うどんの海外輸出増に必要な市場攻略法|シンガポール現地レポート
シンガポールで大人気な麺類。ホーカーセンター(屋台)に行くと「ラクサ」「ホッケンミー」「バクチョーミー」など色々な麺料理を目にすることができるので、麺料理の豊富さに驚くほどです。
麺文化があることと日本食人気が相まって、日本のラーメン屋さんはシンガポールで大人気。ここ数年では「令和そば」というお蕎麦屋さんもできるなど、そば人気も徐々に高まってきているように感じます。
ところが、日本の食文化を代表する麺料理である「うどん」は、レストランで食べたり、小売店で購入できたりできますが、シンガポールで流行っているとは言えない状況です。
その理由のひとつは、シンガポールの麺料理にはチリソースやサンバルといった辛い調味料を添えて一緒に食べる人が多く、全体的に味つけが濃い料理が多いため、うどんに味気なさを感じる傾向があるからでした。
このブログでは、シンガポール市場の現状や、麺料理が大好きな弊社のシンガポール人スタッフに「うどん」に対する率直な意見を聞き、どのような工夫をすればシンガポール市場でも「うどん」への需要喚起ができるかを検討した結果をまとめました。
シンガポール市場に麺類や日本の食品を展開したい方への参考になる情報がたくさんあるので、ぜひ参考にしてください。
シンガポール市場の「うどん」事情
うどん、そうめん、そばの海外輸出は、20年前からは約190%増加
めん(うどん、そうめん、そば)の海外への輸出量は、ここ数年は減少気味ですが、20年前と比べて約190%も伸びています。
これはアメリカ、中国での日本食ブームが一因として考えられています。
【参考】当社調べ
また、国別の輸出金額を見ると、シンガポールは、アメリカ、中国、香港、台湾に次ぐ5位にランクイン。
輸出金額全体の4.5%を占めており、シンガポールではここ10年ほどで一気に日本食レストランが増え、日本の麺の取り扱いが増えたことが要因かと考えられます。
香港・台湾とシンガポールは、国土や人口、富裕層の存在、そして食文化で共通点が多くあるので、輸出額増加のポテンシャルがあると言えるでしょう。
【参考】当社調べ
シンガポールで「うどん」が食べられる・買えるのはこんな場所
シンガポールでうどんを食べたり買ったりできる場所は至る所にあり、見かける頻度は高く、シンガポール国内で日本の「うどん」を提供する専門のレストランでは、以下の「たも屋」と「風麺(ふうめん)」が人気です。
しかし一方で、大手「丸亀製麺」は数年でシンガポールから撤退し、セルフでトッピングを選べるスタイルの「いだ天うどん」は、シンガポールに展開しているうどんチェーンのひとつですが、2店舗あったうちの1店舗は閉業し、開業中の店舗はChangi空港近くの郊外にあります。
以下では、シンガポールのうどんを取り巻く環境について、より具体的にご紹介します。
【1】「うどん」が食べられるレストラン
シンガポール中心地・Dhoby Ghautにある「たも屋」は、中華系シンガポール人を中心に20-40代の男女で賑わうお店です。
ベストセラーは「讃岐牛肉卵うどん」で、価格は$12.3 (約1,200円)。
日本でうどんを食べる場合と比較すると高く感じるかもしれませんが、シンガポールのレストランで食べるランチの値段としては、一般的な値段です。
ムスリムの方が宗教上の理由で食べれるかどうかを判断する基準になっている「ハラール認証」に対応しているうどんを出しているお店もあります。
Raffles Quayにある「風麺(ふうめん)」です。
【2】ホーカーセンターで食べれる「うどん」
ホーカーセンター(屋台)にはローカルが運営している日本食のお店もあり、そこでも「うどん」を食べることができます。
写真のような和食のお店(韓国料理と一緒のこともあります)で定食やラーメンに混じってうどんが並んでいます。
【3】シンガポールで「うどん」が買えるスーパー
シンガポールで人気な「DON DON DONKI」「明治屋」「伊勢丹」といった日系スーパーマーケットではもちろん購入できます。
「Fair Price」などのローカルスーパーマーケットでも販売されており、いずれも冷凍うどんと常温のうどんが購入できます。
シンガポール国内のスーパーにて筆者撮影。
シンガポールのスーパーマーケット事情は、以下のブログに詳しくまとめているので、よろしければ参考にしてみてください。
シンガポールのスーパーマーケットまとめ|価格帯やターゲット層とは
シンガポール人スタッフと分析する「物足りない」理由
弊社のローカルスタッフであるHan RuiとKatに、シンガポール人を代表して「うどん」への率直な感想について聞いてみました。
日本人感覚ではわからないこともあり、聞いていた私もとても勉強になりました。

