シンガポールの日本酒事情ガイド|酒ソムリエを独占取材!【インタビュー編】
世界で注目され始めている日本酒ですが、シンガポールでも人気が高まっています。
しかし一方で、現地の一般層への浸透はまだまだこれからというところ。日本酒について理解している人は少なく、「どうやって飲めばいいのか」「どの日本酒を選べばいいのか」などがわからないために、なかなか日本酒に手を出しづらいという状況です。
「日本酒を売りたい」という企業がシンガポールへ売り込みにくることが増えてきましたが、「産地」「酒米の説明」「使っている水」などをアピールされます。
しかし、正直言ってシンガポール人はそういった情報には興味がない人がほとんどです。なぜなら日本人ほど日本酒に関するリテラシーがないので、残念ながら一般層には響かないんです。マニアの人なら別かもしれませんが、生活習慣が全く違うシンガポールでは日本流のPRは通じないと思ってください。
では、どうシンガポールに日本酒を売っていくのか?というところですが、ぜひ現地の日本酒有識者(ソムリエ、シェフ、卸売業者など)を味方につけましょう。
彼らが「シンガポール人が飲みたくなる」ような日本酒の提案をしてくれる存在だからです。彼らにまず自分たちの日本酒の良さを理解してもらい、一緒に現地の人々に広めていくのが最も効果的です。
今回は、実際に酒ソムリエのルーベンさんにインタビューをし、どんな日本酒が人気か、どんな提案方法が効果的かなどを聞いてきました。ぜひ参考にしてください。
■「シンガポール 日本酒」シリーズ
現地の日本酒有識者を味方につけよう
シンガポールで日本酒を売り込みたい際は、現地の日本酒有識者(ソムリエ、シェフ、卸売業者など)を味方につけましょう。
彼らはシンガポール現地の料理とのペアリング方法、暑い現地での美味しい飲み方、現地の行事に合った日本酒などを熟知しています。現地の事情がわからない状態で自分たちだけで売り込もうとするより何倍も効果的です。
たとえば、ペアリング一つにとっても日本とは違います。多国籍国家のシンガポールは、マレー料理、インドネシア料理、インド料理、中華料理、中華系マレー料理(プラナカン)、欧州料理、スペイン料理、フランス料理、タイ料理…など、多種多様な料理で溢れています。これらを網羅しようとするだけでも大変なことです。
シンガポールで飲食業界に関わる方々は日本酒に対してとてもポジティブで、彼らが「いい日本酒だ!」と思ったらとても応援してくれます。
実際に弊社では以前、日本食以外の様々な食文化のレストランと一緒に日本酒のペアリングメニューの開発を行ったこともあります。
彼ら(飲食業界の有識者)を納得させられないようだと一般層を納得させることは難しいと言えます。そのためにまずは現地の日本酒有識者が考える「シンガポールの日本酒事情」を知っておきましょう。
今回は、シンガポールの酒ソムリエ、ルーベンさんにインタビューしてきました。
シンガポールの酒ソムリエにインタビュー
【 インタビューした方 】

Reuben Luke Ohさん
Sake Laboの酒ソムリエとして活躍し、専門誌「Cuisine & Wine Asia」の執筆家。ジャーナリストやコピーライティング、イベント会社での経験もある多彩な日本酒スペシャリスト。2021年10月にはロンドンに本部を置く酒ソムリエ協会(Sake Sommelier Association)からのメールで、今年のYoung Sake Ambassadorに選ばれた。
【参考】ルーベンさんを特集したシンガポール大手新聞メディアの記事:THE STRAITS TIMES, S’porean sake sommelier wins Young Sake Ambassador Award, 2021年11月28日
実は在シンガポール外国人居住者よりシンガポール人のほうが日本酒にお金を使っている
シンガポールで日本酒を飲むのは女性が多い傾向があります。特に経済的に余裕があるCBD(シンガポールのビジネス街)の女性はお酒をよく飲む方が多いです。年齢層は20代〜40代と幅広く、「女子飲み」をたのしまれる方も多い印象があります。
一方で、外国人居住者(Expats)はシンガポール以外の国で日本酒がもっと安く飲めるのを知っているせいか、あまりシンガポールで日本酒を飲んでいる人を見ません。逆にシンガポール人の方が日本酒にお金を使う傾向があります。
少し前までは日本酒は1本$70-80(約6,000~7,000円)が売れ筋でした。最近では$100以上(約8,500円以上)のボトルでも売れるようになってきています。
