの新たなサービスが日本市場で躍進したりする日も近いかもしれませんね。

【5】シンガポールが「クリーンミート」先進国に?

消費者の健康や動物福祉・環境に対する懸念から、食肉の代替品として「クリーンミート」とよばれる人工培養肉への需要が世界的に高まっています

そんな中、昨年末、シンガポールでは動物の細胞から人工培養でつくられた「クリーンミート」の販売を、世界で初めて承認したと発表されました。

出典:BBC NEWS Japan,「培養鶏肉」の販売、シンガポールが承認 世界初(2020年12月3日)

シンガポールのローカル企業 Shiok Meats は、シンガポールと東南アジアで初の細胞農業企業で、細胞から甲殻類(エビ、カニ、ロブスター)の肉を製造し、注目を集めてています。

出典:Shiok Meats, Shiok Meats launches the world’s first cell-based lobster meat in an exclusive tasting event, 20th November 2020

「クリーンミート」は、シンガポールにおける食料自給率向上にも大きな貢献を果たす可能性、さらには、この市場で世界をリードできる可能性もあり、今後ますます注目です。

【6】ゴミ埋め立て場が2035年で機能停止?目指せ、食品ロスゼロ

シンガポール国家環境庁(NEA)によると、シンガポールのゴミの約10%が食品廃棄物で、そのうち、18%のみがリサイクルされています。

また2010年から2019年において、食品廃棄物は約20%増加しており、人口増や経済に発展に伴い、今後も増えていくと予想されています。

そこで、「Resource Sustainability Act(RSA)」という制度が2019年に制定され、2021年からは新規の大規模な商業施設や工業施設は、施設内に食品廃棄物の処理場をつくることが求められることになりました。

同時に、2024年からは食品廃棄物を多く排出する大規模な商業施設や工業施設は、食品廃棄物を施設内で処理することも求められることになっています。

その背景にあるのは、シンガポール南部にあるセマカウ島にあるゴミ処理場が、このままのペースでごみ処理を進めるとなると、2035年までに処理機能が停止してまうと予測されているという危機的な事実…。

シンガポールでは死活問題ともなる課題を見越して、食品廃棄物を適切に処理・リサイクルすることが、より一層求められるようになります。

このような状況で、人々の食品ロスに対する意識も年々向上しており、家庭で食材のゴミが出ないよう様々な工夫も報道されるようになりました。

【7】外食文化に芽生え始めた「自炊需要」

新型コロナウイルスの影響で発動された外出規制により、外食文化のシンガポールでも自炊する人が増え、それに伴う需要が一気に高まりました外出規制が緩和された後も、自炊をする人々は増加傾向にあります。

シンガポールで自炊をする人々は、在住地区のスーパーだけでなく、Redmartなどの大手サービスをはじめ、コロナ禍で台頭した数多くの食品系ECサイトや、オンライン通販を通じて食材を購入しています。

詳しくはこちらの記事でお伝えしていますので、シンガポールのF&B市場展開を目指している食品関係の方々はぜひご覧になって下さい。

シンガポールのスーパーマーケットまとめ|価格帯やターゲット層とは

また、実際に料理をつくるデモンストレーションをしながら様々な食材を紹介する「ライブクッキング」という料理番組のような配信動画をみて、その情報を参考にして食材を買う人も多くいます。

日本の食材も「ライブクッキング」で取り上げられていて、大変人気を集めています。現在人気を博している「ライブクッキング」のコミュニティは以下の3つです。

  1. Singapore Home Cooks

7万人以上にフォローされているFacebookページです。

日本の食材にフィーチャーした配信を数多く手がけています。

2021年4月には「JAPAN Spring Special Show!!! Air-Flown Goodness~」と題して日本のお寿司に特化したライブクッキングを実施しており、函館の食材や柚子胡椒をつかって軍艦巻きを自宅でつくる様子を生中継していました。

常時200名以上の方が中継を閲覧していて、質問コメントも続々と寄せられていました。

出典:Singapore Home Cooks, JAPAN Spring Special Show!!! Air-Flown Goodness~, 5th April 2021