どこで、どれくらいの頻度で「うどん」を食べる?
年に4〜5回、おまかせコースを出す日本食レストランに行った時に、コースの中に入っていたら食べるぐらいです。
自分から「うどんを食べに行きたい!」と思って食べにいくことはあまりないですね。
あとは、チャイニーズニューイヤーの時に、家族でホットポット(鍋)を食べる習慣があるので、その時に入れて食べています。
私の場合も、1ヶ月に1回ほどホットポット(鍋)パーティーをするのですが、その時に冷凍うどんも入れて食べています。
「うどん」についてどう思う?
日本の麺料理だとラーメンが圧倒的に人気で、蕎麦とうどんを比較すると。蕎麦の方がヘルシーなイメージがあり人気です。
女性が家で蕎麦を茹でて、ランチのお弁当用に持っていくケースもよく聞きますし、シンガポールでも人気のあるDaisoで安く購入できるのも蕎麦が人気な理由のひとつだと思います。
シンガポールでは健康嗜好が年々高まっていて、サラダショップが増えてきています。
その中に蕎麦が入っていることも多いです。
一方で、うどんには以下のようなネガティブなイメージがあるので、それに対して10数ドル(1,000円以上)するのは価格が高く感じるというのが本音です。
また、うどんはカジュアルな和食のチェーン店でメニューにも入っていますが、シンプルでチープなイメージを持っています。
<うどんのイメージ>
- すぐにお腹がいっぱいになる
- 麺が太過ぎる(シンガポールに流通するうどんは基本太麺が多いため)
- ダシがシンプル過ぎる
より多くのシンガポール人に「うどん」が受け入れられるには?

シンガポールでは温かい麺料理が人気で、冷たい麺料理はないので、温かいことは重要なポイントだと思います。
「温かい飲み物が身体にもいい」という考えがあるので…。
あとは、シンガポールでは太麺のうどんが多いですが、シンガポールの麺は細麺が主流なので、うどんも細麺のラインナップの方が、シンガポール人には受け入れられやすいかもしれません。

見た目はローカル料理の「Lor Mee」に似ているので、アレンジ次第でもっと受け入れられるポテンシャルはあるんじゃないかと思います。
ただ、シンガポールには麺料理がいっぱいあり、麺よりスープやソースの方が重要視されているので、うどんもより濃い味であったり、スパイシーなスープが好まれると思います。

麺の食感よりもスープの方が重要ですか?
麺自体のクオリティはそこまで気にしない人が多いと思います。
たとえば、日本人がよくうどんをPRする時にアピールしている「コシ」や「喉越し」は、実はシンガポール人にはあまり理解しづらい感覚かなかと…。
ちなみに僕は全く気にしません。