特にソムリエが勧めたら$100以上のボトルでも頼んでくれるお客さんが増えています。
「日本酒=純米大吟醸」の考えが変化している
「日本酒といえば純米大吟醸」というのが長い間トレンドでした。そのトレンドの背景には『獺祭』がシンガポールの市場に出回ったことが大きく影響しています 。
『獺祭』はシンガポールでも最も一番知られているブランドで「純米大吟醸」というものの普及に大きく貢献したからです。ちなみに他に有名な銘柄は『楯野川』『黒龍』『十四代』などが挙げられます。
しかし最近では「純米大吟醸」以外の日本酒にも魅力があるという認識が広がり、徐々にトレンドがシフトしていると感じます。また「純米大吟醸」というだけで高額になるので、価格に敏感なシンガポールの方々は「純米大吟醸以外」の選択肢を探しているのかもしれません。
実際に「純米酒」でも安くて美味しいものがたくさんありますよね。それに気付いている人が多くなってきているようです。
一番有効なのは「ソムリエや店舗のスタッフを通じた提案」
日本酒をシンガポールで販促するのに一番有効だと思う方法は、ソムリエや店舗のスタッフを通じた提案だと思います。シンガポール人は口コミに弱いので、お店のバーテンダーや店員からがおすすめされると大抵気に入ってくれます。
そうなると「ソムリエがオススメしやすいアピールポイント」が伝わる銘柄は優位になりますが、現状はどの銘柄もアピールポイントとして「米がいい」「水がいい」という特徴や、精米具合へのこだわりなどを伝えがちです。これらは個人的にはどこもやりすぎ感があると思います。なぜならシンガポールのお客さんは「米がいい」「水がいい」などと言ったはうんちくは求めていないからです。
県名や地名を紹介したところで覚えていない方がほとんどです。また実際にお客さんへ「酒のことを知りたい」のか、それとも「お酒を飲んでみたいだけか」と質問すれば、お酒を飲んでみたいだけという方が圧倒的に多いです。
一般顧客にうんちくをPRするような「教育」や「啓蒙活動」をしてもあまり意味がありません。それよりも、ソムリエや店舗のスタッフを啓蒙する方がサステイナブルな営業活動になります。
職業柄、彼らは様々な酒類の知識を知りたいと思っているはずです。意識の高いスタッフも多い。現地で販売されているボトルの裏ラベルが英語になっていない銘柄もいっぱいあります。お店のスタッフが紹介しやすいように、英語ラベルを表記することをもっと推進したいと個人的に感じています。
大吟醸以外の美味しさをお客さんに提案したり、お客さんが求めている「美味しい日本酒」を提案するのがお店のソムリエやスタッフの役割です。スタッフがおすすめしやすいアピールポイントを持つ銘柄は成功しやすいと思います。
500mlのボトルがある銘柄はとても売りやすい
シンガポール人はフルーティーで甘みが感じられ、お米の味がわかりやすい日本酒を好みます。無濾過生原酒の味は人気を得ています。
インド系シンガポール人も日本酒をよく飲みますし、量も飲みます。中華系インドネシア人もよく飲みますが、彼らは生酒で旨味のあるお酒を好む傾向があります。EuroAsian(ヨーロッパ人とアジア人との混血の人々)はウィスキーやビールなどのお酒をたくさん飲む人が多いです。
カップルのデートで日本酒を飲む際は、グループや同性2人グループで飲まれる量よりも少ない傾向があるので、500mlのボトルがちょうど良いです。実際、500mlのボトルがある銘柄はとても売りやすく「風の森」などはスタイリッシュなのでワイングラスでも提供できます。
180mlのボトルだと少なすぎるので、500mlのボトルの方が売りやすいです。
さいごに(まとめ)
以上、市場のど真ん中で活躍している酒ソムリエの方に独占インタビューをご紹介しました。
日本酒に関連する地理や文化的背景がある程度わかる日本人と、海外のお酒として日本酒を楽しんでいる海外方々では、情報の受け取り方や感じ方、愉しみ方が変わります。
日本の事情を前提に海外で販売しようと考えず、前提を疑って現地の言葉に耳を傾けるだけで、海外販路開拓や海外マーケティングのヒントがたくさんみつかります。
このインタビューがシンガポール市場に日本酒を販売したいとお考えの方々にとって参考になりましたらうれしいです。
また日本酒のシンガポール市場進出に関して、具体的なご相談がある方はぜひお気軽に以下のフォームよりご相談ください。
■「シンガポール 日本酒」シリーズ