また、Singapore Home Cooksが運営するFacebookグループ「Singapore Home Cooks Group」には23万人以上が参加しており、自分が作った料理を投稿し、グループ内でシェアし合いながら自炊を楽しんでいます。

  1. Angliss Market Place

大手食品輸入会社Anglissが手掛けている、1万人以上がフォローするFacebookページです。

3日に1回程度のかなり頻繁な頻度でライブ中継を実施しており、様々な国の加工品や食材を紹介しています。

出典:Angliss Market Place

  1. Redmart

シンガポールのEC大手企業で、自社アプリでライブックキングを開催しています。

ECサイトでは日用品を含め様々な商品を取り扱っています。

出典:Redmart

【8】小さいカウンターの割烹料理店が増えている

シンガポールでは日本食がとても人気ですが、その勢いは昨年からまた急速に伸びています。

なかでも特徴的なのは、カウンターのみの席の少ない小さな日本食レストランがコロナ禍に続々とオープンしてきていることです。

こじんまりとしたお洒落な店内で、時にはシェフと話しながら、良い食材を使用した日本食を食べられることから人気になっています。

最近では「AO ringo」や「At Twenty」といったお店がオープンしました。

シンガポールの日本食シーンは、弊社の『HARAPECO BLOG』連載にてご紹介していますので、気になる方はぜひご覧になって下さい。

【9】クラフトジンの次はラムとモクテル

世界的にクラフトジンのムーブメントが起きていますが、シンガポールでも例外ではなく、多くのバーでクラフトジンが飲まれています。

これまで輸入されたジンしか無かったシンガポールですが、2018年には「Tanglin Gin」と「Brass Lion」という2つのシンガポール産のジンメーカーが誕生し、人気を集めています。

2020年には、様々な文化が入り混じるシンガポールという国そのものを連想させるような、東南アジアの様々なハーブやスパイスを使ったジンをつくるSingapore Distilleryが登場して話題になりました。ここでも第3章でご紹介した「Made in Singapore」精神が出ていると感じます。

そして現在は、ラムの人気が急速にあがっています

シャングリラホテルの中にあるバー「ORIGIN BAR」では40カ国から350本以上のラムを取り寄せて提供しており、大変人気を集めています。

また、健康志向などから、ノンアルコールカクテルの「モクテル」にも注目が集まっており、モクテルを提供するレストランやバーが増えてきています。

「Asia’s 50 Best Bars 2020」でアジア第1位のバーとして選ばれた「The Jigger & Pony」でもモクテルを提供しています。

 

その他、シンガポールのアルコール事情については、こちらの記事に詳しくまとめているのでぜひご覧ください。

シンガポールのお酒事情。ビールとワインが人気な市場で日本酒が奮闘!

さいごに

以上、シンガポールの「食」を切り取った最新のトレンド事情、いかがでしたでしょうか。

流行り廃りの早いシンガポールでは、いわゆるインスタ映えする料理が毎年のように出てきては、一時的なブームを起こしていますが、あっという間に下火になっています。

今後海外展開していくご予定の方にとっては、一過性のトレンドに踊らされることなく、中長期的に何が求められているのかを理解することが重要です。

 

また、他の海外の国と比べても、シンガポールには数多くの日本の食品が既に流通しており、”ある程度”揃っている状態です。

そのような中で、普通に手に入るような商品を市場に展開しようとすると大変難しいため、現地(シンガポール)のバイヤーは口を揃えて「差別化できるポイントが必要」と言っています。

 

今回ご紹介したサステイナブルな食品などは、今後中長期的に重要視される傾向が高い商材です。

世界的なトレンドをいち早く取り入れて展開していくシンガポール市場は、環境問題や食品流通問題に取り組む日本企業にとって、海外市場展開への第一歩を踏み出すための最適な環境とも言えます。

サステイナブルなサプライチェーンで作られた食材を、ストーリーと一緒に展開すれば、シンガポール市場で成功する可能性は大いに考えられるでしょう。

シンガポール市場は決して大きなマーケットではありませんが、世界中の人が集まり、また、さまざまな民族のいるため、海外市場展開に向けたテストマーケットとしても非常に適しています。

本記事が、近い将来に海外市場展開を見据えていらっしゃる方々のご参考となれば嬉しいです。


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