「うどん需要」を高めるには、市場理解を深める必要がある
インタビューを通じてわかったのは、日本人がうどんの魅力的な特徴だと感じている点(麺のコシ・薄口の出汁など)は、シンガポールの生活者へのアピールポイントになっていない可能性があるということでした。
実際、弊社では毎年数多くの日本の特産品や地域のPRに関わりますが、うどんに限らず、魅力的だと思って打ち出していた点が相手にとって刺さらないメッセージになっていたということは多々見受けられます。
このような状況になってしまうのは、進出先(シンガポール)の市場や文化について十分な調査ができていないことが大きな要因として挙げられます。
食品を輸出・販売促進したい場合なら
- どのような味や料理が好んで食べられているのか?
- どのような商品を、どれくらいの価格で購入しているのか?
- 最近流行っている飲食店はどんな商品を、どんなPRをして販売しているのか?
などの、定量的というより、定性的な調査は必須です。
なぜならこのようなポイントを理解していないと、販売経路が獲得できたところで、販売数を伸ばすことは不可能だからです。
以下では、長年シンガポールの飲食業界関係者と日本の特産品PRに取り組んできた弊社から、どのような切り口で販売戦略を検討できるか、アイディアを3つご紹介します。
現地の食文化に合わせた提案の仕方を考える
シンガポール人の食文化のなかにうどんが溶け込んで行きやすいように、現地の食文化に合わせた提案の仕方を考えましょう。
Mee Tai Makという麺は、シンガポールで流通しているうどんの麺の太さと似ているので、これをうどんに変えてみても面白いかもしれません。
また、シンガポール人はランチョンミートをラーメンなどに入れることもよくあるので、うどんでもそのような食べ方を提案しても面白いかもしれません。
ほかにも「生卵がうどんにあう」ことをPRしたり、シンガポール人が大好きなサーモンを入れるなど、シンガポールの国民性を考慮した食べ方の提案ができると、よりうどんの需要を増やせる可能性があります。
また、インタビューでもあったように、シンガポール人は味の濃いスープが好き。
濃厚な「みそ煮込みうどん」は比較的受け入れられやすい可能性があると考えられ、また、シンガポールの定番料理である「ラクサ」など濃い味のローカル料理のスープをうどんと合わせて提供する方法も考えられます。
ちなみに、シンガポールに最近できた「令和そば」という蕎麦屋さんでは、スパイシーなタレの蕎麦を提供し、人気を得ています。
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販売する価格帯やターゲットから打ち手を考える
今回のインタビューの中にあった、価格や提供の仕方に関する以下の点を踏まえて、販売戦略として考えられる方法を検討してみましょう。
- $5〜6ぐらいの価格で食べられるとより気軽に足を運びやすい
- うどんはすぐにお腹がいっぱいになるイメージがあるので小盛りで提供された方が手が出やすい
低価格に抑えるために検討できることとしては、以下のようなことが挙げられます。
- 1食分のメニューとして提供するのではなく、サイドメニューの定番となるように提供する方法を模索する
- 東南アジアでの生産に切り替えた場合、低価格で提供できるか検討する
また、低価格での販売が難しい場合は、逆に高単価な商品として提供する方向を模索することも可能です。
実際にシンガポールでは、高級日本食レストランがコロナ禍に相次いでオープンし、大変人気を集めています。
このような高級レストランをターゲットとし、日本の新鮮な海産物や高級和牛などを使った小鉢のうどんを提供することができないか、現地のレストランとの交渉を考えることも、打ち手の一つとして考えられるでしょう。
販売する価格帯やターゲットから、検討すべき内容や打ち手を考えてみましょう。
シンガポールの飲食業界と直接コラボレーションをし、意見をもらう
うどん文化がローカルの人たちに根付いていないのは、ローカルの食文化に浸透させる取り組みを行う余地がまだまだあるということです。
具体的にどのような方法を持って現地の生活者に受け入れてもらえるかは、実際に現地生活者との接点を持つシンガポールのレストランのシェフに相談するのが一番おすすめです。
なぜなら、彼らは現地の生活文化を踏まえて、全くアングルから提案する方法を考えるプロだからです。
実際に弊社では、レストランとタイアップして新しいレシピを考案する事業などを多数ご支援してきました。
中でも日本酒の販路拡大を目指す事業では、3年間の間でコラボレーションをするレストランが2.5倍に拡大し、日本酒のペアリングメニューは74種類誕生するという実績を記録しました。
詳細は以下にまとめているので、気になる方はぜひ参考にしてみてください。
3年間でコラボ店舗数が2.5倍に拡大|日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)の日本酒PR

さいごに(現地の嗜好性を知ることが大切)
うどんに限らず、日本食品のシンガポール市場進出をご検討されている方は、まずはシンガポールに来て、
- ホーカーセンターなどに自ら足を運んで、ラインナップを調査する
- 現地の人々が普段どのような食品を好んで食べているのか、ご自身の目と舌で確認する
などの「現地での体感を伴う調査」をまず最初に行うことをおすすめしています。
なぜなら、シンガポールの食文化を理解することで、展開したい食材をどのように打ち出していくべきか、アイディアが湧いてくるはずだからです。
具体的には、シンガポールで開催されている食品関連の国際的な展示会やカンファレンスに参加し、その滞在期間中に市場調査を行うなど、事前に検討しておけば効率よく実施できる方法はあります。
以下の記事では、2022年の下半期に開催されたシンガポールの展示会情報をまとめています。
ご参考までにぜひご覧ください。









